■米ドル/円はレンジをブレイク!
米ドル/円は、先々週(2月18日~)は小動きでしたが、先週(2月25日~)はレンジをブレイクし、112.07円まで上昇してきました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
フラッシュ・クラッシュ以降、米ドル/円は下がるのではないかという予想も多く、市場のポジションが売りに偏りやすくなっていたところ、機関投資家の買いが上がってきたことから、ショートカバーで上昇してきています。
さらに、2月28日(木)に発表された米GDP(国内総生産)や、その他の経済指標が良かったこともあって、米長期金利が上昇し、米ドル/円は、それに連れた動きとなりました。
(出所:Bloomberg)
米長期金利は、2.70%の短期的なレジスタンスを超えたものの、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が議会証言で、利上げが当面ないことを発言しているため、米長期金利の上昇は、続かないように思います。
【参考記事】
●膠着する米ドル/円。FRB議長の議会証言で円高の可能性!? ユーロ/英ポンドに妙味が!?(2月26日、バカラ村)
■貿易問題を楽観視も、中国株は調整!?
米朝首脳会談は、合意に至りませんでしたが、米中に関しては、トランプ大統領が60日間の交渉期限の猶予を与えると発言したこともあり、中国への圧力が緩和されていました。ウォール・ ストリート・ジャーナルは、3月27日(水)に首脳会談を開催し、通商合意に至る可能性があると報道しています。
関税撤廃の可能性もあり、楽観的な内容ではありますが、昨日(3月4日)の上海総合指数は、上ヒゲの長いローソク足となっています。ここまでの上昇が早かったこともあって、一時的に調整するのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
■日米通商協議は円高材料になるかも…
2月27日(水)には、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表が、「日本を含むアジア諸国には為替の問題がある」と発言しており、これは円高になる発言です。
米国の産業界からは、為替条項や車の輸出を規制する数量規制を望む声もあり、今後始まる日米通商協議は、米ドル/円の上値を抑える材料となってしまいます。
先週(2月25日~)末にはトランプ大統領が、「強いドルは望んでいない」と発言。さらに、FRBの金融政策を批判し、名指しはしていませんが、パウエル議長を批判した発言もしています。
今週(3月4日~)のマーケットは、このトランプ大統領の発言が影響して、やや米ドル安でスタートしました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
■米ドル/円は強い。大崩れはなさそう
ただ、トランプ大統領の発言があっても、米ドル/円は111円台後半で推移しており、ライトハイザー代表の発言があっても上昇してきていますので、「米ドル/円は強い」と、判断しなくてはいけないような動きをしています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
調整したとしても、大きく崩れることはないように思います。
【参考記事】
●いくつもの不確定要因に変化! 緩やかな株高・円安へ。米ドル/円は買い方針継続!(2月28日、今井雅人)
■今週はECB理事会に注目!
今週(3月4日~)は、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])やBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の金融政策発表もありますが、7日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会に注目しています。
ECB理事会では、政策金利は据え置き予想ですが、TLTRO(条件付き長期リファイナンスオペ)の導入があるのか、そこに注目しています。
もし、導入されるとなると、資金供給オペとなるため、ユーロ売りに動くと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
英国の合意なき離脱(※)の可能性が低下していることもあって、欧州リスクが減っているため、すぐに導入しない可能性もありますが、市場には導入すると考えている人の方が、多くいるようです。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●EU離脱を巡る再国民投票の可能性浮上! 英ポンド/円は節目の150円突破も視野に!?(2月28日、西原宏一)
■ユーロ/米ドルはレンジ下限への下落を想定
ユーロ/米ドルは、1.12~1.15ドル台を中心とした横ばいが継続しており、TLTROが導入されると、レンジ下限付近まで下落するのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
今は、消去法的に米ドルが買われる動きはあるものの、米国には債務上限問題やロシアゲート疑惑、メキシコの壁を巡る非常事態宣言もあります。
【参考記事】
●消去法的なドル高!? ドル/円の上値を抑える材料は? 景気後退入りでユーロに売り圧力?(2月12日、バカラ村)
●トランプ大統領が非常事態宣言を出すかも!? 110円台まで上昇したドル/円だが、今後は?(2月5日、バカラ村)
非常事態宣言を無効とする決議案も出ていますが、トランプ大統領には拒否権があり、まだ、この問題も続きます。
そのため、米ドル買いも続かないと思いますので、ユーロ/米ドルが1.12ドル台前半を下抜けるには、まだ力不足ではないかと考えています。
短期的には、ユーロ/米ドルは売り方向で考えていますが、まだ、レンジから抜けるのは、難しいのではないかと考えています。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)