■トルコはラマダン明けの祭りで9連休中
トルコは6月4日(火)のラマダン明けのため、今週(6月3日~)はすべて休日となっています。
ラマダン明けのお祭り(Ramazan Bayrami)は通常3日間ですが、政府と民間企業は月曜日と金曜日もお休みにして9連休を作りました。
前回のコラムでラマダン祭りの前の買い物需要でトルコリラへの需要も増え、トルコリラが上昇する可能性が高いと指摘しました。
【参考記事】
●トルコ国民のドラライゼーションが話題に! ラマダン明けの祭りがトルコリラ上昇に寄与?(5月29日、エミン・ユルマズ)
実際に、その後、トルコリラは対米ドル・対円で大きく上昇しました。
(出所:Bloomberg)
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■原油価格の下落が、トルコリラ上昇の材料に
もうひとつ、トルコリラを上昇させた要因は原油価格の下落です。
4月にWTIで65ドルまで上昇していた原油価格は、5月に入ってから米中貿易交渉の決裂やグローバル経済の減速懸念で大きく落ち込み、足元で53ドル台まで下落しています。
(出所:Bloomberg)
以前から説明しているとおり、トルコリラと原油価格は逆の関係にあり、原油価格の下落はトルコリラの上昇をもたらします。
【参考記事】
●トルコ中銀のトルコリラ相場予想は楽観的?原油上昇はトルコリラにとって悪材料(4月24日、エミン・ユルマズ)
それは、トルコの経常赤字の中身がほとんど原油で、原油価格の動きによって経常赤字が変化するからです。
6月3日(月)に、5月のトルコCPI(消費者物価指数)が公表されました。
5月は前月比でプラス0.95%となり、年初から上昇は4.99%になりました。前年同月比で見た場合、CPIはプラス18.71%、直近12カ月平均で19.91%になりました。
(出所:Bloomberg)
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CPIは市場予想より低い数字でしたが、項目別で見ると、食品とノンアルコール飲料の年間インフレ率は28.44%となっていて、高インフレが国民生活を直撃しているのがわかります。
また、5月のPPI(生産者物価指数)はプラス2.67%となり、年間で28.71%と、引き続き、高いレベルにあるのは気になります。
(出所:Bloomberg)
■2つの大きな要因が、トルコリラを動かす!?
ラマダン明けの連休が終わる来週(6月10日~)以降のトルコリラの動きですが、2つの大きな要因に支配されると考えます。1つ目は、上記でも説明しているように原油価格です。
今月(6月)、大阪で行われるG20(20カ国・地域首脳会合)に向け、米中が歩み寄る可能性があり、また、G20における米中首脳会談実現の可能性も高いと考えます。
これにより、世界的なリスクオフムードが後退し、原油価格も上昇に転じるでしょう。
一方でイラン情勢については、不透明感が強いです。トランプ大統領の日本訪問で、米国は日本に仲介を頼んでいますが、もし、安倍総理の仲介が成功して米国とイランのテンションが下がれば、原油価格もあまり上昇せず、50ドル近辺で推移するでしょう。
ただし、イラン情勢が落ち着くには、いろいろとハードルが高く、また、トランプ大統領が呼び掛けてもOPEC(石油輸出国機構)は、簡単に生産調整に踏み切るとは考えにくいので、私のメインシナリオは原油価格が60ドルに戻ることです。
(出所:Bloomberg)
■S-400問題も、トルコリラの動きを決める要因に
もう1つ、トルコリラの動きを決めるのはS-400問題です。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領は、6月4日(火)に、S-400の購入計画を後退させることは不可能だと発言しましたが、おそらく本音は違うと考えます。
エルドアン大統領は先週(5月27日~)、トランプ大統領と電話会談をし、直後にトルコで3年近く拘束されていた米国籍のセルカン・ギョルゲ氏が釈放されました。
ギョルゲ氏は、NASAで働くトルコ出身の科学者で、2016年のクーデター未遂直後に里帰りしていた際に、逮捕された人物です。
【参考記事】
●クーデター騒ぎ勃発でトルコリラが急落! 急落でも問題なくスワップで儲ける手法(2016年7月16日)
昨年(2018年)、釈放されたブランソン牧師と違い、彼はトルコ国籍も保有していたので釈放まで時間がかかったと言われています。
【参考記事】
●ブランソン牧師釈放。経済制裁解除も近い!? トルコリラ/円は20円超えに向けて上昇中!(2018年10月17日、エミン・ユルマズ)
彼の釈放は、エルドアン政権が米国と関係改善しようとしている証であり、エルドアン大統領はG20でもトランプ大統領と会談する予定です。個人的には、S-400の購入はかなり遠のいたと考えます。
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