■FOMC前、トランプツイートに脅かされた!
さて、米ドル/円の売り買い両建てで行った「平成→令和の元号跨ぎトレード」に話を戻そう。
4月29日(月)、筆者と同じようなトレードをしていて、「これぞ聖杯なり!!!」と叫んでいたトレーダーさんのツイートに対して、ザイFX!でもおなじみの羊飼いさんが以下のようにツイートしていた。
両建てで10日間、FOMCも米雇用統計も耐える訳ですねᕕ( ᐛ )ᕗ証拠金の余裕がたっぷり必要だー https://t.co/gGFnS2wczG
— 羊飼いFX★ (@hitsuzikai) 2019年4月29日
羊飼いさんは10日間も両建てのポジションをキープして、少しの利益を狙うぐらいなら、普通にトレードした方がいいと考えたのかもしれない。トレードがうまい人なら、その方がいいのだろう。
また、羊飼いさんが指摘するとおり、この10連休中、大きなイベントとしては5月1日(水)(日本時間だと5月2日(木)未明)にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表があり、5月3日(金)に米雇用統計の発表があることになっていた。
今回のFOMCで特に政策変更は予想されておらず、まずは無風通過と思われたのだが、5月1日(水)になって、いつもお騒がせのトランプ米大統領が「1%金利を下げて、さらに量的緩和もちょいとやれば、米経済はロケットみたいに上昇するで~」みたいなことをツイートしたのだ。
....up like a rocket if we did some lowering of rates, like one point, and some quantitative easing. Yes, we are doing very well at 3.2% GDP, but with our wonderfully low inflation, we could be setting major records &, at the same time, make our National Debt start to look small!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年4月30日
トランプ米大統領がツイートしたからといって、FRB(米連邦準備制度理事会)が真っ正直にそのとおりの政策を打ち出すとは思えないが、米国株が最高値圏にあるような状況で、万が一、1%もの大幅な利下げが即座に行われたら、それこそ超絶サプライズである。それで相場がどちらの方向に動き出すかはわからないが、もしもそうなったら相場が大きく動くことは間違いないだろう。
相場急変により、片方のポジションだけが強制ロスカットされる事態だけが怖い筆者にとっては、まったくはた迷惑なトランプツイートだった。
日本時間で平日の午前3時とか4時に発表があるFOMCの結果を普段、筆者はリアルタイムで見ることはない。けれど、トランプツイートがあったために気持ち悪くなった筆者は連休中でもあり、翌日出勤するわけでもないため、FOMCの結果発表を見守ることにした。
FOMCでは大きな政策変更は発表されなかったが、その後、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が会見を始めると、結構な勢いで米ドル/円は上昇し始めたため、筆者は両建てトレードをやっているのとは別口座でちょっとポジションを取ってみたりした。ただ、これはいつもどおりの1000通貨でやってみただけだった。
そして、結構な勢いで動いたといっても、このときの値幅は60銭程度のものだった。

(出所:Bloomberg)
■相場急変に備えて、アラートを設定
こうして無難にFOMCも通過したのだが、この10連中に両建てポジションを持ち続けた筆者は、相場急変だけが怖いため、一応、その対策も打っていた。
本記事シリーズの原稿を書いていたりして、パソコンに向かっているときはSBI FXトレードの「カベプラ」というアプリを起動させたりしていた。これはパソコンのデスクトップの片隅に付箋を貼り付けるような感じで表示し、為替レートをチェックできるアプリだ。
下図は、パソコンのデスクトップにカベプラを表示してみたもの。図の左上に「USD/JPY 110.44」といった形で米ドル/円レートが表示されているが、これがカベプラだ。
【参考記事】
●ユーロ/ドルを0.48pips原則固定へ縮小して業界トップへ! 新アプリ「カベプラ」登場!

