■ジャクソンホール後、欧州通貨が対米ドルで急騰
以下は、ジャクソンホールで経済シンポジウムが開催された8月24日(金)以降の、米ドルに対する主要通貨の騰落率を示したグラフです。
英ポンド、スイスフラン、ユーロといった欧州通貨が軒並み米ドルに対して急騰しています。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルは、イタリア国債利回りの上昇、スペイン経済の失速、そして、トルコリラのプロキシー(=代替)としてのユーロ売りという悪材料をすべて織り込んだ後、節目の1.1500ドルを超えて急反発しています。
(出所:Bloomberg)
加えて、英ポンド/米ドルは、バルニエEU主席交渉官が「われわれは他の国と違い英国にパートナーシップを提供する用意がある」とのコメントしたことに加え、英国のラーブEU離脱担当相からの「合意に近い」との発言もあり、8月29日(水)の欧米市場で急騰しています。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルともに日足チャートでは、TDシーケンシャル(※)でカウントダウンを点灯させており、ボトムアウトを示唆しています。
(※編集部注:「TDシーケンシャル」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)
■豪州政局は依然不安定で、オセアニア通貨は軟調
ただ、この米ドル売りの流れに追随しない通貨があります。
それは、オセアニア通貨です。
前回ご紹介させていただきましたが、豪州の政局は、依然、不安定。
【参考記事】
●トルコショック収束も世界的な政治混乱は続く…。 豪州の政情不安で豪ドルが下落!(8月23日、西原宏一)
モリソン前財務相が第30代首相に就任し、いったん沈静化することが期待された豪州の政局ですが、自由党の支持率はさらに下落しており、政局は混乱したまま…。
加えて、8月29日(水)には豪州の大手銀行、ウェストパック銀行が変動型住宅ローン金利を引き上げました。
住宅ローン問題を懸念していたRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])にとって、この措置は住宅ローン問題をさらに悪化させることになり、結果として、RBAの利上げが遠のき、豪ドルを押し下げる展開に。
(出所:Bloomberg)
つまり、ジャクソンホールでの経済シンポジウム以降は、米国株が底堅く推移しており、リスクオンと言える環境にも関わらず、豪ドルやNZドルといったオセアニア通貨は軟調な展開です。
結果、ユーロや英ポンドが米ドルに対して急反発している中、豪ドルは軟調に推移しているわけですので、ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルといった豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は急騰しています。
■資源国から流出した資金は欧州へ
今月(8月)を振り返ってみれば、トルコリラや南アフリカランドなどの新興国通貨は軟調。そして、中国経済が失速していることを背景に、豪ドルやNZドルも軟調でした。
【参考記事】
●トランプ砲がトルコショックに追い打ち! 米国株が崩れると、リスクオフ加速も…!?(8月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
こうした新興国、資源国通貨から流出した資金は、おもに米ドルに流れていましたが、「米利上げの打ち止め時期が近づいた」という観測や、「トランプ政権が米ドル安に向け行動を起こす可能性」といった報道から米ドルが軟調に。
結果、前述のような資金は、欧州に流れるという見方が増えてきており、資源国通貨から米ドルへ(豪ドル/米ドル、NZドル/米ドルの下落)という一辺倒の流れから、米ドルから欧州通貨へ(ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの上昇)、資源国通貨から欧州通貨へ(ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルの上昇)という流れが共存する展開となっています。
米ドルの一人勝ちだった相場展開が欧州通貨へと移行する中、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、そして、ユーロ/豪ドルや英ポンド/豪ドルの上昇に注目です。
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