(「平成最後の祭り、“スワップ11倍デー”にザイFX!編集長が含み損50万円突破!?」からつづく)
ここからはいよいよ、筆者が売り買い両建てのポジションを取ったそのときの話に入っていく。
「売り買い両建てスワップタダ取りトレード」の秘訣の1つとは?
スプレッドは多くのFX会社で午前5時半ぐらいまで拡がらないが、今回は特別かもしれないとの羊飼いさんのコメント受け(前回記事参照)、筆者は少し早めに2019年4月25日(木)の午前3時半ぐらいからポジションを建てようと考えた。
【前回の記事】
●平成最後の祭り、“スワップ11倍デー”にザイFX!編集長が含み損50万円突破!?
となると、いったん仮眠してから午前3時過ぎに起きればいいだろうか?
しかし、朝に弱い筆者は起きられなかった場合が怖かった。そこで、いったん仮眠してから起きることはやめ、徹夜することにしたのである。翌日、会社に出社することはとりやめた。いつも夜、飲んでいる花粉症の薬は飲まないことにした。眠くなるからだ。
花粉症の薬は飲まない──これが「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」の秘訣の1つだ。また、同じようなトレードをやろうとする人はよく覚えておいてほしい!?
そんなふうにして、筆者は午前3時半からのトレードに備えていたのだが、ジワジワと上がり続けていた米ドル/円は午前3時15分ぐらいから結構な勢いで上がりだしてしまった。普通に買っていけば、自分のようなヘッポコトレーダーでも儲かるのでは?と思ってしまうような感じだったが、今回のトレードでは売りと買いのポジションをおおよそ同じぐらいのレートで建てるのが基本動作。勢いがあるところではエントリーしないようにした。
(出所:Bloomberg)
筆者は米ドル/円の動きがいつ静まってくれるのか、気が気ではなかったが、ようやくまあまあ相場が落ち着いてきたと思えた午前4時前後に50万通貨ずつポジションを建てていったのである。
売り買い両建てでも短期トレンドは把握しておくべき
株の世界には、今回のように売り買い両建てで利益を上げる異端の手法として、“優待タダ取り”(※)などと呼ばれるやり方がある。これは現物株の買いと信用取引の売りを組み合わせて、株価変動リスクなしに株主優待だけもらう手法だ。
(※実際にはタダで株主優待がもらえるわけではなく、取引コストはかかるし、やり方を間違えると損失を出す可能性もある)
詳しい説明は略すが、“優待タダ取り”の場合、1つの口座において売り買い同値でポジションを建てるのが基本的なやり方になる。株の場合、寄付きなど、買いと売りを同時にまったくの同値で苦もなく約定させることができる瞬間があり、“優待タダ取り”のポジションはこのときに建てるのが通常のやり方なのである。
FXの異業者両建ての場合には、そういうわけにはいかない。1つの口座だったとしても、スプレッド分はレートが開いており、レートの変動がまったくなかったとしても、売りと買いを同値では約定させられない。まして、異業者両建ての名前どおり、今回は1つの口座ではなく、2つの口座の一方で買いポジションを、もう一方で売りポジションを建てるのである。
ただ、逆に言えば、どっちみち、まったく同時に同値で約定させられないのであれば、少し時間をおいて、買いポジションは少しでも安いところで建て、売りポジションは少しでも高いところで建てるよう、がんばることも考えられる。これは売り買い両建てをやるときに、完全に同時にやるのではなく、少し時間をおいてちょっとしたスキャルピングをやり、1~2pipsでもトクしようというイメージだ。
この場合、今が短期的に上昇トレンドだとみたら、先に買いポジションを取ってあとから売りポジションを取り、今が短期的に下降トレンドだとみたら、逆に先に売りポジションを取ってあとから買いポジションを取るのがよいことになるだろう。
──というようなことは筆者も事前に考えていて、一応そのようなことも考慮しながらポジションを建てたのだが、何しろいつもはわずか1000通貨取引がメインの筆者である。50万通貨の取引はビビりながらやることになった。
仕様の違いにより、2社の為替レートの動きに違いあり
そして、SBI FXトレードと外為オンライン「外為オンラインFX」のトレードにおいては、特異なこともあった。
SBI FXトレードはスプレッドが取引量によって変化する珍しいFX会社で、米ドル/円であれば、1万通貨までなら0.27銭原則固定、1万1通貨以上100万通貨までなら0.29銭原則固定などとなっている。
ちなみに、上表はSBI FXトレードの公式サイト上のスプレッド表記だが、ここでは100万1通貨以上は変動制で300万通貨までなら0.5銭が目安のように書かれている。
