■HIAの米ドル高効果は限定的!?
1月17日(水)に、米アップル(Apple)が、海外に滞留させている資金を米国へ還流させることを発表しました。
発表の瞬間、米ドル高となりましたが、米本国に戻った資金は自社株買いに使われる可能性が高く、米国株は堅調になりそうですが、為替市場に関しては、影響は軽微となりそうです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
以前から、海外に滞留している資金は、すでに8-9割が米ドルで保有されていると予想されていたこともあって、HIA(※)に関しては、米ドル高要因としては弱くなっているのです。
(※編集部注:「HIA(本国投資法)」は、ブッシュ政権下で2005年に実施された時限立法。この法律下で、米国内での投資や雇用の創出を目的に、米多国籍企業による米国送金時の税負担優遇などが行われた。トランプ大統領が同等の効果を狙っていることから、本国投資法第2弾(HIA2)とも呼ばれる)
【参考記事】
●米税制改革法案が成立したら米ドル下落!? ドル/円はいつ売ってどこで買い戻すべき?(2017年12月19日、バカラ村)
■黒田総裁は出口論を語らず。緩和策の継続を強調か
今週(1月22日~)の市場の注目イベントは、本日23日(火)の日銀金融政策決定会合の結果公表、25日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会、そして23日(水)から26日(金)まで行われる世界経済フォーラム年次総会、通称「ダボス会議」になります。
日銀金融政策決定会合は、政策金利は据え置きの予想(※)ですが、注目されるのは黒田総裁の会見になります。
(※編集部注:本記事寄稿後の編集作業中に日銀は金融政策の現状維持を決定し、政策金利据え置きを発表した)
1月9日(火)に、日銀の超長期債の買いオペが減額されたこともあり、海外勢からはテーパリング(※)観測が出ましたが、黒田総裁からは、これを否定する発言が出るものと思われます。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
黒田日銀総裁の記者会見では、海外勢のテーパリング観測を否定する発言が出ると予想されるが… (C)Bloomberg/Getty Images
FRB(米連邦準備制度理事会)やECBなどは、金融政策の正常化に向かっていますが、日銀はまだそれには早く、出口が議論されるとしても年後半になるのではないかと思います。
市場参加者のほとんどが、黒田総裁が緩和策の継続発言をすると考えています。ただ、ステルステーパリングもあることから、もし、少しでも出口論を意識させるような内容が出ると、海外勢が円買いを仕掛けてくる可能性はあると思います。
【参考記事】
●日銀会合で黒田総裁は「出口」をどう語る? 何をしても上がらないドル/円は売り継続で(1月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
黒田総裁も、その点は理解されていると思うので、緩和策の継続を強く示唆してくるのではないかと思います。
■ドラギ総裁はユーロを押し下げる発言をしそうだけど…
1月25日(木)には、ECB理事会があります。
こちらも政策金利は据え置き予想で、注目はドラギ総裁の会見です。
最近、ユーロ圏の要人から、ユーロ高けん制発言が出ており、ドラギ総裁の会見でもユーロ高をけん制する発言がされるのか、もしされなかったとしても、質疑応答ではその質問が出てくるものと思います。
【参考記事】
●米ドル/円のさらなる下落は考えにくい! ここからは緩やかな円安に戻っていくか(1月18日、今井雅人)
また、フォワードガイダンスに関して、今年(2018年)の早い時期に変更になる可能性が出てきており、これに関しても、ドラギ総裁の発言が注目されます。
ドラギ総裁も、できることであれば、ユーロ高を抑えたいと考えているはずなので、フォワードガイダンスの変更は、まだ示唆しないものと思います。
できることならユーロ高を抑えたいと考えているはずのドラギ総裁からは、フォワードガイダンスの変更はまだ示唆されない可能性が高そう (C)Bloomberg/Getty Images
ドラギ総裁の会見内容は、ユーロを押し下げる方向の発言がほとんどになると思いますが、ただ、前回のコラムでも指摘したように、テクニカル的にユーロ/米ドルは上へブレイクしており、下がれば買われやすいのではないかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルに1.26ドルまでの上昇余地! 米ドル/円は季節的に上値が重い時期!?(1月16日、バカラ村)
■ユーロ/米ドルの中期的な上昇はまだ続きそう
ドラギ総裁の発言内容によっては、ユーロ/米ドルの下押し幅が変わることになりますが、先週(1月15日~)は1.21ドル台がサポートされ、テクニカル的なサポートも1.2080ドルにあるため、上昇を開始した1.19ドルを下回らなければ、上昇トレンドが維持されます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
今週(1月22日~)は、ドラギ総裁の会見でユーロ/米ドルの押しが出てくるのではないかと考えており、また、中期的には、まだ上昇が続くのではないかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルはまだまだ上昇!?ターゲットは短期的には1.265ドル、ゆくゆくは1.31ドル台!?(1月17日、松田哲)
■米ドル/円は上昇したところを売り!
米ドル/円は、先週(1月15日~)、110.19円まで下がりましたが、機関投資家の買いもあったことから反発しました。今週(1月22日~)は黒田日銀総裁から緩和策継続発言も出ることが期待できるため、今週も110円はサポートされそうですが、112円はテクニカル的にも上値が重く、110~112円の中で推移しそうです。
(出所:Bloomberg)
中期的には、こちらも考えは変わらず、米ドル/円は下がると考えているので、上がったところは売りで良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルに1.26ドルまでの上昇余地! 米ドル/円は季節的に上値が重い時期!?(1月16日、バカラ村)
(出所:Bloomberg)
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