また、ヒロセ通商[LION FX]やJFX[MATRIX TRADER]のパソコン版取引ツールには、指定したレートに到達するとアラートが鳴ってくれる機能がついているため、これも利用した。米ドル/円の現在値から2円上または2円下に到達したらアラートが鳴るように設定し、そこからは1円間隔でアラートが鳴るようにしておき、計10本のアラートを仕込んでおいたりした。
![ヒロセ通商[LION FX]のチャート画面](https://zaifx.ismcdn.jp/mwimgs/c/c/-/img_cc080ba33ceec0aa360cd67a34ad0383110612.jpg)
寝ている間もパソコンはつけっぱなしとし、アラートを設定したヒロセ通商[LION FX]やJFX[MATRIX TRADER]のパソコン版取引ツールを立ち上げたままにしておいたのである。ただ、日本時間早朝にあるメンテナンス時にこれらのパソコン版取引ツールは自動的に落ちてしまうようで、完全な警戒態勢とはならなかったのだが…。
■米雇用統計でも相場はそれほど動かなかった
5月3日(金)の夜には米雇用統計の発表もあった。
米雇用統計といえば、外国為替市場にとっては、さまざまな経済指標の中でも最大級のもの。月に一度の為替のお祭りみたいな場だったが、最近はそうでもなくなっていた。米雇用統計では為替相場はあまり大きく動かなくなっているのだ。
そして、今回もそのとおりとなった。
非農業部門雇用者数は前月比+26.3万人と予想よりだいぶ多く、失業率は3.6%で49年超ぶりの低水準になったというのに、直後の為替相場の反応は極めて限定的だった。
このとき、著名トレーダーのみなさんもこんなふうにツイートしていた。
月を重ねるごとに雇用統計の値幅が縮まってる感。
— 余弦@cosP (@ygnfx) 2019年5月3日
かつての月1回のお祭りイベントが22pipsの値幅か pic.twitter.com/luIsnkyjjX
— 黒猫アイランド (@kuroneko_island) 2019年5月3日
米雇用統計発表時には瞬間的に111.50円近辺から111.70円近辺まで上昇した米ドル/円だったが、その後は徐々に下落。結局、111.00円台まで下落してこの週の取引を終えた。米雇用統計のときは大して動かなかったのだが、その後、結構下がったのだった。

その結果、この週の取引終了段階で、筆者の米ドル/円買いポジションの含み損は84万8000円まで拡大していた。
![筆者の外為オンライン[外為オンラインFX]の口座状況(5月3日(金)までの週の取引終了後)](https://zaifx.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/-/img_8e55f6d1783c97a9268c5778e4d50e8947679.jpg)
※外為オンライン[外為オンラインFX]のポジション状況は横幅が長く、そのまま掲載すると数字が小さくて見づらくなってしまう。そのため、取引証拠金など一部の項目をカットして画像をつなげ、横幅を短くして見やすくした
ただ、この日、米国株は結構上がっており、リスクオフ相場到来というムードでもなかった。

翌営業日の5月6日(月)は日本が祝日の週明け月曜日ということになり、西原宏一さんも10連休の中で相場急変に注意した方がいいと指摘していた日の1つだったが、リスクオフムードではないと思われたため、筆者はそれほど心配していなかった。
【参考記事】
●10連休中は月曜早朝に要注意! フラッシュクラッシュが起きれば米ドル/円の買い場に!?
■受け取りスワップは12万円、支払いスワップはゼロ
このときまでに外為オンライン[外為オンラインFX]で建てた米ドル/円160万通貨の買いポジションに対して、スワップポイントはちょうど12万円貯まっていた。
下図右端のスワップという項目に「30,000」という数字が4つ並んでいるのが見える。これは、このときまでに貯まった40万通貨に対するスワップポイントが3万円ということを示すものであり、計160万通貨に対するスワップポイントはその4倍の12万円ついているということだ。
![筆者の外為オンライン[外為オンラインFX]の口座状況(5月3日(金)までの週の取引終了後)](https://zaifx.ismcdn.jp/mwimgs/0/f/-/img_0fffd2503a5d1a5ea6009068b9dbae8d43860.jpg)
※外為オンライン[外為オンラインFX]のポジション状況は横幅が長く、そのまま掲載すると数字が小さくて見づらくなってしまう。そのため、取引証拠金など一部の項目をカットして画像をつなげ、横幅を短くして見やすくした
一方、SBI FXトレードで建てた米ドル/円160万通貨の売りポジションに対してかかっているスワップポイントは当然、ゼロのままだ。

