■トルコ国民の「ドラライゼーション」が話題に
トルコでは、トルコ国民の資産のドラライゼーション(ドル化)が大きな話題になっています。
先週(5月20日~)、23日(木)にトルコ中銀が公表したデータによると、トルコ国民の外貨預金総額は5月も増加を続け、1823億ドルになりました。
トルコの対外債務は約4450億ドルなので、トルコ人の外貨預金はおおよそ、その半分まで達しているということになります。
(出所:トルコ中央銀行)
国民と裏腹に、トルコ中銀の外貨準備高は歴史的な低水準に落ちています。先週(5月20日~)時点で、トルコ中銀の外貨準備高は717億ドルまで下落しています。
これは昨年(2018年)10月以来の低水準です。また、この数字は総額なので、純外貨準備高は249億ドルとなっています。
トルコのGDPの規模から考えると、これはかなり危険な水準です。年初からトルコ中銀は、為替介入を繰り返してトルコリラを安定させようとした結果、外貨準備高の多くを使ってしまいました。
【参考記事】
●トルコ中銀は、政策金利を28%にすべき! トルコリラ安定には早期の利上げが必要(5月15日、エミン・ユルマズ)
結果として、新興国の中で、現在、トルコはもっとも低い外貨準備高の比率となりました。この外貨準備高では外国から資金流入がストップした場合に、トルコが輸入を継続できる期間は4カ月しかありません。
■ラマダン祭りに合わせてトルコリラは上昇か?
トルコリラは今週(5月27日~)に入ってから、対米ドルで上昇に転じました。対円は、やや買い戻しが入ったものの、円高が進行したこともあり、上値は限定的なものにとどまっています。
※通常は「米ドル/トルコリラ」ですが、トルコリラの動きをわかりやすくするため「トルコリラ/米ドル」で掲載しています。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
トルコは来週(6月3日~)から、ラマダン明けで大型連休に入ります。
ラマダンはイスラム教徒が断食をする聖なる月ですが、ラマダン明けに3日間のお祭りがあります。
今年(2019年)のラマダン祭りの初日は火曜日なので(陰暦なので毎年変化します)、トルコ政府は月曜日と金曜日も休日にして、9連休を作りました。
ラマダン祭りの前に、トルコ人は食材を大量に購入し、新しい服や靴を買ったりします。そのため、今週(5月27日~)に入ってから、トルコ国民は買い物のため、手持ちの外貨をトルコリラに変えているのではないかと思います。
よって、今週(5月27日~)は、トルコリラの上昇が続く可能性が高いと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
■S-400導入断念は、トルコリラにとってポジティブ
気になるS-400問題ですが、昨日(5月28日)、トルコメディアが報道したニュースによれば、アカル国防大臣は、S-400のトルコへの到着は数カ月先になると発言しました。
アカル大臣はS-400の設置プロセスは開始していて、政府としては設置場所を検討しているともコメントしていますが、デリバリーが数カ月先になるということは、トルコ政府がS-400を諦める可能性があることを示唆しています。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
●トルコ地方選挙は三大都市で与党敗北!? トルコリラ反発も、次は対米外交が火種に…(4月3日、エミン・ユルマズ)
アカル大臣は、トルコ軍の元参謀長でNATO(北大西洋条約機構)や米軍とも良好な関係を維持してきた人物なので、このニュースはトルコリラにとって非常にポジティブだと考えます。
米国側との交渉は、まだ継続していて、アカル大臣の発言を受け、両国は何らかの合意に至る可能性が高まったと考えています。
一方でトルコ政府は、今までも時間稼ぎ外交を続けてきたので、米国側は完全制裁をしないものの、警告の意味も込めて何らかの制裁措置を実施する可能性もあると考えます。
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