■1日で2416円!? トルコリラスワップに異常事態
新元号発表と新年度入りを約1週間後に控えた3月26日(火)。トルコリラ/円の買いポジションを翌営業日へ持ち越すと、1万通貨あたり2416円ものスワップポイント(スワップ金利)を受け取れるFX会社が出現するという、異常事態が発生しました。
その異常事態が起こっていたのは、サクソバンク証券。以下は、サクソバンク証券が公表しているトルコリラ/円のスワップカレンダーをキャプチャして、見やすくなるように少し編集したものですが、確かにトルコリラ/円の買いポジションを3月26日(火)から翌27日(水)へ持ち越す(ロールオーバー)と、たった1日で2416円のスワップポイントを受け取れていたことが示されています(※)。
(※サクソバンク証券が公開しているスワップカレンダーの「3月27日(水)」に記載されている金額は、ポジションを26日(火)から27日(水)へ持ち越した場合に付与される金額となります)
※単位:円
※1万通貨の買いポジションで受け取れる金額を掲載
※サクソバンク証券のスワップカレンダーをもとにザイFX!が編集
サクソバンク証券におけるトルコリラ/円のスワップポイントは、ここ最近は1万通貨の買いでおおむね120円~130円あたりというのが平均でした。それが、231円→794円→2416円と、22日(金)付与分から「ホップ・ステップ・ジャンプ」の三段跳びのような格好で、急増していたことがわかります。
また、サクソバンク証券には及ばないものの、同じ外資系FX会社のIG証券でも、1万通貨の買いポジションに対して26日(火)に1164円、翌27日(水)には3日分としてではありますが2770円(1日平均約923円)という、目を疑うような高いスワップポイントが付与されていたのです。
(※IG証券が公開しているスワップカレンダーの「3月27日(水)」の欄に記載されている金額は、ポジションを26日(火)から27日(水)へ持ち越した場合に付与される金額となります)

※単位:円
※1万通貨の買いポジションで受け取れる金額を掲載
※IG証券のスワップカレンダーをもとにザイFX!が編集
ただ、さらにその後を追うと、翌日28日(木)から29日(金)へポジションを持ち越した際に付与された金額は、サクソバンク証券が65円、IG証券が43円と、どちらも一気に減額されて、まるでジェットスターのように目まぐるしく変化しています。
■主要FX会社のスワップ履歴をチェックすると…
ザイFX!では先日、主要FX会社のトルコリラ/円のスワップ履歴を調査して、総合的に高いスワップ金利を受け取れていたFX会社がどこだったのかをご紹介する記事を公開しました。そのとき掲載した主要FX会社を含めて、改めて各社の直近のスワップ履歴を調べてみました。
【参考記事】
●主要FX会社のスワップ履歴を毎日調査! トルコリラ、真の高スワップ口座はコレだ!
3/21 (木) |
3/22 (金) |
3/25 (月) |
3/26 (火) |
3/27 (水) |
3/28 (木) |
|
サクソバンク証券 [スタンダードコース] |
130 | 231 | 794 | 2416 | 583 (194) |
65 |
IG証券 [標準] |
127 | 150 | 595 | 1164 | 2770 (923) |
43 |
くりっく365 | 129 | 135 | 199 | 216 | 710 (237) |
185 |
トレイダーズ証券 | 120 | 120 | 120 | 120 | 360 (120) |
120 |
楽天証券 [楽天FX] |
90 | 90 | 90 | 120 | 375 (125) |
90 |
ヒロセ通商 [LION FX] |
93 | 122 | 91 | 121 | 285 (95) |
100 |
インヴァスト証券 [トライオートFX] |
100 | 100 | 100 | 100 | 300 (100) |
100 |
SBI FXトレード | 92 | 87 | 97 | 107 | 306 (102) |
107 |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
90 | 90 | 90 | 95 | 315 (105) |
100 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX] |
90 | 88 | 90 | 100 | 300 (100) |
105 |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
86 | 86 | 89 | 94 | 297 (99) |
104 |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
85 | 90 | 90 | 95 | 300 (100) |
95 |
※単位:円
※1万通貨あたりの買いポジションで受け取れる金額
※3月27日(水)の金額は3日分。カッコ内の数字は1日あたりの平均額(小数点以下、四捨五入)
※トレイダーズ証券は[みんなのFX]と[LIGHT FX]で同額
※FX会社の公式サイトや取引ツール内のスワップカレンダーをもとにザイFX!が作成
(※上表は付与日を基準に作成。付与日が3月21日なら、3月21日に買いポジションを1万通貨保有し、NYクローズまで持ち越した場合に付与された金額を記載。各社のスワップカレンダーに記載されている日付や金額とは、必ずしも一致していない場合があります)
冒頭でお伝えしたサクソバンク証券とIG証券のほかに、取引所取引のくりっく365でも、3月25日(月)~27日(水)付与分あたりで、明らかにこれまでとは一線を画するスワップポイントが付与されていました。
それ以外の主要FX会社では、固定キャンペーンを実施しているかのように、高水準のスワップポイントを提供し続けていたトレイダーズ証券のようなところもありますが、全体的に見ると、じわっと上昇しているFX会社が多いという印象を受けます。
サクソバンク証券、IG証券、くりっく365の3社(※)は特別かもしれませんが、全体的にスワップポイントが上昇する傾向にあったことは確か。何か、大きな出来事があったと考えられますね…。
(※便宜上、取引所取引のくりっく365も1社というくくりで表現しています)
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ![トルコリラ/円スワップ金利の高い順]
●特集「くりっく365」はなんで安心なの?
