■米国との対立などで消費マインドが悪化
トルコ統計局が5月21日(火)に発表した5月の消費者信頼感指数は55.3となりました。4月は63.5でしたので、前月比で13%の減少となっており、2008年11月以来の低水準に陥っています。
(出所:Bloomberg)
また、同じ日に発表された景況感指数も4月の82.4から14.9%悪化し、70.1になりました。
地方選挙が終わったにも関わらず、政治不安が払拭されないことや中東における地政学リスクの高まり、トルコと米国の対立などが消費マインドを大きく冷やし、景気を悪化させているようです。
実際に、OECD(経済協力開発機構)もトルコの経済成長見通しを引き下げています。
OECDは2019年の経済成長見通しを、マイナス1.8%からマイナス2.6%に、2020年はプラス3.2%からプラス1.6%に引き下げています。
(出所:OECD)
気になるトルコリラですが、イスタンブール市長選挙のやり直しが決まった直後に大きく下落する場面もありましたが、足元では落ち着いています。
【参考記事】
●トルコ中銀は、政策金利を28%にすべき!トルコリラ安定には早期の利上げが必要(5月15日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
■トルコリラ安定のため、外貨購入税が復活
トルコ政府は、先週(5月13日~)から為替を安定させるために、新たな政策を発表しています。
まず、外国為替取引は今まで無税でしたが、取引ごとに0.1%の税金が課されることになりました。実は、外国為替取引は2008年まで課税対象でしたが、エルドアン政権がこれを撤廃しました。外貨購入税は11年ぶりに復活することになりました。
トルコ政府は外国為替取引を課税対象とすることを決定。外貨購入税は11年ぶりの復活というが、そのワケとは? (C)Anadolu Agency/Getty Images
■トルコで発表された外貨取引規制とは?
そして昨日(5月21日)、BDDK(トルコ銀行調整監視機構)が発表した規制によると、10万ドルを超える外貨購入の場合、外貨の引き渡しは翌日になります。
つまり、10万ドルを購入したい場合、その代金であるトルコリラを先に支払って、米ドルは翌日手に入ることになります。一方で外貨を売った場合、即日取引は可能とのことです。当局は、頻繁な売買を規制することによって為替レートを安定させようとしています。
これらの政策は、短期的にトルコリラを安定させる効果があると思います。少なくとも6月23日(日)に行われるイスタンブール市長再選挙までトルコリラが大幅に下落するリスクは少ないと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
■今後、外国為替取引の税率がさらに引き上げられると…
しかし長期的には、国民に、政府がそのうち資本規制をするのではないかとの懸念を与える可能性があります。
トルコ国民の外貨預金は、今年(2019年)に入ってから200億ドル増加し、1800億ドルに達しました。国民は、外貨の資本規制や引き出し規制が行われるのでは?と心配になると、これらの外貨預金を銀行から引き出し、タンス預金にしてしまいます。
また、外国為替取引への税率が、今後、もっと引き上げられた場合に、取引そのものがシステムから消えて、ブラックマーケットに移行する可能性があります。
これは1970年代に逆戻りすることを意味します。実は、トルコで外国為替取引が自由にできるようになったのは1980年であり、それまでは外貨を購入することも、保有することも違法でした。当然ながら、外貨取引はブラックマーケットでしかできなかったです。
さすがに1970年代に逆戻りするほど事態が悪化すると思わないので、これらの措置は一時的で、選挙後に元に戻される可能性が高いのではないかと考えます。
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