けれど、筆者が今回、SBI FXトレードの取引画面で、試しに200万通貨と入力してみたところ、米ドル/円のスプレッドは0.29銭と表示されていた。もしかすると、公式に公表はされていないが、100万1通貨以上のスプレッドが実は縮小されているのかも…。これは大口トレーダーにとっては耳寄りな話かもしれない。
米ドル/円の発注画面で200万通貨と入力すると、スプレッドは0.29銭と表示される。なお、「2WAY注文」とはSBI FXトレードのいわゆる「スピード注文系発注機能」のこと
0.27銭とか0.29銭といったような米ドル/円で小数点以下2ケタ銭のスプレッドは極めて珍しく、筆者の知る限り、日本のFX会社ではSBI FXトレードしかない。そして、このため、SBI FXトレードの米ドル/円レートは「109.7238円」といったように、小数点以下4ケタ円で表示されているのだ。
SBI FXトレードの米ドル/円スプレッドは小数点以下2ケタ銭まで表示され、米ドル/円レートは小数点以下4ケタ円で表示されている
一方の外為オンライン「外為オンラインFX」は原則固定スプレッドの先駆者だが、それはかなり昔の話。外為オンライン「外為オンラインFX」は近年のスプレッド競争に参戦しなかった結果、米ドル/円スプレッドは今では珍しい1銭原則固定のままとなっている。
現在、主流なのは小数点以下1ケタ銭のスプレッド。米ドル/円スプレッドについていえば、GMOクリック証券「FXネオ」をはじめとして0.3銭原則固定というFX会社が非常に多い。SBI FXトレードのような小数点以下2ケタ銭のスプレッドは珍しいが、その一方、小数点以下がない外為オンライン「外為オンラインFX」のようなスプレッドも少数派になってきているのだ。
米ドル/円以外の通貨ペアでも外為オンライン「外為オンラインFX」のスプレッドには小数点以下に刻んだ数値が存在しない。その結果、外為オンラインの米ドル/円レートは「111.52円」のように小数点以下2ケタ円で表示されている。
外為オンライン「外為オンラインFX」の米ドル/円レートは小数点以下2ケタ円で表示されている
つまり、SBI FXトレードと外為オンライン「外為オンラインFX」は一方はかなり細かいスプレッド、一方は割と大まかなスプレッドという点で、他の主要FX会社とはちょっと違った仕様になっているということだ。
すると、どうなるか。
SBI FXトレードの米ドル/円レートは小数点以下4ケタ円だから、大して相場変動していなくても、ちょこまかちょこまか、常に動いている。一方、外為オンライン「外為オンラインFX」の米ドル/円レートは小数点以下2ケタ円までだから、ちょっとしたことでは動じることなく、静止している時間が比較的長めということになるのだ。
仮に米ドル/円レートが短期的に上昇しているとすれば、SBI FXトレードのレートがちょっとずつ上がっていく一方、外為オンライン「外為オンラインFX」のレートは動かないのだが、SBI FXトレードのレートがある程度上がってきたところで、外為オンライン「外為オンラインFX」のレートはやにわにピコっと動く。
──これが今回の「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」の折りに筆者が両口座を観察していて、改めて認識したことだ。
約4億5000万円相当のポジション、実はゼロ!?
結局、SBI FXトレードと外為オンライン「外為オンラインFX」の両口座を統合したスプレッドにはトレーダーにとって有利な瞬間と不利な瞬間があるのである。
どの程度までSBI FXトレードのレートが上がったら、外為オンライン「外為オンラインFX」のレートも上がるのか、完全な法則性まではないように筆者には思えたが、この両社の値動きをじっくり研究すれば、もしかすると、それ自体を利用して相場の方向性を嗅ぎ取り、何やら儲ける方法もあるかもしれない!?といったことまでも筆者は夢想した。
それはともかく、筆者はちょこまか動くSBI FXトレードのレートと悠然と動く外為オンライン「外為オンラインFX」のレートを見比べながら、少しでも有利ではないかと思える瞬間に、一方で買いポジションを建て、もう一方で同量の売りポジションを建てるということを行った。
50万通貨ずつの買いと売りを4セット行い、最終的にSBI FXトレードで200万通貨の買いポジション、外為オンライン「外為オンラインFX」で200万通貨の売りポジションを建てたのだ。
SBI FXトレードで建てた200万通貨の買いポジション、その平均約定レートは112.3546円。外為オンライン「外為オンラインFX」で建てた200万通貨の売りポジション、その平均約定レートは112.34円だった。その差は1.46銭だ。
米ドル/円200万通貨買いの平均約定レートは112.3546円だった
米ドル/円200万通貨売りの平均約定レートは112.34円だった。数量は「200」としか表示されておらず、少なく見えるが、これで200万通貨だ
