■トルコの11月CPI下落は予想範囲内の結果に
今週、12月3日(月)に発表されたトルコの11月CPI(消費者物価指数)はマイナス1.44%となり、CPIは年間で21.62%に下がりました。
(出所:Bloomberg)
(出所;Bloomberg)
個人的に予想範囲の結果で、11月7日(水)の掲載されたコラムでも指摘しましたとおり、10月にPPI(生産者物価指数)の上昇が、9月の10.88%増から0.91%増に急速に萎んだことから、11月以降のCPIが下がることは、わかっていました。
【参考記事】
●インフレ減速と原油下落はトルコに追い風! 21円台維持はハルクバンクへの罰金次第か(11月7日、エミン・ユルマズ)
■自動車や家電製品の消費税引き下げも影響
CPIを押し下げたもう1つの要因は、トルコ政府による自動車、家電などの製品への消費税の引き下げです。
この引き下げの影響が12月にも及んだ場合、12月のCPIがマイナス2%前後で着地すると予想しています。11月でその効果が切れるようだと、12月CPIは0.2%~0.5%増となる可能性があります。
そうしますと、CPIは年間で20%~22%のレンジで着地するでしょう。原油価格の急落の影響は、まだ物価に織り込まれていないので、おそらく2月までCPIの頭を抑えることが可能だと考えます。
(出所:Bloomberg)
しかし、トルコ政府は、来年(2019年)3月に行われる地方選挙の前に、また一連の景気刺激策を打ち出す準備をしていると報道されています。景気刺激策が実施された場合、これらはインフレの上昇圧力要因となりますので、選挙後にCPIが再び大きく跳ね上がるという最悪の事態になりかねません。
■タマネギ価格暴騰が国民の不満を爆発させる?
インフレ圧力の弱まりと経常赤字の縮小は、ポジティブな動きですが、事前にわかっていて、すでに為替に織り込まれた内容でもあります。
一方で、中長期的なインフレ対策は、まだ打ち出されておらず、政府はどちらかといえば短期的な対策ばかりにフォーカスしている印象があります。
トルコメディアの報道によれば、政府から生産者・販売者に対して、値上げをしないよう圧力がかけられているそうです。政府はインフレ対策として10%値下げキャンペーンを打ち出していて、小売業者は半強制的にこのキャンペーンに参加させられているようです。
直近でタマネギの価格が暴騰しているのも大きな問題になっています。タマネギは、今夏以降に1キロ=7トルコリラまで上昇し、価格は今年(2018年)に入ってから約250%も上昇しました。
タマネギはトルコ料理に欠かせない素材のひとつであり、タマネギ価格の高騰は国民の不満を爆発させる恐れがあります。
この事態を重く見たトルコ政府は、タマネギ業者の倉庫に押し入って、大手販売業者などの関係者をタマネギ価格を意図的に吊り上げているとの理由で逮捕しました。
日本の米騒動ならぬトルコのタマネギ騒動です。
■CPI発表後にトルコリラ/円は21円割れ…
CPI発表まで堅調に推移していたトルコリラですが、発表後に下げに転じて21円を割ってしまいました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
織り込み済み、材料出尽くしという側面がある一方で、CPI下落を見たトルコ中銀が利下げを行うのではないかとの投資家の懸念が下落の要因だと考えます。個人的には、政策金利の引き下げの可能性は低いと考えます。
懸念すべき点は、トルコ政府による景気刺激策という名の間接的な金融緩和。これを選挙前に実施する可能性が高く、そのしわ寄せが選挙後に来ることです。
トルコリラが3月まで堅調、その後は要注意だと考える理由はここにあります。
【参考記事】
●トルコリラは、2019年3月まで堅調と予想。だけど…2つのリスク要因には警戒を!(11月21日、エミン・ユルマズ)
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