■トルコ国債格下げでジャンク債の深みにはまる
前回のコラムで、フィッチ社のオンラインセミナーのことを書いて、フィッチはトルコ経済に対して悲観的であることを共有したたばかりですが、今度はムーディーズ社がトルコの信用格付けをBa3からB1に格下げ、見通しはネガティブを維持していると発表しました。
【参考記事】
●トルコ中銀は7月利下げの可能性高い! G20サミットでS-400問題に進展はあるか!?(6月13日、エミン・ユルマズ)
この格付けを受け、トルコはギリシャと並び、トルコ国債はジャンクテリトリーに深くはまってしまうことになりました。
ムーディーズは経常収支の悪化に伴い、トルコは外国からの資金調達への依存度が高まっていることを指摘しました。また、デフォルトリスクが高まっていると警戒を促しています。
個人的にはトルコのデフォルトリスクは低いと考えます。それは公的債務がGDPに占める割合が低いからです。しかし、いずれにせよトルコ経済の見通しが明るくないのは明らかです。
■トルコの鉱工業生産が不調
今週(6月17日~)発表されたトルコの鉱工業生産は4月に前月比で1%下落し、前年同月比で4%の下落となりました。鉱工業生産がマンスリーベースで下落に転じたのは、昨年(2018年)12月以来の出来事です。
(出所:Bloomberg)
実は、景気減速は独自なものではなく、欧州とシンクロしていると考えます。
ユーロゾーンの鉱工業生産指数も4月に0.5%下落しました。特に自動車セクターの落ち込みが激しく、その影響を直で受けるのはトルコの製造業です。
(出所:Bloomberg)
あまり知られていませんが、トルコの最大輸出品目は自動車です。独自ブランドはないものの欧州メーカーをはじめ、グローバル自動車メーカーの工場や部品メーカーの工場が、トルコにたくさんあります。
■トルコリラが固定相場制に戻る可能性がある?
今週(6月17日~)もうひとつ気になったニュースは、トルコ与党同盟の小さい方の政党MHP(民族主義者行動党)のバフチェリ党首が、「トルコは為替制度を変えるべきだ」と発言したことです。
詳細の説明はありませんでしたが、おそらく彼は、変動相場制から固定相場制への移行を要求しているのではないかと思います。この発言を受け、トルコリラは売られました。
技術的な問題もあるし、最大与党のAKP(公正発展党)がこの案に賛成するのは難しいので、すぐに為替制度が変わるとは考えにくいです。
しかし、景気悪化と通貨の下落に歯止めがかからない場合、固定相場制に戻して通貨の大幅切り下げを行い、景気にリセットかけようとする可能性はあります。これは固定相場制が採用されていた時代に、よくやったやり方です。
■やり直しのイスタンブール市長選結果に注目
トルコリラの見通しですが、投資家の注目は、日曜日(6月23日)に再度行われるイスタンブール市長選挙に集まっています。
【参考記事】
●トルコ中銀は7月利下げの可能性高い! G20サミットでS-400問題に進展はあるか!?(6月13日、エミン・ユルマズ)
●イスタンブール市長選挙、やり直し決定!トルコリラは大幅下落! 再選挙の行方は…(5月8日、エミン・ユルマズ)
原油価格が大きく上昇していないことと、ECB(欧州中央銀行)による利下げの可能性が高まったことでトルコリラも底堅く推移しています。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
しかし、イスタンブール市長選挙の結果によって、また大きく動く可能性もあるので要注意です。
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