1ドル=112.3546円なら、米ドル/円200万通貨の買いポジションは日本円で2億2471万円相当ということになる。また、1ドル=112.34円なら米ドル/円200万通貨の売りポジションは日本円で2億2468万円相当ということだ。これら2つを合計すると、4億4939万円相当、つまり、約4億5000万円相当ということになる。
本記事のタイトルにある「4億5000万円分のポジション」とはこういうことである。
しかし、200万通貨を買って、200万通貨を売っているのだから、売り買いを差し引いて、ネットのポジションを計算すれば、それは「ゼロ」ということになる。だから、このトレードでは相場変動リスクは絶無ではないが、基本的にはないはずなのだ。
平成31年の米ドル/円最高値と“スワップ11倍デー”の関係
ここで、筆者がこの売り買い両建て取引を行った前後の米ドル/円1時間足を改めて見てみよう。
4月中旬以降の米ドル/円は111.60円台~112.10円台という極めて狭いレンジの中を推移していた。そんな中、4月25日(木)午前3時15分ぐらいからの動きは結構な急上昇だったことがわかる。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は2019年3月上旬に112.10円台の高値をつけ、その後、4月中旬以降も112.00円台~112.10円台の価格帯をどうしても上抜けできない状況が続いていた。そこを上抜けたため、それまでの高値、112.10円台の少し上にあった売り方のストップロス注文を引っかけ、112.40円近辺まで急上昇したようだ。
そして、もしかしたら、“スワップ11倍デー”を意識した仕掛けが入って上昇したことがストップロス誘発のきっかけになったのかもしれない。
このときつけた高値はBloombergから取得したEBS(電子ブローキング・システム)のデータによると112.401円となっており、これが本記事公開時点(5月15日)で2019年の米ドル/円最高値となっている。
平成31年は4月30日(火)で終わってしまったので、この112.401円は平成31年の米ドル/円高値ということがすでに確定している。そして、その高値形成には“スワップ11倍デー”が一枚噛んでいるかもしれない!?ということなのだ。
平成最後の年の最高値近辺で記念に200万通貨買いました!?
そして、先に述べたとおり、筆者の米ドル/円200万通貨買いの平均約定レートは112.3546円だったから、かなりのすっ高値をつかんだことになる。平成最後の年、平成31年の最高値近辺というある意味、記念になるような約定レートだ。
ポジションを建ててから、筆者は自分のツイッターアカウントで、以下のように米ドル/円買いポジションの含み損拡大状況をツイートし、トレーダーのみなさんに楽しい話題を提供していた。
生まれて初めて、100万通貨以上のポジション取ったら、含み損が順調に拡大中(^^)/ pic.twitter.com/zlUfULUPQ0
— 井口稔@ザイFX!編集部 (@Neko_Iguchi) 2019年4月24日
米ドル/円200万通貨買いの含み損が30万円突破(^^)/ pic.twitter.com/S9otdMeV8Z
— 井口稔@ザイFX!編集部 (@Neko_Iguchi) 2019年4月24日
それに対して、「そんな天井で買わなくても…」という突っ込みをもらったこともあった。
そんな天井で買わなくても… https://t.co/hvNOJvsOtu
— ユーロ売りグローバル投資垢 (@euroseller) 2019年4月25日
まったく仰るとおりの高値づかみである。ただ、その裏側では同じようなレートで同量の売りポジションを持っていたことはここまで書いてきたとおりだ。
「iサイクル2取引」「サイクル2取引」が発動しないように注意!?
ところで、スプレッドが広めということもあり、外為オンライン「外為オンラインFX」の「スピード注文系発注機能」はあまり注目されることはないかもしれない。以下の「スピード注文系発注機能」を詳しく徹底調査した記事でも取り上げていない。
【参考記事】
●「スピード注文系発注機能」を徹底比較! 初期設定のまま使うとキケンなことも!?
今回、筆者は外為オンライン「外為オンラインFX」の「スピード注文系発注機能」である「クイックトレード」を利用したのだが、これは何というか、約定がスパッと行われ、なかなか快適なものだった。このことは付記しておきたい。ただ、外為オンライン「外為オンラインFX」のスプレッドに小数点以下がなく、スプレッドが細かく刻まれていないことがスパッと約定できる理由の1つなのかもしれないが…。
そして、外為オンライン「外為オンラインFX」の取引画面で「新規注文」のメニューの中には「iサイクル2取引」や「サイクル2取引」といったリピート系発注機能も存在しているのだが、このこともちょっと注意が必要な点。
【参考記事】
●バージョンアップした「iサイクル2取引」は前とどこが違う? 改名の背景に裁判の影!?
