■ファーウェイ事件は米中対立を激化させるのか?
前回のコラムではファーウェイ事件を取り上げ、また、ファーウェイ・ショックをもって株式相場全体がいったん底打ちしたか、これから底打ちを果たすだろうという推測をまとめた。
【参考記事】
●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(2018年12月7日、陳満咲杜)
市況はそれ以降、あまり大した進行が見られないが、判断自体は維持しておきたい。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
一番大事なところは、やはり市場関係者が心配していたように、「ファーウェイ副会長の逮捕によって、米中対立が一段と激化し、また、それによってリスクオフの流れが強まっていくのかどうか」にあるが、目先の状況に照らして考えると、そのリスクは低下しているようにみえる。
■米国の要求をのみ、中国も大型減税を検討!?
確かに中国はカナダ人2名を逮捕し、カナダ当局に対抗する動きが鮮明になってきたが、中国当局のやり方としてむしろ想定範囲内で、今さらサプライズとなるわけがない。
肝心なところは、やはり対米の関係だ。カナダがファーウェイ副会長逮捕に踏み切ったのは米国の要請だが、対米闘争激化の兆しは今のところ、中国政府の言動から確認されていない。むしろ、緩和の兆しが鮮明になってきたかとみる。
トランプ氏が自慢しているように、中国は少なくとも前回の米中首脳会談後の48時間内で、すでに米国産大豆200万トンを買い付け、クリスマス前後にして800万トン~1000万トンの追加買い付けも米側に約束した模様だ。
さらに、輸入米自動車関税を従来の40%から15%へ大幅に引き下げ、自国企業を優遇したハイテク産業育成政策である「中国製造2025」の見直しなどの措置の検討にも着手したと報道され、対米譲歩の姿勢を鮮明化させつつある。
中国高官も、米国が提示した90日間の期限、すなわち2019年2月末までには、米国と何らかの形で合意できるとの自信を示した。
これぐらいは驚くなかれ、実は北京消息筋が最近ささやくウワサの中で、最もインパクトの大きい政策は、なんと、中国も米国の要求をのむカタチで、大型減税を検討しているということだ。
この規模は5兆人民元とも言われ、実現すれば、中国どころか世界景気の起爆剤にもなり得るから、中国一部国民からさっそく「川皇(※)こそ我々の救世主」と賛美の声が出始まっているようだ。
(※注:トランプ氏の中国訳は「川普(Chuan pu)」と書くため、皇帝の如き「川皇」とも呼ばれる)
■習氏は首脳会談前にファーウェイ副会長逮捕を知っていた!?
中国のこれからの政策について、現時点ではウワサや推測の程度でしかないが、「ファーウェイ副会長の逮捕で米中衝突激化」というシナリオに、筆者は最初から懐疑的であった。
なにしろ、北京消息筋の話では、どうやら12月1日(土)のアルゼンチンでの米中首脳会談前に、習近平中国国家主席はすでに逮捕の件を知っていた模様で、トランプ氏と会談した際、この件に一切触れなかったこと自体がサインであり、また興味深いところだった。
いろんな理由があると思われるが、最も大きいのはほかならぬ、対米交渉を何としても合意に持っていきたいとの一心にあるだろう。
そのほかの諸事情も消息筋にいろいろと教えてもらったが、複雑なので書ききれない。つまるところ、中国景気減速圧力が高まる中、中国指導部は対米講和路線を取らざるを得なくなり、今は「臥薪嘗胆」の時期と自ら定めた模様だ。
だから、習近平国家主席はすでに逮捕の件を知っていたとしても、12月1日(土)会談の席にてまったく切り出さず、本日(12月14日)に至るまで対米強硬策を打ち出せずにいるわけだ。
ゆえに、米中対立激化の懸念でもたらされた株式市場の混乱自体が行きすぎで、また同混乱があったからこそ、これからの市況を推測できるではないかと思う。
■米ドル/円のチャートから、株含めた今後の市況を推測
前回のコラムでは、チャート上における米国株や日本株の底打ちのサインを指摘していたが、同サインを理解するには、まず米ドル/円のチャートを見ていただきたい。
【参考記事】
●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(2018年12月7日、陳満咲杜)
なにしろ、理屈は同じなので、米ドル/円の実例をみれば、おのずと株の方も理解できるかと思う。
筆者が配信したレポートをもって説明するが、本文は以下のとおり。
まずは12月7日(金)配信分から。
「オポチュニティ ドル/円・構造の確認3」
(出所:FXブロードネット)
昨日「ファーウェイ・ショック」でドル/円は一時11月20日安値を下回った。同安値の一時割り込みは想定範囲内の出来事とはいえ、やはり構造上の点検が迫られたかと思う。
上のチャートで示すように、10月高値から大型シンメトリー・トライアングルのフォーメーションの構築自体は変わらない。しかし、昨日の一時安値更新を受け、11月高値からジグザグ変動構造と数え、昨日安値をもって一服したわけで、トライアングル内におけるひとつの子波として数えたほうがより自然だとみる。ジグザグ変動構造自体もN字型変動に近く、同可能性を証左しているかとみる。
もっとも、昨日大きく続落したものの、大引けが比較的に高く、日足では「スパイクハイ」のサインをもって、同日11月20日安値に対する一時の更新自体が「フォールス・ブレイクアウト」の可能性を示した。同サインの点灯が証明されば、結果的に10月26日の罫線が果たした役割と同じなので、これから切り返しをもたらすでしょう。これから米雇用統計の発表があり、再度反落も覚悟しなければならないが、前記内部構造存在の有無を検証する好機にもなるかとみる。
次は昨日(12月13日)に配信したレポートより。
「オポチュニティ ドル/円・構造の確認3」
(出所:FXブロードネット)
ドル/円は大型トライアングル型保ち合いにおり、また上放れの準備段階におる、といった見通しは繰り返し指摘してきた通り、同見方が一段と証左する値動きについて、10日の罫線が再度重要なサインを点灯してくれたとみる。
既述のように、6日の一旦安値トライ、11月安値に対する一時の安値更新に留まり、また比較的に高く大引けしたことから、「フォールス・ブレイクアウト」の疑いが濃厚であった。同見方、10月26日の一時安値更新(同15日に対して)、更にその後の切り返しによって証左され、同じ理屈で6日以降の切り返しが期待されていた。
10日の大陽線、結果的に「強気リバーサル」のサインをもって5日以来の高値で大引け、前日(7日)の小動きと「アウトサイド」のサインを果たしながら、6日安値を下回れなかったから、総合的にみれば、10日罫線自体は「フェイク・セットアップ」のサインとして扱える。従って、ここから余程の材料がない限り、10日安値を下回れないと思う。また、「フェイク・セットアップ」である以上、ここから効用を発揮、再度押しがあっても限定させる上、一気に上放れを果たす可能性も。引き続き強気スタンスで臨みたい。
■ドルインデックスはこれから上値更新しやすい?
前述の米ドル/円の解釈をみれば、足もとドルインデックスが置かれている強気基調も理解でき、またこれから上値更新しやすいことが推測されるだろう。

(出所:Bloomberg)
同じ視点や理屈では、「ファーウェイ・ショック」後の日米株価はともにいったん安値を形成していたが、その安値打診自体が「ダマシ」になる公算は高い。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
前述のように米中対立の一服もあって、年末年始において、英国のEU離脱問題など、まだまだいろんなリスク要素が存在する中(といっても、リスク要素が存在しない環境自体は存在しない)、基本的には米ドル高・株高になりやすいのではないかとみる。市況はいかに。
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