■トルコ中銀などが為替介入に動くも、影響は限定的
イスタンブール市長選挙のやり直しが決定してから、トルコリラの乱高下が激しくなりました。
【参考記事】
●イスタンブール市長選挙、やり直し決定! トルコリラは大幅下落! 再選挙の行方は…(5月8日、エミン・ユルマズ)
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トルコ中銀とトルコの国営銀行は、先週(5月6日~)から直接の為替介入(米ドル売り・トルコリラ買い)を実施し、トルコリラを安定させようとしています。
実に、この1週間における直接介入の金額は45億ドルを超えると予想されています。
為替介入が行われるたびにトルコリラは一時的に上昇していますが、その後、再び下落に転じることが多いです。
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■政治リスクの高まりなどで、トルコのCDSは上昇
トルコのCDS(クレジットデフォルトスワップ)は、今週(5月13日~)も上昇を続け、一時500bpを超えました。
(出所:Bloomberg)
政治リスクの高まりに加え、トルコ中銀の外貨準備高についての疑問が広がっています。
また、度重なる選挙で政府の財政赤字が拡大していて、資金調達が困難になっています。
トルコメディアによると、トルコ財務省は中銀の法定準備金400億リラ(約7500億円)を政府予算に移管する法案を準備しているようです。CDSが上昇している背景に、政府の財政状況に対する懸念も大きいと考えます。
■トルコリラ乱高下のもうひとつの要因、「S-400問題」
トルコリラを乱高下させているもうひとつの要因は、S-400問題です。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
●トルコ地方選挙は三大都市で与党敗北!? トルコリラ反発も、次は対米外交が火種に…(4月3日、エミン・ユルマズ)
独ビルド紙のジャーナリストが「トルコがS-400の購入を諦めた」とツイッターで呟いたことを受け、トルコリラは上昇しました。
しかし、その後、トルコ政府の報道官はこれを否定しました。数日後に今度はロイターが、「米国がS-400の購入延期をトルコに要求している」と報道しました。
しかし、トルコ政府はこの報道も否定しています。国内外の投資家は結局、トルコがS-400を購入するのかしないのかわからず混乱が起きています。
個人的には、これらの報道の信憑性が高く、トルコはS-400の購入をとっくに諦めたのではないかと考えています。
しかし、与党同盟はイスタンブール市長選挙の再選挙の前に、この事実を公表したがらないでしょう。与党同盟は、今まで反米姿勢を強く打ち出し、トルコ民族主義者の支持を得ました。このタイミングでS-400購入を諦めるとなると、米国の圧力に屈したと支持者に見られ、支持率の低下につながる可能性があります。
■トルコリラ安定には、早期の利上げが必要
5月13日(月)に3月の経常収支が発表されました。経常収支はマイナス5.9億ドルとなり、前年同月比で41.5億ドルほど改善しています。
(出所:Bloomberg)
この結果は事前予想のマイナス10億ドルよりも良い数字で、非常にポジティブな内容です。トルコ経済はマクロ指標の改善が続いていますが、政治リスクが払しょくされないので、トルコ中銀と国営銀行による為替介入は、今後もしばらく継続する可能性が高いと考えます。
しかし、直接の為替介入は短期的な解決策に過ぎず、効果が切れたら通貨はまた下落に転じてしまいます。トルコリラを安定させるには、早期の利上げが必要だと思います。
トルコ中銀は、政策金利を少なくとも400bp引き上げ、28%に設定すべきです。
(出所;Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
現地のエコノミストの間でも利上げがコンセンサスになりつつあります。したがって、私は6月23日(日)の再選挙後の利上げの可能性が高まったと考えます。
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