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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

令和とともに、円高から円安にシフトか?
平成の終焉間近。米ドル/円相場を振り返る

2019年04月25日(木)17:45公開 (2019年04月25日(木)17:45更新)
西原宏一

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■オセアニア通貨は続落! NZドルに続いて豪ドルも

 みなさん、こんにちは。

 今週(4月22日~)の為替市場で動意を見せているのがオセアニア通貨です。

 まず、このコラムで何度かピックアップしているNZドルは、今週(4月22日~)も続落。

【参考記事】
NZ中銀のハト派への転換は何を意味する? 混迷するブレグジットの行方が今後の鍵に(3月28日、西原宏一)
GW相場が米ドル/円を買う好機になるか!? 利下げ予想のあるNZドルは売り継続で!(4月18日、西原宏一)

 NZドル/米ドルは、0.6582ドルまで、NZドル/円は73.66円まで続落。

NZドル/米ドル 4時間足
NZドル/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 4時間足

NZドル/円 4時間足
NZドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 4時間足

 そして、今週(4月22日~)、下落が鮮明となったのが豪ドルです。

 4月24日(水)に発表された豪州の第1四半期・CPIが予想以上に鈍化したことで、豪州の国債利回りは急低下。

豪長期金利(10年物国債利回り) 日足
豪長期金利(10年物国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

 RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の利下げ観測も急速に強まり、5月7日(火)に予定されている、RBA理事会の利下げ確率は56.1%まで上昇

 連れて、続伸していた豪ドル/NZドルも反落。

豪ドル/NZドル 日足
豪ドル/NZドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/NZドル 日足

 豪ドル/米ドルは0.7004ドルまで、豪ドル/円は78.39円まで反落しました。

豪ドル/米ドル 4時間足
豪ドル/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 4時間足

豪ドル/円 4時間足
豪ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足

 結果、本邦のゴールデンウィーク明けに向けて、オセアニア通貨は要注意。

前回のコラムの確認になりますが、5月8日(水)にRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が利下げする公算は高いまま。

【参考記事】
GW相場が米ドル/円を買う好機になるか!? 利下げ予想のあるNZドルは売り継続で!(4月18日、西原宏一)

 その前日(5月7日)に、RBAが利下げに踏み切る思惑も高まったことから、5月初旬に向け、NZドルのみならず、豪ドルの下値余地が拡大していることに注目です。

■平成時代がまもなく終焉…米ドル/円相場を振り返る

 さて、今回のコラムでは、元号が「令和」に変わることをきっかけに、長期に渡っての米ドル/円の動きを検証してみたいと思います。

 今月(4月)で終わろうとしている、30年にも渡る平成の時代は、1989年から2019年。

 以下の米ドル/円の月足チャートを見るとわかるように、1990年に160円台だったものが、79.75円(1995年4月安値)や、75.35円(2011年10月安値)を経て、現在も112円付近にあるということは、平成は円高の歴史だったとも言えます。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(出所:Bloomberg)

 平成が始まった1989年の日本は、バブル経済のピークであり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持ち上げられていました。

 日経平均は4万円に手が届きそうになり(最高値は1989年12月29日につけた3万8915円)、5万円以上を予想するエコノミストも多くいました。

日経平均 月足
日経平均 月足

(出所:Bloomberg)

■平成は「米ドル安・円高」の時代だった

 ただ、そうした好景気は平成のスタートとともに早晩に終焉。日本経済は一転して、バブル崩壊の処理と低成長時代に突入します。

 失われた10年、失われた20年……と言われる縮小の時代に突入し、同時に経済が停滞しているにもかかわらず、為替市場では「円高」が進行しました

 通常、経済が弱体化すれば、その国の通貨は価値を下げるものですが、日本のみならず、グローバルに株価が下落する局面、つまり金融市場がリスクオフに突入すると、避難通貨として円とスイスフランが選好される傾向にあります

 このため、日本は経済が縮小しながら、通貨(円)は強くなるという、二重に苦しい状況となりました。

 1990年代に入ると、米ドルが弱くなり、1994年6月に1ドル=100円という大台を割りこむと円高が加速。1995年4月には79.75円まで円高が進行しました。

【参考記事】
モーサテ御意見番・中島厚志氏に聞く(1)驚きの「1ドル=82円」予想の真相とは?

