■ドイツ経済界がトルコ投資のために提示した5つの要件とは?
エルドアン大統領は、先週(9月24日~)行われた国連総会の後にドイツを訪問しました。
国連総会後にドイツを訪問し、メルケル首相と握手するエルドアン大統領。エミンさんはエルドアン大統領のドイツ訪問はポジティブとの見方を示している (C)Bloomberg/Getty Images
ドイツのメルケル首相とも会談しましたが、トルコリラ投資家にとって重要なのは、9月28日(金)に行われたエルドアン大統領とドイツ経済界の集会です。
トルコメディアの報道によれば、この集会は、トルコに投資をしているドイツの大手銀行とトルコでビジネスを行っているドイツ企業の代表が集まったそうです。
たとえば、ドイツの民間銀行の団体であるドイツ銀行協会(BdB)のクラウトシャイト(Krautscheid)会長やドイツ産業連合(BDI)のケンプ(Kempf)会長なども出席しています。
エルドアン大統領の「ドイツからトルコへの投資を期待しています」という発言に対して、ドイツ経済界は、投資をするために5つの要件を提示しました。
これらは、(1)法制度の強化、(2)民主化プロセスの再建、(3)トルコ中央銀行の独立性の担保、(4)EU(欧州連合)のカスタムユニオン(関税同盟)のルール厳守、(5)新しい投資のためのフレームワークの設置です。
トルコに7000社以上のドイツ企業があって、これらは約12万人の雇用を生んでいます。また、ドイツにトルコ人の移民が300万人以上住んでいて、両国の経済的なつながりは非常に強いです。
実際に、私の親戚でもドイツに住んでいて、すでにドイツ国籍を取得している人がたくさんいます。ドイツとオスマン帝国は、第一次世界大戦をともに戦った歴史もあり、トルコの近代化において、ドイツの影響は非常に大きいものです。
【参考記事】
●東ローマ帝国滅亡からクーデター失敗まで! トルコリラ急落の今、トルコの歴史を振り返る
■エルドアン大統領は、提示された要件を簡単には呑まないか
今回、ドイツ側から出された要件ですが、特に最初3つの要件に関しては、ドイツだけではなく、EU全体のエルドアン政権に対するリクエストとして解釈することができます。
EUはトルコの民主化、報道の自由を強く望んでいます。一方で、エルドアン政権は、ドイツ側が提示したすべての要件を簡単に呑むとは考えにくいです。
ドイツ国内にいるエルドアン支持者のトルコ移民から熱烈な声援を受ける中、エルドアン大統領は、ケルンで建設されたトルコ宗教庁管轄の新しいモスクのオープニングセレモニーに参加しました。
ここで行った演説で、彼は米国やドイツを批判しましたが、この演説は、ドイツ政界の反発を受けました。エルドアン政権は、ドイツのトルコ人移民の中で支持率が高く、トルコの政治がドイツの国内情勢に影響を与えてしまうほどです。
反移民センチメントが高まっている中、エルドアン大統領の支持者の動きは、いつも以上にドイツの政治家の反感を買っている可能性があります。
■エルドアン大統領のドイツ訪問はポジティブ!
しかし、個人的には、今回のエルドアン大統領のドイツ訪問は、ポジティブと考えています。
なぜならば、彼は帰国後の演説で、「今後はEUとともに道を歩む!」と発言しました。これは、トルコ経済とトルコリラにとっても、大いにポジティブな発言です。
市場もこの動きを評価して、トルコリラはその後、対円で19円を超えました。ドイツが、トルコと米国の対立の仲介役をしてくれるという期待もあります。
【参考記事】
●ブランソン牧師の10月釈放期待が高まる! 実現すれば、トルコリラ/円は20円超えへ(9月26日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領のドイツ訪問を受けて、10月12日(金)の裁判でブランソン牧師の釈放の可能性が高まったと考えています。引き続き、牧師の釈放が実現すれば、トルコリラは20円を超えると予想しています。
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