■ボラティリティ急騰!トルコリラは乱高下
先週(3月18日~)、22日(金)から、トルコリラはボラティリティが非常に大きくなっています。
(出所:Bloomberg)
3月22日(金)にトルコリラは急落し、対円で19円を割る場面もありました。
【参考記事】
●ドイツ発の世界景気減速懸念から株価急落! 米国債は「逆イールド」で景気後退の前兆か(3月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
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急落した表向きの理由は、トランプ大統領のゴラン高原に対する発言にエルドアン大統領が激怒したことですが、本当の理由はトルコ経済の悪化を受け、一部ヘッジファンドがトルコリラに対してショートのポジションを取ったことです。
【参考記事】
●トルコの経済指標悪化が加速している! 失業率はリーマンショック以来の水準に(3月20日、エミン・ユルマズ)
ロンドンを中心に動いているこれらのファンドは、日本の投資家のトルコリラのロングポジションが積み上がっているのもいい機会だと思い、売りを仕掛けました。
■トルコ中銀の対応で、ショートポジションの巻き戻しが進んだ
これを受け、トルコ中銀は週明け(3月25日)からトルコリラの供給を極端に減らして、スワップ金利を上昇させました。
つまり、トルコリラの空売りコストを非常に高くしたわけです。ロンドン市場でトルコリラの調達が困難になり、空売りファンドはポジションを解消できなかったため、損失を避けるために、今度はトルコの株と債券を売り始めました。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
3月25日(月)のロンドン市場では、トルコリラのオーバーナイトスワップ金利が200%を超えたためトルコリラは大きく反発し、米ドル/トルコリラは、5.5リラ台まで下がりました。
(出所:Bloomberg)
対円でも再び20円を超えてきています。さすがに、ここまでの金利が付いていれば、トルコリラを空売りしたい人も少なくなりますし、ショートポジションの巻き戻しも一気に起きました。
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■通貨防衛に成功! 地方選挙前のトルコリラ暴落を防いだ
トルコ中銀は同じような手法を、2001年の通貨暴落時も使いましたが、効果はありませんでした。
今回は、タイムリーな判断で投機的な売りを止め、通貨(トルコリラ)防衛に成功しました。この措置は、ずっと持続できるようなものではありませんが、ひとまず選挙前の通貨(トルコリラ)暴落は防げました。
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また、今回、トルコ中銀は直接、米ドル売りも行っています。その金額ははっきりわかりませんが、現地メディアによると、トルコの外貨準備高の減りから見て、約20億ドル分の米ドル売りがあったのではないかとのことです。
今回の動きを受け、4月の政策会合での利下げの可能性はほぼなくなったと考えています。3月22日(金)のトルコリラ急落は、トルコ中銀に通貨安定のために、引き締め姿勢を続けなければならないことを再びリマインドしました。
■三大都市の選挙結果で、トルコリラは大きく動く展開も
今週(3月25日~)末は、いよいよトルコ地方選挙です。注目度が高いのはトルコ三大都市であるイスタンブール、アンカラとイズミルの市長選挙ですが、イズミルは最大野党のCHP(共和人民党)が非常に強く、選挙で負ける可能性は極めて低いです。
接戦が繰り広げられるのは、イスタンブールとアンカラだと考えます。特にイスタンブールはエルドアン大統領の地元であり、エルドアン大統領はイスタンブール市長に当選した1994年からイスタンブールで負けたことがありません。
エルドアン大統領は自身がイスタンブール市長に当選した1994年から負けたことがないという。今回の選挙ではどうなるのか? (C)Anadolu Agency/Getty Images
与党連合がイスタンブールで負けることになれば、選挙後のトルコリラも大きく上下する可能性があるので要注意です。
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また、首都であるアンカラも、前回の選挙でわずか3万票の差で負けた野党の候補者が再チャレンジしているので、野党が勝利する可能性が高くなっています。
個人的には、イズミルとアンカラでは野党、イスタンブールでは与党が勝利するのではないかと予想していますが、トルコの選挙は投票率が高く最後の最後までわかりません。
選挙結果がわかるのは、日本時間の4月1日(月)の未明になりますので、週明けのトルコリラの動きに注意すべきだと考えます。
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