■ECBのハト派スタンスはサプライズだったのか?
ドルインデックスは昨日(3月7日)、大幅に続伸した。執筆中の現時点では昨年(2018年)高値をブレイクする寸前まで迫っており、高値更新は当然視される。
(出所:Bloomberg)
というのは、米ドルの対極として位置づけられるユーロが、昨日(3月7日)、一気に昨年(2018年)安値を下回り、ユーロ安・米ドル高の余地が一段と大幅に拡大しており、米ドル全体の強気変動がこれから強まっていくのも、当然の成り行きと思われるからだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
ユーロの大幅下落は、昨日(3月7日)のECB(欧州中央銀行)理事会がきっかけであったが、ECBのハト派スタンスが、多くの市場関係者にとってサプライズと受け止められたようだ。
しかし、筆者からみれば、このようにサプライズとなること自体が意外である。換言すれば、ユーロの続落は、市場の内部構造に沿った値動きで、本来サプライズではなかったはずである。
米ドル高を支える内部構造については、2月15日(金)や2月22日(金)の本コラムで説明していた。
【参考記事】
●米ドル高は新たなステージに入りそうだが、ドルインデックスの強気で米ドル/円頭打ち!?(2019年2月15日、陳満咲杜)
●米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?(2019年2月22日、陳満咲杜)
繰り返し指摘してきたように、ドルインデックスの昨年(2018年)高値更新は、もはや時間の問題なので、米利上げ見通しはどうであれ、米ドル高の構造が維持される限り、米ドル高トレンドは続くはずである。
昨日(3月7日)のユーロの大幅下落は、スピードはともかく、方向性としては完全に市場の内部構造に沿った値動きなので、サプライズというより、むしろ当然の成り行きで、出遅れた値動きと思えたほどである。
なにしろ、米ドル全面高のトレンド自体、2月中旬~同月末までスピード調整を経ており、ユーロ/米ドルも2月において変動幅が限定的だったので、下落自体が「煮詰まった」あとの出来事であり、米ドル高派にとっては「やっと来た」感じが強い。
■トランプ大統領の米ドル高牽制が効かなかったところにヒント
一方、米ドル高の展開が紆余曲折であったものの、米ドル高トレンドの維持について疑いの余地はあまりなかった。テクニカル的な要素以外に、最近の出来事がファンダメンタルズ上の検証材料になったところも大きかった。
2月22日(金)の本コラムにて指摘した「米経済指標が悪くても米ドルが売られなかった」こと以外に、先週末(3月2日)のトランプ米大統領の幾度目かとなる米ドル高牽制が、まったくその威力を発揮できなかったことは、重要なヒントであった。
【参考記事】
●米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?(2019年2月22日、陳満咲杜)
●米ドル/円は強い! 調整しても大崩れ回避!?ECB理事会でTLTROの導入はあるのか?(2019年3月5日、バカラ村)
言い換えれば、「トランプ砲」の空回りで、米ドル高の構造が再確認されたというほかあるまい。
あえてロジックをもって解釈するなら、「トランプ砲」の失効は、
1.消去法による米ドル選好
2.米中協議成立間近の思惑
3.米利上げ余地、なおあり
という3つの視点をもって説明できるだろう。
そのうち、最も重要なのは消去法による米ドル選びではないと思うが、基本的にはそれ自体が後解釈であることを強調しておきたい。
後解釈とはいえ、ロジック自体は適切で正しい…
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