「新規注文」メニューには「クイックトレード」とともに「iサイクル2取引」や「サイクル2取引」も並んでいる
今の外為オンライン「外為オンラインFX」は裁量トレード用の口座というより、この「iサイクル2取引」や「サイクル2取引」がウリの口座と言えるかもしれない。
【参考コンテンツ】
●システムトレード(シストレ)口座を徹底比較!:(4)リピート系発注機能【トラリピなど】
けれど、今回については、筆者としては結構な金額を外為オンライン「外為オンラインFX」の口座へ入金し、SBI FXトレードの口座と併せ、売りと買いのポジションをだいたい同じレートで建てるべく、そぉ~っと恐る恐る取引しているのである。それなのに、うっかり間違えて「iサイクル2取引」や「サイクル2取引」が発動し、注文が乱舞してしまったら大変だ。カオスである!?
なので、筆者は「iサイクル2取引」や「サイクル2取引」のボタンに触らないよう、注意を払って今回、取引を行ったのだった。
なお、外為オンラインといえば、イメージキャラクターを元AKB48の大島優子が務めているが、外為オンライン「外為オンラインFX」には、なんと約定した際に大島優子の声でそれを知らせてくれるという画期的なシステムがある。その名も「取引システム OSHIMA YUKO version」という。
【参考記事】
●【AKB48】大島優子さんの声でお知らせ!? 外為オンラインの画期的新システムとは?
平成後期を代表するアイドルグループの元メンバーの声を聞きながら、平成最後のお祭りトレードに参戦するということも考えられなくもなかったが、それなりに緊張して今回のトレードに臨んでいた筆者は「取引システム OSHIMA YUKO version」を使用せず、普通の外為オンライン「外為オンラインFX」の取引システムを使用したのだった。
スワップポイントは何時何分に付与されるのか?
さて、FXは土日以外の24時間365日、取引可能とザックリよく言われる。「ザックリ」であれば、この表現に問題はないが、クリスマスや1月1日など、FXの取引が止まる日もあるし、FX会社によっては毎営業日、日本時間早朝のNYクローズ近辺で短時間、メンテナンスの時間を取っている場合もある。
しかし、この毎営業日のメンテナンス時間がないFX会社もあり、たとえば、GMOクリック証券「FXネオ」やDMM.com証券「DMM FX」は月曜日早朝から土曜日早朝までノンストップだ。
なぜ、このようなことを書き出したかというと、スワップポイントが付与される時刻は何時何分かということが“スワップ11倍デー”においては、ちょっと気になるポイントだからだ。
月曜日早朝から土曜日早朝までノンストップ営業のGMOクリック証券「FXネオ」やDMM.com証券「DMM FX」は夏時間の今なら午前6時のNYクローズ時点でどうもスワップポイントが付与される模様だ。
では今回、筆者が「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」を行ったSBI FXトレードと外為オンライン「外為オンラインFX」はどうなのか。この2口座には毎営業日、メンテナンスの時間があった。
外為オンライン「外為オンラインFX」は夏時間の今なら午前5時55分から午前6時5分までの10分間がメンテナンス時間となっている。一方のSBI FXトレードは午前5時30分から午前6時までの30分間だ。
外為オンライン「外為オンラインFX」は通常、NYクローズとされている午前6時よりも5分だけ取引開始時刻が遅い。
そして、SBI FXトレードはメンテナンス時間が30分と結構長い。早朝の時間帯にSBI FXトレードを利用したいという人は注意した方がよい点だということを筆者は今回、初めて知った。
また、外為オンライン「外為オンラインFX」もSBI FXトレードも、メンテナンス時間入りまでポジションを保有し続ければ、メンテナンス中にスワップポイントを受け取ったり、支払ったりすることが確定し、メンテナンス明けには口座内でスワップポイントの数字が確認できるということになっているようだ。これはある意味、わかりやすい。
いずれにしても、今回の筆者の「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」では、午前6時前後の微妙な時間帯にあわただしくトレードする必要はない。相場急変だけはないことを祈りつつ、午前6時前後には状況を見守っていればいいだけだ。
そういうことではあるのだが、それはちょっとスリリングにも感じられるひとときだった。
シティグループ証券の高島修さんもスワップ11倍デーに注目
午前5時30分、SBI FXトレードの取引画面には「セッションエラーです」という表示が出た。
そして、そこにある「閉じる」というボタンを筆者がクリックすると、取引画面からログアウトしたのだった。SBI FXトレードはメンテナンス時間に入ったのだ。
午前5時45分、つけておいたテレビからテレビ東京の経済番組「Newsモーニングサテライト(通称:モーサテ)」のオープニングテーマが流れ、やがていつも聞き慣れた佐々木明子キャスターの声が聞こえてきた。
筆者はモーサテが始まる時刻に通常はまだ寝ている。モーサテは毎日録画して、あとから見ているのだが、本日はリアルタイムで見ることができたのだった。
午前5時55分、外為オンライン「外為オンラインFX」の取引画面では「インフォメーション履歴」というウィンドウがポップアップして、【締処理中】という表示が出た。外為オンライン「外為オンラインFX」もメンテナンスに入ったようだ。
同時に午前5時55分からモーサテでは「きょうの為替は?」のコーナーが始まった。この日の為替の解説はシティグループ証券のチーフFXストラテジスト、高島修さんだった。高島さんにはザイFX!でも取材させてもらったことがある。
【参考記事】
●シティグループ証券・高島修さんに聞く(1) 高金利が魅力のトルコリラ、今は買い時?
