■トルコ中銀が預金準備率を引き下げ
2019年2月16日(土)に、トルコ中銀は預金準備率を引き下げました。
トルコ中銀の声明によると、国内銀行のトルコリラ建ての預金準備率を1年以上の定期預金の場合は50bp、1年以下のその他預金は100bp引き下げました。
また、預金準備率の計算に加えてもいい金(ゴールド)の割合を5%から10%に引き上げています。
バンカー用語で言ってしまうと個人投資家に難しく聞こえますが、これは市場への流動性供給を増やすための措置で、間接的な金融緩和です。
トルコ中銀は同じ声明で、インフレ率が改善するまで引き締め姿勢を続けると付け加えていますが、預金準備率の引き下げが国内外の投資家に不安を与えてしまったのは事実です。
■12月経常収支が5カ月ぶりの赤字に…
もうひとつ、トルコリラにとって懸念すべきマクロ指標は12月の経常収支でした。
経常収支は5カ月ぶりにマイナスに転じて、14億ドルの経常赤字となりました。この結果を受け、2018年通期の経常赤字は276億ドルに達しました。
【参考記事】
●原油価格の反発がトルコの懸念材料に…。 トルコリラ/円の22円超えは難しいのか?(1月23日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloomberg)
経常収支の悪化は原油価格のリバウンドの影響が大きいですが、トルコ経済は、抱える構造的な問題の解決が進んでおらず、経常収支の原油価格への依存度が高いことを示しています。
(出所:Bloomberg)
■トルコ国営銀行の業績悪化が懸念材料に
日本では、ほとんど注目されていませんが、実は個人的にもっとも気になることのひとつは、トルコ国営銀行の業績悪化です。トルコ主要国営銀行のジラート・バンカス(Ziraat Bankasi 日本語に訳すと農業銀行となります)の前期の業務純益は23億リラの赤字となりました。
ジラート・バンカスは農業を営んでいる国民に低金利で貸出などを行う重要な国営銀行です。また、イランとの裏取引で米国当局に捜査されているハルクバンク(Halk Bank)の業務純益も13億リラの赤字となりました。
これらの銀行の赤字額は4年で倍に膨らみ、財務省への配当もゼロになっています。国営銀行の不良債権比率も高いと指摘されていて、非常事態宣言が長引いたため、その実態も把握できていません。
■3月末の地方選挙までトルコリラ/円はレンジ相場か
トルコリラの方ですが、1月末から対円では21円を挟んだ動きが続いていて、ボラティリティが低くなっています。
【参考記事】
●シリア問題が引き続き大きな懸念材料に…。でも、トルコリラのセンチメントは改善中!(1月30日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
(出所:Bloomberg)
トルコ国内のマクロ指標はネガティブなものが目立つものの、今年(2019年)に入ってから新興国市場への資金流入が続いているのは大きなポジティブ要因です。
トルコ中銀の預金準備率の引き下げが、もっと大きな緩和策を示唆していなければ、現時点でトルコリラの下値は限定的だと考えます。
引き続き、インフレ率と経常赤字の数字に影響を受けながら、3月31日(日)の地方選挙まで狭いレンジで動く可能性が高いと考えます。
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