■先週までのマーケットと中間選挙を併せて考えれば…
さて、10月に入ってから米国の株式市場はギクシャクした動きになっています。これは世界の株安がとうとう米国にも追いついてきたというふうにも解釈できると思います。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
マーケットが下落した直接の引き金は、米10年債利回りが3.2%に乗せ、金利がスルスル上昇したことで、それが株式バリュエーションや実体経済に悪影響を与える懸念が出てきたことによります。

(出所:Bloomberg)
実際、このところ米国の自動車販売台数や住宅販売はさえません。

(出所:Bloomberg)

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つまり、中間選挙そのものが波乱の要素をあまり含まないとしても、現在の神経質なマーケットとの兼ね合いで株価が急落するリスクはあるということです。
■パウエル議長は株価急落なら利上げの手を止める
前回、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で記者団から「どういうシナリオでFRBは利上げの手を止めるのか?」という質問が出ました。
その際、パウエル議長が真っ先に示した具体例として資産価格が下落した場合、つまり、株式市場が下げた場合、利上げをストップすると明言していました。
今のところ、米国経済が減速する兆候は少ないです。消費者のマインドは良好ですし、クレジットカードの支払い遅延なども増えていないですし、企業が無謀な借入れを行っている形跡もありません。したがって、それらの行き過ぎが原因で米国の経済がおかしくなるリスクは小さいのです。
もし、異変が最初に表われるとすれば、それは株式市場だと思います。なぜなら、株には先見性があるからです。その株式は他の指標に先がけて「黄信号」を点灯しています。
もし、それが原因でパウエル議長が利上げの手を止め、当分様子見に徹するという新路線を打ち出したなら、それは今回の利上げサイクルで最初の軌道修正ということになります。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
通常、長い利上げ局面でそのような小休止があることは珍しくありません。だから利上げの手を休めるということが即、景気暗転につながるとは限らないのです。
実際、ドットコム・ブームの只中の1998年にもロシアがデフォルトした関係で金融引締めが一時見合わせられるということが起きました。その後、米国株式市場は再びリズムを取り戻し、続伸しました。
【参考記事】
●ノーベル賞を信じるな!? 巨大ヘッジファンドLTCM破綻の余波で米ドル/円が22円暴落!
■米ドルは弱含む可能性のほうが高い
さて、米国株式市場がギクシャクしていることを述べたわけですが、それはFRB(米連邦準備制度理事会)が小休止を発表する確率が高まっていることを意味し、そのことはとりもなおさず、米ドルにとっては弱気な材料が新しく出てきたことを意味します。
このため、今週(10月29日~)以降、あまりに株が下がるようだったら、FRBが利上げの手を止めることを見越して米ドル安に振れると考えた方が良さそうです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■下院は民主党、上院は共和党になる公算が高い
11月6日(火)の中間選挙では下院が民主党、上院が共和党になる公算が高いです。その場合、マーケットはあくびをすると思います。
また、次に確率が高い下院・上院ともに共和党になるシナリオでもマーケットへの影響は限定的だと思います。

つまり、中間選挙は相場の材料としてはあまり大きくないのです。
しかし、このところ米国の株式市場は神経質な展開になっているため、それが選挙の材料と組み合わされると相場が動くシナリオもあるかと思います。
相場急落局面では、FRBは利上げの手を止めるというシグナルを発すると思われます。その場合、米ドルは安くなると思います。
(編集担当:ザイFX!編集部・庄司正高)
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