●シティグループ証券・高島修さんに聞く(2) 利下げ濃厚なのになぜメキシコペソは買い?
シティグループ証券のチーフFXストラテジスト、高島修さん。ザイFX!取材時に撮影したもの。 撮影/和田佳久
「……ニューヨーク市場、ドル高の動きということでしたけれども、今日は続くんでしょうか?」という秋元玲奈アナの問いかけに対し、高島さんは以下のように、この日の為替相場を解説したのだった。
「まず、日銀決定会合が控えているんですが、サプライズはないと思うんですね。私がむしろ注目しているのはやはり日本の個人投資家の動向でして、実は昨日、24日が連休中の11日間のスワップポイントをつけるFX業者が多かったんですね。本日、25日の午前6時前後が確定の時間というふうに言われていますので、そのあとに円買い戻しの動きが発生しないか、注意したいと思います」
なんと、あの有名な高島さんまでも“スワップ11倍デー”という異端の話題(?)に言及したのだった。日銀の金融政策決定会合がある日だというのに、日銀を押しのけ、それよりFXの11日分スワップポイント付与の方が重要だと高島さんは話していたのだ! 「見たか、黒田総裁!」と筆者は黒田日銀総裁に誇示したい気持ちになった(意味不明)。
そして、モーサテで高島さんが“スワップ11倍デー”に言及したのは、多くのFX会社がスワップポイントを付与すると思われる午前6時の本当に直前の直前だった。このようにライブ感満載の状態で、史上空前の“スワップ11倍デー”のクライマックス、NYクローズは迫ってきたのだった。
メンテ明けに20万6800円のスワップ付与を確認!
午前6時、SBI FXトレードのメンテナンスが明けて、取引画面にログインできるようになる時刻だった。筆者がログインしてみると、そこには
20万6800円
のスワップポイントがしっかりと付与されていた!
以下は午前6時2分頃にキャプチャしたものだが、200万通貨の米ドル/円買いポジションに対して、スワップポイントが20万6800円ついていることが確認できる。
20万6800円÷200÷11日=94円
と計算すると、1万通貨1日当たりのスワップポイントは94円だったとわかる。これを11倍すれば1034円。“スワップ11倍デー”に1万通貨の米ドル/円をSBI FXトレードで買っていれば、1034円ものスワップポイントが一挙についたということだった。
本記事で何度も紹介している以下の記事で想定していたSBI FXトレードの1万通貨、11日分のスワップポイントは946円だったから、それよりも多いスワップポイントがついたことになる。
【参考記事】
●10連休前の4日間で32日分の大量スワップ! 為替変動リスクなしで年利30%儲ける方法も
今回の「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」には、11日分といいつつ、実際にはかなり低いスワップがつけられてしまうリスクがあったわけだが、そのことはクリアしたのだった。
6時5分、外為オンライン「外為オンラインFX」がメンテナンス明けとなり、取引画面にログインできる時刻だ。筆者がログインしてみると以下のような状態になっていた(6時6分頃にキャプチャ)。
※外為オンライン「外為オンラインFX」のポジション状況は横幅が長く、そのまま掲載すると数字が小さくて見づらくなってしまう。そのため、取引証拠金など一部の項目をカットして画像をつなげ、横幅を短くして見やすくした
このキャプチャでは50万通貨ずつの売りポジションが表示されているが、50万通貨あたりのスワップはマイナス5750円。合計200万通貨分ではマイナス2万3000円ということになる。これを1万通貨当たりの数字に換算すると115円だ。
外為オンライン「外為オンラインFX」のこの日のスワップは1日分だけ。115円というのはおおよそ想定どおりであり、異常な数値ではない。
あとはまあまあ同じようなレートで売り買い双方のポジションが解消できれば、このトレードはめでたく終了となるはずだ。
ここで、SBI FXトレードにおける11日分のプラスのスワップポイントと外為オンライン「外為オンラインFX」における1日分のマイナススワップポイントを差し引いた金額を出しておくと…
20万6800円-2万3000円=18万3800円
ということになる。
異変!? マイナス額が大きすぎるのでは…
しかし、話はそこまで簡単には終わらなかった。
筆者の手元に残っている2019年4月25日(木)の午前6時を少し過ぎた段階での外為オンライン「外為オンラインFX」、SBI FXトレードの口座状況のキャプチャを見てみよう。
外為オンライン「外為オンラインFX」では口座の評価損益がプラス42万7000円となっていた。
一方のSBI FXトレードではマイナス51万4000円となっていた。10万円弱もSBI FXトレードのマイナス額が大きいのだ。10万円弱は大きすぎると直感的に思った。
どうなっているのだろうか?
