水曜日の夜のパウエル議長の講演で、「ドル金利は中立金利に近づいている」という見解を示したのが、米国株の急上昇をもたらした。金利が上がらないのであれば、それは企業コストの増大は避けられるということを好感してのことだ。
しかしドル金利の上昇は見られず、金利商品はほとんどレベルを変えていない。その上、為替相場でもドル中心の為替レートはドル安が大きく進んでいるということもない。ドル円では30ポイントほどだけドル安が進んだ程度であって、大台すら変わっていない。
米国株の上昇を反映させるとすれば、ドル円も108円台くらいまで急落してもおかしくはないところだ。金利の世界と為替の世界では無反応に近かったことをかんがみると、株価だけが過剰に反応しているのだと判断せざるをえない。
そういうわけで為替相場のほうは、いたって冷静。ドル金利がそれほども低下していないのだから反応のしようがないのも当然だ。むしろ反動の方が恐ろしい。10月のパウエル発言では「中立まで遠い」といっていたのと比べたらということなので、株価が上昇するタイミングを探っていた連中にとっての拡大解釈だけなのかもしれないのである。
実体が現われるようになってくると、株価調整が強いられることになる。となるとリスク回避の動きが顕著になるのは避けられない。そちらのほうが為替相場もドル金利も大きく動きそうだということである。むろん、リスク回避の方向にである。
そうした高値警戒感も出てきた中での昨日のマーケットだった。他の相場がついてこないので、米国株の伸びにはまったく勢いがなくなっていた。むしろ逃げの株売りが大量に出てくる始末。
週末に米中協議を控えているので積極的なポートフォリオの崩しを伴う株売りこそ出なかったが、いかにも不自然さの残る中での小動きの一日だった。FOMC議事録の直後にちょっとだけ動く局面もあったが、値幅は小さいものにとどまっている。
米中会合は土曜日の夕方になるので、今晩のニューヨーククローズまでには観測記事しか出てこない。しかるにマーケットも方向感の出る激しい動きはないだろう。まあフラストレーションはたまるが、勝負は週明けの早朝からになる。
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