■トルコリラ/円下落でスワップポイント上昇の怪
為替レートが変動すれば、基本的にスワップポイントの水準も変化します。トルコリラ/円が下落すれば、買いポジションの保有で受け取れるスワップポイントの金額は相対的に安くなり、反対にトルコリラ/円が上昇すれば、受け取れるスワップポイントの金額は相対的に高くなるのが普通です。
では、サクソバンク証券、IG証券、くりっく365を中心に、スワップポイントに変化が起きたあたりでトルコリラ/円が劇的に上昇して、それがFX会社のスワップポイントに反映されていたのかと言えば、実はまったくの逆。特に変動の大きかった3社のスワップポイントが、第1弾的な感じでジリッと上昇した3月22日(金)は、トルコリラ/円が急落しているのです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
このことから考えると、22日(金)のトルコリラ/円の動きで、スワップポイントの金額が跳ね上がるのは考えづらく、むしろ、全体的にじわりと安くなっていたほうが、素直で自然な動きと言えるでしょう。
■不自然な動きの背景にあったのは…?
このスワップポイントの不自然な動きの背景にあったのが、インターバンク市場の中にあるスワップ取引市場(コール市場)で起こった、トルコリラを調達する際に適用される金利の大暴騰です。
詳しい経緯に関しては、エミン・ユルマズさんがザイFX!の連載コラム、「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」で解説してくれていますので、ぜひ、そちらをチェックしていただきたいのですが、トルコの金融市場で起きていた出来事を、エミンさんのコラム公開後のことも含めてざっくりとお伝えすると、以下のような流れになります。
【参考記事】
●トルコ地方選挙前にボラティリティが急騰! トルコリラが乱高下した本当の理由とは…!?(3月27日、エミン・ユルマズ)
★3月22日(金)
トルコの外貨準備高が大幅に減っていたことをきっかけに、海外投資家のトルコリラ売りが急増。トルコリラ/円は一時、18.70円台まで急落。
★3月25日(月)
トルコ中銀がトルコの市中銀行に対して、政策金利にあたる1週間物レポ金利(24.0%)での資金供給を停止し、翌日物金利(25.5%)で借り入れることを強制(=実質的な利上げ)。外貨積み増し措置を講じることも示唆。海外投資家がオフショアスワップ市場でリラを借り入れるときに適用される金利となる、翌日物スワップレートが急騰。トルコリラ/円は一時、19.70台まで反発。
★3月26日(火)
トルコリラの翌日物スワップレートが一段と上昇。トルコリラ/円は20円台を回復して、20円台後半まで続伸。
★3月27日(水)
トルコリラの翌日物スワップレートが一時、1300%まで暴騰。海外投資家がトルコリラを空売りできないよう、トルコ政府が市中銀行に対して外貨とトルコリラのスワップ取引(交換)に応じないよう命じたとの観測記事もあり。海外投資家がトルコリラ建て資産の売却に動いたことで、トルコの株価指数が暴落し、トルコ国債の利回りが急騰(債券価格は下落)。これを受けて、トルコリラ/円は一時、20円割れまで反落。
★3月28日(木)
トルコリラの翌日物スワップレートが急低下。市場の流動性が改善したことで、これまでトルコリラを売却できなかった海外投資家からの売りが膨らみ、トルコリラ/円は一時、18円台半ばまで大幅続落。エルドアン・トルコ大統領による、中銀への利下げ要求発言もトルコリラ売りの材料に。
★3月29日(金)
トルコ統一地方選挙を週末に控えるなかで、全体的に落ち着いた値動きへ。トルコリラ/円は19円台で上下する展開。
以上が、トルコの金融市場で起こっていた出来事のざっとした流れになるのですが、こうした中で、トルコリラの翌日物スワップレートが暴騰した3月25日(月)~27日(水)にかけて、サクソバンク証券、IG証券、くりっく365を中心に、FX会社のトルコリラ/円のスワップポイントが非常に大きく変動したと考えられます。
そして、トルコリラの翌日物スワップレートが一気に低下した3月28日(木)には、サクソバンク証券、IG証券のスワップポイントが大幅に低下。それまでの平均的な水準を下回る金額が付与されたという流れになっているのです。
トルコリラ/円のスワップポイントに影響を与えたと考えられる…
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