■トルコの9月経常収支が大幅改善! そのワケは?
今週(11月12日~)、トルコにとって、もっとも注目すべきマクロデータは12日(月)に発表されたトルコの経常収支のデータでした。
トルコの9月の経常収支は18.3億ドルの黒字となり、8月の18.6億ドルの黒字(8月発表時の25.9億ドルの黒字から修正)と比べ、やや減りましたが、前年同月比に比べると大幅に改善しています。
(出所:Bloomberg)
昨年(2017年)の9月は、44億ドルの経常赤字でした。経常収支が改善した背景には、トルコの観光業の復活があります。トルコリラの下落も貢献し、トルコ旅行は欧州を中心に再び人気が高まっているようです。
9月の経常黒字は、実に2015年以来のことです。観光収入だけではなく、トルコの輸出も増えてきています。今年(2018年)10月までの輸出金額は1668億ドルとなり、トルコ史上最大記録を更新しています。
この結果を受け、政府の年末までの輸出目標である1700億ドルを超えることは確実となりました。トルコリラの下落で輸出競争力が増しているのが背景だと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 月足)
■経常収支改善にはネガティブな一面もある
観光収入と輸出の増加というトルコ経済にとってポジティブな要因があるとともに、このデータにはネガティブな一面もあります。
それは、経常収支の改善が景気減速によるものでもあるからです。通貨(トルコリラ)下落による輸入コストの増加が原因で、トルコの総輸入額が減っています。
これは、経済活動の停滞を意味する動きです。輸入品の多くを占める自動車、電気製品などの消費は全体的に落ち込んできています。トルコの年間インフレ率は20%を超えているので、全体的に消費が冷え込む傾向にあります。
【参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!? 原油価格とトルコリラは逆相関関係にある(10月31日、エミン・ユルマズ)
●インフレ減速と原油下落はトルコに追い風! 21円台維持はハルクバンクへの罰金次第か(11月7日、エミン・ユルマズ)
■原油下落は経常赤字の改善とトルコリラに追い風
マクロデータに両面性があることが、わかっていただいたと思いますが、トルコ経常収支に関して言えば、現時点でもう1つ、大きくポジテイブな要因も動いています。
それは、原油価格の下落です。
トルコの昨年(2017年)末の経常赤字のGDPに占める比率は5.5%と世界最大級ですが、その中身は、ほぼ原油です。原油を除くと、トルコの経常収支は黒字に転換します。
つまり、原油価格の下落は、トルコの経常赤字を大幅に改善させる効果があり、トルコリラにとっても追い風です。
(出所:Bloomberg)
トルコリラが対円で21円まで上昇できたのは、原油価格の下落も深く関係していますので、原油の弱気トレンドが継続すればトルコリラも上昇を続けると考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
■リスク要因はハルクバンクへの罰金問題
一方で、先週、11月7日(水)のコラムでも伝えたとおり、リスク要因はハルクバンクへの罰金の件です。
【参考記事】
●インフレ減速と原油下落はトルコに追い風! 21円台維持はハルクバンクへの罰金次第か(11月7日、エミン・ユルマズ)
ハルクバンクの件で、いつ動きがあってもおかしくないですが、なかなか結果が出ません。トルコと米国の水面下での交渉が続いている可能性があります。
米国によるイランへの経済制裁は今月(11月)からですが、トルコのサポートがないと、この経済制裁は思うように効果を発揮することができません。そのため、米国もトルコと関係改善を強く望んでいると考えています。
しかし、米国がどんなにトルコに配慮しても、ハルクバンクへの罰金が全額なくなることはないと予想しています。
罰金の金額が5000億円~6000億円程度だとトルコリラにさほど影響を与えませんが、1兆円~2兆円という大規模な罰金の場合、トルコリラは、対円で再び20円を割ると予想しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
トルコリラ投資家にとっては、引き続き、この件が一番の注目ポイントです。
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