あとは、5月6日(月)の為替相場が始まってからしばらく経って、早朝のスプレッド拡大などが収まったタイミングで売りと買いのポジションを解消すればいいだけだ。
…と思っていたのだが、最後にもう一波乱やってきたのだった。
波乱の主はまたまたトランプ米大統領。
■最後にトランプ砲が出て、含み損が140万円以上に拡大!
このところ、米中通商協議は順調に進展しているかのようなムードになっていたのだが、5月6日(月)午前1時台になって、トランプ米大統領は「中国が言うことをきかない。中国向け関税を10%から25%に上げるぞ、こら~!」みたいなことをツイッターで叫んだのだった。
For 10 months, China has been paying Tariffs to the USA of 25% on 50 Billion Dollars of High Tech, and 10% on 200 Billion Dollars of other goods. These payments are partially responsible for our great economic results. The 10% will go up to 25% on Friday. 325 Billions Dollars....
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年5月5日
これを受けて、5月6日(月)の米ドル/円相場は大きな下窓を開けてスタート。

そのため、筆者の米ドル/円買いポジションは含み損が140万円以上に拡大した。以下のようにそれをツイートしたところ…
私の米ドル/円買いポジションの含み損が140万円突破!(>_<)
— 井口稔@ザイFX!編集部 (@Neko_Iguchi) 2019年5月5日
ありがとうございます。トランプ大統領様のおかげです。 pic.twitter.com/KAgTC7BuZ0
トレーダーの余弦さんは「編集長がFX芸人にクラスチェンジしとるwww」と反応。羊飼いさんも「それ思ったw」と返しており、「含み損140万円突破ツイート」はおおむね好評(!?)だったようだ。
それ思ったw
— 羊飼いFX★ (@hitsuzikai) 2019年5月5日
■3回の売り買い両建てトレードでトータル17万167円の利益
下窓を開けてスタートしたあとの米ドル/円は結構いい感じで動いているように思え、また、この日のSBI FXトレードのスプレッドは早朝でもそれほど拡大してはいないようだったので、それ以上、待たず、筆者は売り買い両建てのポジションを早朝から解消していこうとしていった。
売りと買いのポジション解消をほとんど同時にやるのではなく、少しズラして、ちょっとしたスキャルピングを交えながら、ポジション解消を行おうという下心があってのことだった。
このころ、余弦さんはこんなふうにツイートしていた。ずいぶんと儲かっているようだ。
持ち越し分も起きてからスキャった分も爆益。クッソお金増えた
— 余弦@cosP (@ygnfx) 2019年5月5日
しかし、弱小トレーダーが簡単に勝てるほど、相場の世界は甘くはない。
筆者が下心をもって行ったちょっとしたスキャルピングはあまりうまくいかなかった。全部のポジションを解消したあと、第3弾の米ドル/円売り買い両建てトレードの損益をあわてて計算してみた。ヘタなスキャルピングで10日間に渡って持ち越して貯め込んだスワップポイントの利益がなくなってしまったかも!?と一瞬思ったからだった。
第1弾、第2弾のトレードと同様に、第3弾の米ドル/円トレードでも、まず筆者の約定取引明細を紹介しよう。以下は外為オンライン[外為オンラインFX]での約定取引明細(本物)だ。
※外為オンライン[外為オンラインFX]の約定取引明細は横幅が長く、そのまま掲載すると数字が小さくて見づらくなってしまう。そのため、取引証拠金など一部の項目をカットして画像をつなげ、横幅を短くして見やすくしている
そして、以下がSBI FXトレードでの約定取引明細(本物)。