ここで前回の記事で引用した元為替ディーラーの「たかはと」さんのつぶやきを今一度、引用しておこう。
【前回の記事】
●平成最後の祭り、“スワップ11倍デー”にザイFX!編集長が含み損50万円突破!?
スワップ付与日数が異なる業者間で 配信されるレートが同じかどうかがポイントですね スワップ付与日数が異なる→value dateが違う という建て付けなら 2社間のレートが違うので。そうそう簡単なアービトラージは無いものと思料 https://t.co/amnApNTmde
— たかはと (@takahato) 2019年4月23日
「たかはと」さんのつぶやいているとおり、スワップ付与日数が異なる2社で為替レートが異なるという恐ろしい事態も考えられる。外為オンライン「外為オンラインFX」、SBI FXトレードの為替レートはどうなっているだろうか?
筆者が取っておいたキャプチャは外為オンライン「外為オンラインFX」が午前6時6分頃のもの、SBI FXトレードが午前6時11分頃のものと5分ほど異なってしまっている(いろいろバタバタしていて、気づいたらこれしか残っていなかった)。
5分ほど違う時刻のものではあるが、米ドル/円のレートは外為オンライン「外為オンラインFX」が112.11円-112.12円で、SBI FXトレードが112.0976円-112.1254円。大差はない。また、筆者が観察していた限りでも2社の米ドル/円レートに大きな差はないと思えた。
そこで筆者は単純なことなのだが、あることに気づいたのだった。
外為オンライン「外為オンラインFX」の評価損益にはスワップ分のマイナスが含まれているのに、SBI FXトレードの評価損益にはスワップ分のプラスが含まれていないのだ。同じ「評価損益」という言葉でも両口座には違いがあるのだった。
ちょっと焦った筆者だったが、これがわかって胸をなで下ろした。
日本時間早朝のスプレッド拡大でちょっと発見
ただ、それでもまだSBI FXトレードのマイナス額が大きすぎる感じがする。どうもそれはスプレッド拡大の影響があるようだった。
外為オンライン「外為オンラインFX」のスプレッドは1銭。通常時と変わりはない。けれど、SBI FXトレードは50万通貨の取引なら通常時、0.29銭のはずのスプレッドが2.78銭まで拡大していたのである。
午前6時過ぎという日本時間早朝においては、業界最先端を走る1社というイメージがあるSBI FXトレードよりも、裁量トレード口座としては古風な趣さえ感じられる外為オンライン「外為オンラインFX」のスプレッドの方が狭いのだ。これもちょっとしたオドロキの発見だった。
けれど、ここで筆者は羊飼いさんからもらったコメントを思い出していた。羊飼いさんは、スワップポイント付与後の方がスプレッドが通常時の状態に戻りにくく、それは8時まで続くかもしれないと指摘していたのだ(前回の記事参照)。
【前回の記事】
●平成最後の祭り、“スワップ11倍デー”にザイFX!編集長が含み損50万円突破!?