1990年代に入ると米ドル安が進み、1994年6月に1ドル=100円を割り込むと、1995年4月には79.75円まで円高が進行した

1990年代に入ると米ドル安が進み、1994年6月に1ドル=100円を割り込むと、1995年4月には79.75円まで円高が進行した

 その後の米ドル円は、各国の協調介入などもあって下げ止まり、米国の米ドル高容認もあって1998年には147.66円まで上昇します。

1994年~1999年の米ドル/円 週足
1994年~1999年の米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

 21世紀に入ると、サブプライム問題から、2008年3月に米ドル円は再び100円の大台を割れます

 リーマンショックもあり、世界金融が危機的な状況から脱していない状況下で、2011年には東日本大震災という不幸が襲いました。

 これで米ドル/円は、一時75.35円という超円高レベルに達しました。

2007年~2011年の米ドル/円 週足
2007年~2011年の米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

■安倍政権誕生で超円高トレンドは反転したが…

 こうした経済状況に対して、動いたのが安倍政権。

 それまでの民主党政権から、アベノミクスを掲げた自民党・安倍総裁が2012年の総選挙に勝利して政権交代。

 アベノミクス実現に向けて、日銀総裁も現在の黒田東彦総裁を任命して経済の立て直しに向かいます。

 また、世界最大のファンドともいわれる日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がポートフォリオを見直したのも、為替マーケットには大きく影響しています。

 その日銀の黒田総裁は「量的・質的金融緩和」を仕掛け、2008年以降、ほぼ2桁で推移していた超円高トレンドが反転していきます。

日銀の黒田総裁は就任後「質的量的金融緩和」を仕掛けた。その後、2008年以降の超円高トレンドは反転することに (C)Bloomberg/Getty Images

日銀の黒田総裁は就任後「質的量的金融緩和」を仕掛けた。その後、2008年以降の超円高トレンドは反転することに (C)Bloomberg/Getty Images

 アベノミクスの流れの中、100円の大台も軽々と突破し、2015年には125.86円台まで急回復しました。

2011年~2015年の米ドル/円 週足
2011年~2015年の米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

 このように、平成時代は長く円高が続く状況でしたが、アベノミクス以降、状況は変わってきました。

 しかし、アベノミクスの本丸は民間活力による成長戦略でした。

 政府が実施する機動的財政や、日銀による金融政策はあくまで補助。このため、ここ数年は日銀の「量的・質的金融緩和」も徐々に陰りが見え、米ドル/円は反落。

 日銀のデフレ脱却政策も効果が薄れ、再び円高トレンドに回帰することが懸念されています

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

 しかし、米ドル/円相場は過去数年、何度となく100~105円のレンジを試すも、それ以上は円高が進まない状況が継続。

 この円高圧力を止めているのが、本邦機関投資家の円売り需要です。

■元号が「令和」に変わるとともに、為替は円安にシフトか

 人口減少が鮮明となってきた日本では、日本企業による海外M&Aも引き続き活発です。

 このため、元号が「令和」に変わるとともに、米ドル/円相場のトレンドは円安にシフトするものと考えられます

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 今年(2019年)を振り返ると、1月3日(木)に、米ドル/円相場は突然104円台まで急落するという、急激な「円高相場」に直面し、再び、100円割れが懸念されました。

【参考記事】
フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)

 しかし、その円高を止めたのが本邦機関投資家の円売り需要。

 現在の本邦機関投資家は国内での優良な投資先がなく、運用難に陥っている状態であるため、彼らが預かっている資金は海外の運用会社に任される傾向があります。

 そして、彼らの資金を預かる海外の運用会社はフィンテック系、特に米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)への投資を進める傾向があり、おのずと資金は円から米ドルへ

写真はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO。本邦機関投資家の資金を預かる海外の運用会社は、米国のGAFAへの投資を進める傾向にあるという (C)Bloomberg/Getty Images

写真はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO。本邦機関投資家の資金を預かる海外の運用会社は、米国のGAFAへの投資を進める傾向にあるという (C)Bloomberg/Getty Images

 国内に投資先がない本邦機関投資家の資金、そして、国内市場縮小に伴う本邦企業の海外M&Aという実需資金の流れは、現在の日本を象徴する構造的問題による資金の流れであり、これらの資金は円安を誘引する強烈な材料となります。

■ゴールデンウィーク明けの米ドル買いの動きに注意

 こうした本邦機関投資家の動きだけでなく、本邦企業の実需、つまり海外M&Aも活発化しています。

 本稿執筆時点での米ドル/円は112.00円レベルで上値を止められていますが、なかなか反落もしない展開。

 平成から令和へと時代が変わる10連休となるゴールデンウィークが終わると、過去数カ月、押し目を待っていた本邦機関投資家も時間切れで、彼らの多くのは、マーケットに米ドル買いを持ち込むのではないか?と想定しています。

【参考記事】
GW相場が米ドル/円を買う好機になるか!? 利下げ予想のあるNZドルは売り継続で!(4月18日、西原宏一)
10連休中は月曜早朝に要注意! フラッシュクラッシュが起きれば米ドル/円の買い場に!?(4月22日、西原宏一&大橋ひろこ)

 5月初旬に、それぞれの中央銀行の利下げが予測され、下値余地が拡大しているNZドル、そして豪ドルの動向。

 さらには、元号が変わるとともに、円高から円安にトレンドが変わりつつある、米ドル/円相場に注目です。


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