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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

トランプ政権が米ドル安に向けて動く!?
欧州通貨上昇。米ドル一人勝ち相場終焉か

2018年08月30日(木)17:20公開 (2018年08月30日(木)17:20更新)
西原宏一

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■パウエル講演はハト派との意見多数! 総じて米ドル安に

 今月(8月)24日(金)に、マーケットが注目していたジャクソンホールでのFRB(米連邦準備制度理事会)パウエル議長の講演が終了しました。

 メディアによって捉え方に相違があるのですが、総じて見ると、「利上げの打ち止め時期が近づいた」といったようなハト派な意見が多数

【参考記事】
FRB議長が利上げの終盤を印象づけた!? 新興国から流出した資金が向かう先は…?(8月27日、西原宏一&大橋ひろこ)

 つまり、「来年(2019年)の利上げサイクル終焉」という見方が増え始め、米金利は低下。

 特に、このコラムで何度か取り上げさせていただいた、米10年国債利回りは、じり安に推移し、3.00%台をなかなか回復できません

 結果、マーケットは、パウエル議長の講演終了後、総じて米ドル安に。

【参考記事】
中期的にはリスクオフ継続で円高進行中! 銅価格20%強急落が意味するものとは…!?(8月16日、西原宏一)

米長期金利(10年物国債利回り) 日足
米長期金利(10年物国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

■トランプ政権が米ドル安に向けて行動を起こす?

 そして、今週(8月27日~)のマーケットでは、もう1つの要因が大きくのしかかって、欧州通貨中心に米ドル安が急速に進行しました。

 下記の記事は、8月9日(木)のブルームバーグの報道記事ですが、あまりに唐突であり、一部の金融関係者の1つの見方として報道されていました。

 しかし、ここにきて他の米大手金融機関も同じような懸念を持っていることを表明し始めたため、ご紹介します。

トランプ政権がドル安に向け行動を起こす可能性も想定-JPモルガン

米国が幾つかの国・地域との間で通商対立を繰り広げる中で、弱いドルを望むトランプ大統領がその実現に向け行動する可能性があるとの見方をエコノミストは真剣に受け止め始めている。

JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は今週の調査リポートで、「現政権が時々、ドル安選好をほのめかしたり、中国による為替操作と受け止められるものに反対を表明したりする点を特に踏まえると、当社の基本シナリオではないものの、一段と介入主義的な通貨政策への転換の可能性を排除することはできない」と指摘した。

出所:Bloomberg

 トランプ大統領が、再三、中国と欧州に対して、為替について不満を述べていることは、たしかです。

 ここに円が入っていないのは、安倍首相が総裁選を控えているため、円に関してのコメントを控えているのではとの見方も…。

 どちらにせよ、8月15日(水)を境に、ユーロ/米ドルを筆頭に、対欧州通貨で米ドル安が進んでいます(ユーロ/米ドル、ドルインデックスは、8月15日(水)を変化日として方向を転じています)

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

■ジャクソンホール後、欧州通貨が対米ドルで急騰

 以下は、ジャクソンホールで経済シンポジウムが開催された8月24日(金)以降の、米ドルに対する主要通貨の騰落率を示したグラフです。

 英ポンド、スイスフラン、ユーロといった欧州通貨が軒並み米ドルに対して急騰しています。

対米ドル騰落率

(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドルは、イタリア国債利回りの上昇、スペイン経済の失速、そして、トルコリラのプロキシー(=代替)としてのユーロ売りという悪材料をすべて織り込んだ後、節目の1.1500ドルを超えて急反発しています

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

 加えて、英ポンド/米ドルは、バルニエEU主席交渉官が「われわれは他の国と違い英国にパートナーシップを提供する用意がある」とのコメントしたことに加え、英国のラーブEU離脱担当相からの「合意に近い」との発言もあり、8月29日(水)の欧米市場で急騰しています。

英ポンド/米ドル 2時間足
英ポンド/米ドル 2時間足

(出所:Bloomberg)

 ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルともに日足チャートでは、TDシーケンシャル(※)でカウントダウンを点灯させており、ボトムアウトを示唆しています。

(※編集部注:「TDシーケンシャル」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)

■豪州政局は依然不安定で、オセアニア通貨は軟調

 ただ、この米ドル売りの流れに追随しない通貨があります。

 それは、オセアニア通貨です。

前回ご紹介させていただきましたが、豪州の政局は、依然、不安定

【参考記事】
トルコショック収束も世界的な政治混乱は続く…。 豪州の政情不安で豪ドルが下落!(8月23日、西原宏一)

 モリソン前財務相が第30代首相に就任し、いったん沈静化することが期待された豪州の政局ですが、自由党の支持率はさらに下落しており、政局は混乱したまま…。

 加えて、8月29日(水)には豪州の大手銀行、ウェストパック銀行が変動型住宅ローン金利を引き上げました。

 住宅ローン問題を懸念していたRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])にとって、この措置は住宅ローン問題をさらに悪化させることになり、結果として、RBAの利上げが遠のき、豪ドルを押し下げる展開に。

豪ドル/円 4時間足
豪ドル/円 4時間足

(出所:Bloomberg)

 つまり、ジャクソンホールでの経済シンポジウム以降は、米国株が底堅く推移しており、リスクオンと言える環境にも関わらず、豪ドルやNZドルといったオセアニア通貨は軟調な展開です。

 結果、ユーロや英ポンドが米ドルに対して急反発している中、豪ドルは軟調に推移しているわけですので、ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルといった豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は急騰しています。

■資源国から流出した資金は欧州へ

 今月(8月)を振り返ってみれば、トルコリラや南アフリカランドなどの新興国通貨は軟調。そして、中国経済が失速していることを背景に、豪ドルやNZドルも軟調でした。

【参考記事】
トランプ砲がトルコショックに追い打ち! 米国株が崩れると、リスクオフ加速も…!?(8月13日、西原宏一&大橋ひろこ)

 こうした新興国、資源国通貨から流出した資金は、おもに米ドルに流れていましたが、「米利上げの打ち止め時期が近づいた」という観測や、「トランプ政権が米ドル安に向け行動を起こす可能性」といった報道から米ドルが軟調に。

 結果、前述のような資金は、欧州に流れるという見方が増えてきており、資源国通貨から米ドルへ(豪ドル/米ドル、NZドル/米ドルの下落)という一辺倒の流れから、米ドルから欧州通貨へ(ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの上昇)、資源国通貨から欧州通貨へ(ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルの上昇)という流れが共存する展開となっています。

 米ドルの一人勝ちだった相場展開が欧州通貨へと移行する中、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、そして、ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルの上昇に注目です。


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