実際、筆者がFX取引高7年連続世界一の業界大手、GMOクリック証券「FXネオ」の状況を見に行ってみると、そちらも米ドル/円のスプレッドは2.4銭などに拡大していた。SBI FXトレードのスプレッドだけが拡大していたわけではないのだった。
スワップポイント付与後にスプレッドが拡大するのは通例のことであり、いずれまた戻るのであれば心配することはないだろう。このときは羊飼いさんにあらかじめ話を聞いておいて良かったと筆者は思ったのだった。
ここまで来れば、あとはスプレッドが元に戻るのを待ってから、売り買い両建てのポジションをおおよそ同じタイミングで解消すればいいだけだ。
そして、このようなことを確認した上で、午前6時25分に筆者は自分のツイッターで「含み損が50万円突破!」と速報して、正直、ちょっと楽しんでいた。その裏では逆方向のポジションでちゃんとヘッジしてある含み損50万円突破だったのだ。
【速報】私の米ドル/円200万通貨買いポジションの含み損が50万円を突破しました! pic.twitter.com/3NQ3oEkt4q
— 井口稔@ザイFX!編集部 (@Neko_Iguchi) 2019年4月24日
100万円以上のスワップポイントをゲットした有名トレーダーも
そんなことをしていた4月25日(木)の早朝、バイナリーオプションをメインで取引している億トレーダーの「ふさふさ」さんが以下のようなツイートをしていた。
めっちゃビビりながら
— ふさふさ (@23_fusafusa) 2019年4月24日
ドル円両建てでスワップもろた
フラクラ起きなくてよかた ε-(´∀`*) pic.twitter.com/y1uAShqdEN
「ふさふさ」さんは1000万通貨の米ドル/円買いポジションを建て、11日分で103万4000円ものスワップポイントをもらったようだった。筆者と同じ「売り買い両建て」でやっているようなので、これ以外にコストが発生し、“純利益”はもう少し少ないはずだが、それにしても大きな利益だ。
「ふさふさ」さんのツイートには、メチャクチャ取引量の多い有名億トレーダーのAkiさんから、こんなリプライも…
すごすぎやろw
— Aki@FX 重要局面だ!株も為替も! (@aki_fx1) 2019年4月25日
すみませんお初なのに。
また、筆者も「ふさふさ」さんのツイートにリプライしてみたところ、「ふさふさ」さんからは「怖かったです:;(∩´?`∩);:」との感想が…。
怖かったです:;(∩´﹏`∩);:
— ふさふさ (@23_fusafusa) 2019年4月24日
本記事シリーズで何度か書いてきたとおり、「売り買い両建てスワップタダ取りトレード」は為替変動リスクは基本的にはゼロなのだが、ものすごい相場急変があって片側のポジションだけ強制ロスカットになってしまう事態になることだけは怖い。「ふさふさ」さんはそれを乗り越え、トレードを成功させたのだった。
秒速トレードなら買ってすぐ売る手法で儲かった可能性あり!?
ここで、筆者は実行していないが、スワップ11倍付与の直前に米ドル/円を買って、直後に売る手法はどうだったのか、検証してみよう。
午前6時近辺に、外為オンライン「外為オンラインFX」は10分間、SBI FXトレードは30分間のメンテナンス時間がある。したがって、買ってすぐ売るやり方には適していない。
そこで月曜から金曜までメンテナンス時間がなく、ノンストップで走り続けるGMOクリック証券「FXネオ」の米ドル/円がどうなったか、見てみることにする。
以下のとおり、GMOクリック証券「FXネオ」のスワップポイントは今のような夏時間であれば、午前6時00分に付与されることになっている。
都合により、GMOクリック証券「FXネオ」の当時の米ドル/円チャートは10分足のものしか取れていなかったので、以下に掲載するのは10分足のチャートだ。
午前6時ちょうどのローソク足は大きめの陰線となっており、この瞬間に下がったことはわかる。
(出所:GMOクリック証券「FXネオ」)
これ以上、細かいことはわかるだろうか? GMOクリック証券「FXネオ」ではすばらしいことに2007年以降の1分足のヒストリカルデータすべてをマイページからダウンロードすることが可能だ。
【参考記事】
●為替の過去データをFXトレードに活用! ティックや1分足データはどこで入手できる?
余談になるが、以下の記事もこのGMOクリック証券「FXネオ」のヒストリカルデータを利用して書かれている。
【参考記事】
●「仲値トレード」って本当に儲かるの?(1) 実は巷で言われているような法則はない!?
●「仲値トレード」って本当に儲かるの?(2) 相場観一切無視で勝率7割超の手法発見!?
GMOクリック証券「FXネオ」のヒストリカルデータを見ると、2019年4月25日(木)午前5時59分の1分足の終値でASKは112.205円となっていた。ASKはユーザー側から見て買うことのできるレートのことだ。実際上、こんなにギリギリにトレードできるかは置いておくと、理論的にはスワップ11倍付与直前に買うことのできたレートは112.205円ということになる。
そして、2019年4月25日(木)午前6時00分の始値でBIDは112.181円となっていた。BIDはユーザー側から見て売ることのできるレートだ。秒速で買ってすぐ売るトレードがもしもできるのであれば、理論的には
112.205-112.181円=0.024円
となって0.024円、つまり、2.4銭損しただけということになる。1万通貨なら240円の損失だ。
その一方、GMOクリック証券「FXネオ」では米ドル/円1万通貨の買いでこのとき、11日分のスワップポイント、869円がもらえたので、差し引き1万通貨当たり629円の利益が出たことになる。
買ってすぐ売る手法はやはり難しそう?
