■米中雪解けへの期待からNYダウや米ドル/円が反発
株価がだいぶ戻してきましたね。NYダウは、2018年10月高値からの下落に対する50%戻しを超えてきました。
(出所:Bloomberg)
トランプ米大統領は2018年12月末に、「今がとてつもない買いの好機」と米株買いを促していましたが、そのとおりの展開ですね。
リスク要因である米中貿易摩擦についても、1月17日(木)、ムニューシン米財務長官は、対中関税の一部または全部撤廃を提案したとの報道が流れました。
米財務省の報道官は即座に否定したものの、雪解けへの期待から米ドル/円は110円手前まで急伸しています。
【参考記事】
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
トランプ米大統領は、株価上昇を自分の成果だとして誇っていますから、株価が下がれば自分の責任になってしまう。
昨年(2018年)12月の米株の急落に対して、トランプ政権からは米中融和ムードを醸し出すコメントが出てくるのでは、との見方が増えていましたが、そうしたコンセンサスどおりの動きともいえます。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
■NYダウや米ドル/円より、日経平均の戻り余地が大きい
中国側からも、今後6年間で対米貿易黒字をゼロにすることをめざすとのニュースが出ています。米中貿易交渉の落とし所が徐々に見えてきた感じでしょうか。
対米黒字ゼロというのは、さすがに現実味が薄いでしょうが、世界的に株価下落が激しかっただけに沈静化させたい気持ちは強いのでしょう。
トランプ政権の本音として中国を叩きたい意向は変わらないでしょうが、調整局面はもう少し続きそうですね。
どこまで戻すのでしょうか。
米ドル/円は、2018年10月高値から引いたフィボナッチ・リトレースメントのちょうど50%まで戻しています。このまま110円に乗せる可能性もありますが、111円を大きく超えていくようなイメージはありません。
むしろ戻りの余地が大きいのは日経平均ですね。
(出所:Bloomberg)
日経平均は、NYダウや為替に比べて戻りが弱いんですよね。まだ38.2%戻しにも達していません。
年末、一気にリスクオフへ傾いた分、もう少し戻る余地がありそうですね。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は今週(1月21日~)、また下げていくと見ていますか?
昨年(2018年)の米ドル/円は年初から2か月で8円ほど下げましたが、今年は年初から2日で5円下げました。もっと言えば15分ほどで、ひと相場終えてしまっています。
ここからすぐに下げるとも考えづらいですし、1月3日(木)の105円台で買えなかった年金などの買いも出てきている。少なくとも今月(1月)中は、方向感なくフラフラするのではないでしょうか。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
■ブレグジット代替案よりEU離脱延期の可能性が高い?
先週(1月14日~)、英議会でブレグジット案が否決された英ポンドは、ショートカバーで大きく戻しましたが、200日移動平均線でピタッと止められています。
【参考記事】
●EU離脱案が歴史的大差で否決されたのになぜ、英ポンドは上昇しているのか?(1月18日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
プランB、すなわちブレグジットの代替案は今夜(1月21日夜)が提出期限。新たな修正案が出てくるものと思われますが、1月15日(火)に大差で否決さればかり。英議会がすんなり通すとは、とても思えません。
むしろ、3月29日(金)のEU(欧州連合)離脱が延期される可能性が高まっていると見ています。
【参考記事】
●採決間近! 英首相は離脱延期を選択へ!? 米ドル/円は売り目線だが、当面は横ばい(1月15日、バカラ村)
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
英ポンドに対しては、強気のコメントが増えてきた印象です。
「ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱※)さえなければ英ポンドはアンダーバリュー(過小評価されている)」というのがコンセンサス。これまで英ポンド急落へ備えてヘッジをかけていた投資家から、ヘッジを外す動きも出てくるかもしれません。
EU離脱の延期となれば200日線を越えて上昇する可能性もあるでしょうが、決め打ちせず、様子を見たいですね。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
■ECBがガイダンス変更!? 長引く米政府機関閉鎖の影響は?
今日(1月21日)は米国が休日、1月24日(木)にはECB(欧州中央銀行)理事会が開催されます。
ECBが景気減速を受けて、「今年(2019年)の夏の終わりまで政策金利を現行水準にとどめる」、つまり秋以降には利上げもありえるとしていたガイダンスを変更してくると見る人もいますね。
【参考記事】
●ECBの利上げ期待剥落でユーロ急落! 米中貿易摩擦の激化は米ドル安要因に?(6月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
ECBがガイダンスを変えると見ている人のほうが多い印象ですね。変更への期待からユーロショートが増えているようですが、個人的には変えないのではと思います。
ユーロのショートが増えているのかどうか、米政府機関閉鎖の影響でIMM(国際通貨先物市場)のポジションが発表されなくなっているため、数字が確認できないんですよね。
メキシコ国境の壁建設に対する民主党の反対で、米政府機関閉鎖の期間は史上最長に。どこかでトランプ米大統領が折れざるを得ないでしょうね。
米政府機関閉鎖が終了すれば、株価にはプラス要因となりますか?
一時的には好材料となるかもしれませんね。株価が戻し、米ドル/円も上げたところでは戻り売りを考えています。ただ、下落再開にはもう少し時間がかかりそう。
今週(1月21日~)は、ブレグジットの行方に注目しておきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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