※SBI FXトレードのスマホアプリの約定取引明細は表示件数に限りがあるため、画像をつなげて一覧にしている
ここから、第3弾の米ドル/円トレードの合計損益を計算してみると、下表のようになった。
第3弾トレードの合計損益
FX会社 [口座名] |
スワップポイント 損益 |
為替差損益 |
SBI FXトレード | 0円 | +138万9880円 |
外為オンライン [外為オンラインFX] |
+12万円 | -142万4000円 |
合計 | +8万5880円 |
平成→令和の元号を跨ぎ、10日間をかけて行った、為替変動と関係なく10日分のスワップポイントをタダ取りしようという筆者のトレードは8万5880円の利益を上げたのだった。
ここで本記事シリーズでレポートしてきた第1弾、第2弾、第3弾のトレードをトータルして損益を整理してみよう。表にまとめると以下のようになった。
第1弾、第2弾、第3弾トレードの合計損益
スワップポイント 損益 |
為替差損益 | |
第1弾スワップ11倍デートレード 対象:米ドル/円 |
+18万3800円 | -3万4050円 |
第2弾スワップ9倍デートレード 対象:ユーロ/米ドル |
+12万2240円 | -18万7703円 |
第3弾スワップ10日分トレード 対象:米ドル/円 |
+12万円 | -3万4120円 |
合計 | +17万167円 |
トータル12日間、売り買い両建てのトレードを3回行って、基本的には相場変動リスクを取らずに筆者は17万167円の利益を何とか上げたのだった。
■「踊ってみた」ならぬ「トレードしてみる」ことが大事
ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトには、自分で踊った模様を撮影して投稿する「踊ってみた」というジャンルがある。
普段、1000通貨単位のトレードを基本にしている筆者なので、大きなことは言えないが、「踊ってみた」ならぬ「トレードしてみる」ということは大事なことではないだろうか。
基本的には相場変動リスクのない売り買い両建てトレードといっても、今回、緊張感を持って、実際にそれなりのリアルマネーを投入して取り組んでみたことで、筆者には初めて見えてきたことがいろいろとあった。これは本記事シリーズでこれまで書いてきたとおりだ。
■次は普通の異業者両建てをやって儲けることを検討中
筆者は職業柄、「リスクが少なく、うまく儲けられる話はないか」といったことをときどき人から聞かれることがある。今回の異業者売り買い両建てトレードは2勝1敗となったものの、それに該当するやり方だったと思う。
ただ、今回の異業者売り買い両建てトレードは、歴史的な10連休があったからこそ実現した珍しいトレードであり、普段からできるわけではない。
なので、そんなふうに聞かれたとき、筆者はFX会社に口座開設して、新規口座開設キャンペーンのキャッシュバックを狙いながら、FX口座の使い勝手を試してみてはどうかと答えたりする。以前ほどの派手ではないが、今も3000円~5000円相当の現金などがもらえるキャンペーンをさまざまなFX会社が実施している。
そして、ザイFX!ではそれらのキャンペーンを以下のコンテンツなどで紹介している。その中にはザイFX!限定のタイアップキャンペーンもあったりする。
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:キャンペーンで比べる
今回、筆者が使用したSBI FXトレード、外為オンライン[外為オンラインFX]でもザイFX!限定で前者では3000円、後者では3000円+FX本がもらえる。
しかし、自分から「リスクが少なく、うまく儲けられる話はないか」と聞いておいて、その答えを得たというのに、意外なぐらい「やってみない」人が多いというのが筆者がこれまで経験してきたことなのだ。なぜ、なのだろう?
本記事シリーズで扱った異業者両建ては特殊なものだったが、以下の記事の最後の方で紹介している異業者両建ては歴史的な10連休がなくても普段から可能なやり方だ。
【参考記事】
●主要FX会社のスワップ履歴を毎日調査!トルコリラ、真の高スワップ口座はコレだ!
もしも、これに興味を持ったら、新規口座開設キャンペーンでキャッシュバックをもらいつつ、このような異業者両建てをやってみてはどうだろうか。といっても、リスクがないわけではないので、やってみる場合は、そのあたりのことをよく理解して、注意して、慎重に「やってみる」ことをおすすめしたい。
実は筆者自身も次はそのような異業者両建てを自分でやってみることを検討中だ。
(取材・文/ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・藤本康文)
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