■イスタンブール市長再選挙は与党大敗…
6月23日(日)にトルコでイスタンブールの市長選挙のやり直しが実施されました。
最終結果によりますと、野党CHP(共和人民党)のエクレム・イマモール氏は54.2%の票を獲得し、勝利しました。与党AKP(公正発展党)の候補者であるビナリ・ユルドゥルム元首相は44.9%でした。
最初の選挙でわずか1万3000票だった差が、今回、80万票の大差に広がりました。両候補者の差が大きいことで開票後も混乱が起きず、ユルドゥルム元首相は早い段階で敗北宣言をし、選挙戦が無事に終了しました。
どの政党が勝利しても、平和に選挙を実施できるということが大事でしたので、トルコの民主主義が健在であることを全世界に示すことになった選挙でした。
イマモール氏がこんなに大差をつけて勝利した背景には、前回の選挙を無理にやり直しに持って行った与党の大きなミスがあります。
トルコ人は、被害を受けた者の味方をする国民性を持っています。エルドアン大統領が2002年に政権を取った背景にも、彼がイスタンブール市長時代に詩を唱えただけで逮捕され、被害者になったということがあります。
写真はエルドアン大統領。トルコ人は被害を受けた人の味方をする国民性があるので、与党が無理に再選挙に持って行ったことが大きなミスだったとエミンさんは指摘している (C)Anadolu Agency/Getty Images
似たような感情が、今回はイマモール氏の追い風になったと思います。
■エルドアン政権の求心力低下で政治に不透明感
選挙は無事に終わったものの、トルコ政治の今後の不透明性がさらに増す結果であることも事実です。
今回の選挙は、単なる一都市の市長選ではなく、政権に対する信任投票でもありました。
なぜならば、トルコの人口の約20%、経済活動の約30%はイスタンブールに集中しています。市長選挙のやり直しで大負けをしたことは現政権の求心力が急減していることを意味します。
ここまで弱体化した政権は、トルコ経済の最重要課題である構造的な改革を実施するのは難しいです。
トルコの国家予算の赤字は危機的なレベルに達している上に、いろいろな外交問題を抱えています。このまま政権を維持することは難しいので、1年以内に解散総選挙が行われる可能性が非常に高いと考えます。
元経済担当大臣のババジャン氏とギュル元大統領は、新しい中道右派の政党を立ち上げる準備をしています。
また、ダウトール元首相も別の政党を立ち上げるそうです。彼らはすべてAKPの幹部でしたが、エルドアン大統領と対立したため、政権から離れた人たちです。
■G20サミットでのS-400問題の進展が今後のカギに
トルコリラの見通しですが、与党の大敗北を受け、初期反応として上昇しましたが、短期的な動きで上昇が続きませんでした。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
選挙前の買い控えがあったので、その反動で少し上昇しただけで、投資家の注目はS-400問題に集まっています。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
●トルコ中銀は7月利下げの可能性高い! G20サミットでS-400問題に進展はあるか!?(6月13日、エミン・ユルマズ)
G20サミットでエルドアン大統領とトランプ大統領の首脳会談が行われる予定です。
S-400問題について進展が見られた場合、トルコリラは大幅に上昇する可能性があります。逆に、トルコがS-400の購入を諦めなかった場合、米国がトルコに経済制裁を科すのは間違いないので、トルコリラも大きく売られるでしょう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
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