■FRBが利下げ示唆!? 株式市場は下落終了
5月のゴールデンウィーク後半に、トランプ大統領が中国へ関税を発動すると発言したことからリスク回避の動きとなり、さらに、メキシコへの関税発動を示唆する発言もあって、米国株は下落していました。
しかし、6月3日(月)にセントルイス連銀のブラード総裁が、「近い将来、利下げが適切になる可能性」があると発言しました。
さらに、翌日(4日)にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、「米国の景気拡大のため、適切に行動する」と発言しました。
明確に利下げを示唆したわけではないですが、金融市場は利下げを示唆したと受け取り、株式市場では、約1カ月続いた下落が止まりました。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円はギャップアップしたけれど…
さらに、週末(6月7日)には、トランプ大統領がメキシコ関税を無期限延期としたことで、6月10日(月)は、米ドル/円などがギャップアップで始まっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
過度な貿易戦争が回避されており、FRBは利下げ方向に向いていることから、これまでのリスク回避も一服しています。
【参考記事】
●6月に米利下げなら大きなサプライズ! 米ドル/円は109円台乗せで売っていいかも(6月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
ただ、米中の貿易戦争が重要で、こちらに関してはまだ進展がなく、来週(6月17日~)は公聴会、月末(6月28日~29日)にはG20(20か国・地域首脳会合)があります。関税第4弾が発動される可能性も残っていることから、積極的にリスクを取っていくような状況でもないと考えています。
■ユーロ/米ドルにはまだ上昇余地が!
6月6日(木)は、ECB(欧州中央銀行)理事会がありました。
政策金利の据え置き時期は、「2020年の上半期まで」と、前回までの「2019年末まで」から後退しました。
さらに、ドラギ総裁が会見で、「一部のメンバーは利下げの可能性を主張した」と発言したこともあり、ユーロは一時的に売られました。
(出所:TradingView)
ユーロ圏の景況感は良いとは言えず、イタリアの財政問題も燻っており、英国の合意なき離脱懸念もあって、ユーロを積極的に買っていける状況ではありません。
ただ、FRBの政策に関しては、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFEDウォッチによると、年内2回以上の利下げが、80%以上の確率まで上昇しています。
(出所:CME)
これまでユーロ/米ドルは、米国とユーロ圏の金利差もあって、底堅い展開が続いていましたが、金利差が小さくなる可能性が高まっています。
それもあって、ユーロ/米ドルは上昇する可能性が、まだ高いのではないかと考えています。
【参考記事】
●年内2回の米利下げ予想!? リスク回避から米ドル安に。ユーロ/米ドルは1.15ドルへ(6月4日、バカラ村)
●米利下げ、年内2回は織り込み済みか! 米ドル/円は107.75円を抜けると104円台へ(6月6日、西原宏一)
●市場の米利下げ織り込みは過剰すぎる! 当面は米ドル安・円高の揺り戻し相場か(6月6日、今井雅人)
■ユーロ/米ドルが上昇すると考える理由は?
ユーロ/米ドルは、1.1100~1.1260ドルのレンジを上に抜けてきており、米雇用統計が悪かったこともあって、1.1347ドルまで上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
IMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジションは、ユーロ売り越しが約8.8万枚と、まだ偏った状態です(6月4日時点)。
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
先週(6月3日~)後半もユーロは上昇したため、この偏りは減っているとは思いますが、まだ売りが多い状態です。
200日移動平均線が1.1360ドル付近に推移しているため、これが上値抵抗となりますが、悪材料があっても1.11ドルを下抜けなかったこと、FRBが利下げをする可能性が高いこと、投機筋のポジションが、まだユーロ売り越しに偏っていること、テクニカル的に上昇していることもあって、ユーロ/米ドルは、まだ上値余地があると考えています。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルは、まだ押し目買いで良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●年内2回の米利下げ予想!? リスク回避から米ドル安に。ユーロ/米ドルは1.15ドルへ(6月4日、バカラ村)
●買われやすい通貨と売られやすい通貨は? ユーロ/英ポンドが0.90ポンド台へ上昇中!?(5月28日、バカラ村)
■売られ過ぎの英ポンド/円は上がったところを売り!
英国では、6月7日(金)にメイ首相が辞任したことで、保守党の党首選が始まります。
これまで、EU(欧州連合)との離脱協議は、期限が到来しても延長を繰り返していましたが、次の期限である10月末に合意できなったとしても、延期せずに離脱すると表明している立候補者もいる状況です。
これは、合意なき離脱の可能性が高まっていることになります。
今の状況で、英ポンドを買うのはリスクが高く、上がれば、合意なき離脱に備えて売りが出てくるのではないかと思います。
英ポンド/円は、日足のオシレーター系指標が売られ過ぎとなっているため、一時的に下げ止まったと考えていますが、合意なき離脱の可能性が高まっていることもあって、買える状況でも無いと考えています。
(出所:TradingView)
売られ過ぎを示唆しているため、低いところで売るのはリスクが高いですが、上がったところで売りではないかと思います。
【参考記事】
●買われやすい通貨と売られやすい通貨は? ユーロ/英ポンドが0.90ポンド台へ上昇中!?(5月28日、バカラ村)
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