■イスタンブール新市長就任も、混乱は収まらず…
イスタンブールの市長選に勝利した最大野党CHP(共和人民党)のイマモール氏は4月17日(水)に市長に就任しました。
しかし、与党のAKP(公正発展党)はその後、トルコの首都アンカラにあるYSK(高等選挙管理委員会)に選挙のやり直しを求める申請をしました。
YSKは現在協議中ですが、その結果は今週(4月22日~)中、遅くとも来週(4月29日~)の中盤までには出る予定です。
与党・AKPの申請が認められた場合、再選挙は6月2日(日)になります。
【参考記事】
●イスタンブール市長選挙が泥沼化…。選挙やり直しの有無がトルコリラの鍵に!?(4月17日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領率いる与党・AKPは、イスタンブール市長選のやり直しを求めてYSKに申請。もし、再選挙となれば6月2日(日)に実施されるというが、果たして… (C)Anadolu Agency/Getty Images
■野党・CHP党首が複数人から襲われる事件が発生
イスタンブール市長選の泥沼化は、トルコの政治テンションを高めています。
4月21日(日)にアンカラで、CHPのクルチダルオール党首が複数の人から攻撃を受けました。
4月19日(金)にクルドテロ組織であるPKK(クルディスタン労働者党)はトルコ軍を攻撃し、兵士4人が死亡しました。
クルチダルオール党首は、21日(日)に犠牲になった兵隊のお葬式に参加していました。
エルドアン政権側のメディアは、CHPが選挙に勝つためにクルド政党と協力したのは国への裏切り行為だという一方的な報道を選挙後、ずっとしていました。
これらの報道は、国内の政治的テンションを高めています。
■2019年年末のトルコリラ/円の予想は?
今週(4月22日~)のトルコリラは、対米ドル、対円ともに小動きとなっています。投資家はイスタンブール市長選が再選挙になるかどうかを見極めていると考えます。
トルコ中銀は先週(4月15日~)、2019年年末の米ドル/トルコリラの予想を、6.06リラから6.20リラに、インフレ率予想を15.6%から16.2%に引き上げました。
米ドル/円は年内まで変わらないと想定して計算した場合、トルコ中銀の2019年年末のトルコリラ/円予想は18円ということになります。
市場にはトルコ中銀の予想が楽観的だという見方があります。
(出所:Bloomberg)
個人的にはトルコ中銀の想定している為替レートの範囲内で着地するためには2つの条件があると考えます。
そのひとつ目は、トルコ中銀が金融引き締め姿勢を続けることです。
FRB(米連邦準備制度理事会)が緩和にシフトしていることは、世界中で緩和ムードを高める可能性があります。トルコ中銀はそんな緩和ムードに騙されるべきではありません。
トルコの外貨準備高が減少していて、政策金利が引き下げられた場合に、トルコリラが大きく崩れるリスクがあります。
(出所:Bloomberg)
■原油が上昇トレンド入りで、新興国通貨には厳しい環境に
2つ目の条件は原油価格がWTIで70ドルを超えないことです。しかし、原油価格は足元で明らかな上昇トレンドに入っています。
【原油価格とトルコリラ相場の関係についての参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!? 原油価格とトルコリラは逆相関関係にある
(出所:Bloomberg)
米国はイランに対する圧力を最大化していて、これらはすべて原油価格にとって追い風です。そのため、原油価格は2019年年末までにWTIで80ドルまで上昇する可能性が出てきたと考えます。
原油価格の上昇トレンドが継続すれば、今年(2019年)後半はトルコリラだけではなく、原油価格の上昇に弱い新興国通貨には厳しい環境になると考えます。メキシコペソを除くほとんどの新興国通貨は原油価格の上昇に弱いのです。
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