ただし、GMOクリック証券「FXネオ」で2019年4月25日(木)午前6時00分の1分足で終値のBIDは112.118円まで下がっている。1分近くかけてここまで下がったのか、ものの1秒足らずで下がったのかはわからない。この112.118円で売ったとすれば、
112.205-112.118円=0.087円
となって0.087円、つまり8.7銭損することになる。1万通貨なら870円の損失だ。これはこのとき付与された11日分のスワップポイント、869円とほぼ同じ金額になってしまう。
そして、スワップポイントが本当に付与されたか、瞬時に確認するのは大変かもしれない。
GMOクリック証券「FXネオ」のスワップポイントは取引画面内の「FXトレード日記」欄に表示されるのだが、そこを何度もリロードするのか、GMOクリック証券「FXネオ」の取引画面内の時刻が午前6時00分になるのを凝視しておくのか、はたまた精密な電子時計でも用意しておくのか──いずれにしてもスワップ付与の直前に買って、直後に売る手法はGMOクリック証券「FXネオ」を検証した限りでは結構難しそうに思えた(その後、午前9時台になると、米ドル/円レートは11日分のスワップポイント付与前の水準を回復はしていたが…)。
なお、トルコリラ/円などの状況も含め、“スワップ11倍デー”の朝の模様は以下の記事でもまとめている。こちらもご参考に。トルコリラ/円は11日分のスワップポイント付与後にずいぶん派手に下落していた。
【参考記事】
●トルコリラのスワップは付与直後の下落で帳消しに!? 「スワップ11倍デー」の結末は?
(出所:Bloomberg)
また、4月25日(木)の早朝に羊飼いさんは以下のようなツイートをしていた。昔からの事情をよ~く知っている羊飼い先生による「FXの歴史」の授業が展開されていたのだった。
昔はスワップ金利が付与する前後で特別にスプレッドも開かず取引出来ない時間も少なかった
— 羊飼いFX★ (@hitsuzikai) 2019年4月24日
なので、ポジション持って1分以内に決済してスワップ金利だけ貰う的な人も結構いて
ただ、美味しい話は次第に潰されるのが世の常で
最近は下手したら8時頃までスプレッドが開いたまま。。。
4時間のトレードで約15万円の利益を上げた
前回の記事を含め、ここまで書いてくるのにかなり長くなってしまったが、とうとう“スワップ11倍デートレード”のゴールが見えてきた。拡大していたSBI FXトレードのスプレッドは午前7時台後半になると、段々通常時のものに戻っていった。羊飼いさんの情報のとおりだった。
【前回の記事】
●平成最後の祭り、“スワップ11倍デー”にザイFX!編集長が含み損50万円突破!?
そこで、筆者は午前7時30分頃から午前7時50分頃にかけて、「50万通貨×4セットの売り買い両建てポジション」を1つずつ解消していったのだった。
今回も一定の緊張感を持って、少しでも利益が多くなるよう、外為オンライン「外為オンラインFX」とSBI FXトレードのレートを見比べながら発注ボタンを押した(実際に少しでも利益が多くなったかどうかは定かではないが…)。
以下は今回の米ドル/円売り買い両建てトレードのSBI FXトレードでの約定取引明細(本物)だ。
※SBI FXトレードのスマホアプリの約定取引明細は表示件数に限りがあるため、画像をつなげて一覧にしている
そして、以下は今回の米ドル/円売り買い両建てトレードの外為オンライン「外為オンラインFX」での約定取引明細(本物)。
※外為オンライン「外為オンラインFX」の約定取引明細は横幅が長く、そのまま掲載すると数字が小さくて見づらくなってしまう。そのため、取引証拠金など一部の項目をカットして画像をつなげ、横幅を短くして見やすくしている
以上のスワップポイントの損益と為替差損益を表にまとめると以下のようになる。
FX会社 「口座名」 |
スワップポイント 損益 |
為替差損益 |
SBI FXトレード | +20万6800円 | -53万9050円 |
外為オンライン 「外為オンラインFX」 |
-2万3000円 | +50万5000円 |
合計 | +14万9750円 |
すべてを合計すると、資金は14万9750円増えていたのだった。
先に書いたとおり、純粋にスワップポイントの合計だけなら18万3800円の利益だったはずだが、それより3万4050円少ない利益となった。スプレッド分の取引コストだけ利益が減ったわけだ。
今回のトレードの最初の新規約定は2019年4月25日(木)午前3時50分、最後の決済約定は同午前7時50分。“スワップ11倍デー”の日本時間早朝に、合計4億5000万円分のポジションを建て、ピッタリ4時間かかって行ったトレードの、これが結果だった。
こうして“スワップ11倍デー”に照準を合わせた筆者の「異業者売り買い両建てスワップタダ取りトレード」は成功に終わったのである。
しかし、トレードというものは…いや、そもそもたいていの物事はいい気になっていると、往々にしてしっぺ返しをくらったりするものだ。調子に乗った筆者は第2弾、“スワップ9倍デートレード”をこのあとやってみたのだが……。そこには筆者を奈落の底へ突き落とすような出来事が待っていたのだった。
(「“スワップ9倍デー”後にFX会社によって為替レートが違う異変!? 正しいのはどっち?」へつづく)
(取材・文/ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・藤本康文)
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