■トルコ中銀は政策金利を据え置き
トルコ中銀は昨日(6月12日)行われた政策会合で政策金利を24%に据え置くことを決定しました。据え置きは市場コンセンサスであったため為替に大きな影響は出ませんでした。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
私も据え置きを予想していましたが、トルコ中銀の声明文の中身が気になっていました。
昨日(6月12日)に公表された声明文は、前回の声明文に比べ引き締め姿勢がトーンダウンしていることが明らかで非常に興味深かったです。
たとえば、前回は「輸入コストとインフレ期待の高さが物価安定に対するリスクを増大させている」という説明がありましたが、今回は「金融引き締めがインフレの低下を下支えしている」と説明されています。
また、前回使われた「インフレ見通しにおいて目に見える形での健全化が実現するまで引き締めを続ける」という文書が消え、「インフレの低下を加速させるために引き締め姿勢を維持」という文書が入っています。
■7月の政策会合で利下げの可能性高い
トルコ語の原文から和訳しているので日本の皆さんには伝わりづらいと思いますが、これらは明らかなトーンダウンを示唆していて、7月25日(木)に行われる次の政策会合で利下げが行われる可能性が高いと考えます。
【参考記事】
●トルコ中銀は、政策金利を28%にすべき! トルコリラ安定には早期の利上げが必要(5月15日、エミン・ユルマズ)
今回はイスタンブール市長選挙の再選挙の10日前であり、トルコ中銀はいずれにせよ利下げができなかったと考えます。
このタイミングでの利下げがトルコリラの急落を招き、選挙戦に影響が出る可能性があったからです。しかし、足元のインフレ率の低下によってトルコの実質金利は10%を超えていて、本来であれば利下げに踏み切らないといけないレベルです。
(出所:Bloomberg)
■2021年まで本格的な景気回復は難しいか
今週(6月10日~)フィッチ社がトルコ経済をテーマにしたオンラインセミナーを開催していました。
フィッチ社は、2019年の第二四半期のGDPもネガティブになると考えているようで、2019年通期でマイナス1.1%のGDP成長率を予想しています。
また、来年(2020年)についても相当弱気の見通しで、2021年まで本格的な景気回復は難しいと考えているようです。
直近ではトルコの景気後退が長引くのではないかとの見方はトルコ国内でも広がっています。トルコ政府もこれを認知しているようで、色々な景気刺激策を準備し始めました。また、クレジットカードの規制など貸出規制も緩和の方向に動いています。
昨日(6月12日)、クレジットカードの分割払いは家具購入においては12カ月から18カ月に、テレビを除く電気製品では3カ月から6カ月に、3500リラを超えないテレビ購入の場合に9カ月から12カ月に延長できるようになりました。
クレジットカード債務は社会問題になっていたため、政府は数年前からクレジットカードの分割払いの回数を制限していましたが、景気後退を受け規制緩和の方向に動き出したようです。
■G20でS-400問題に進展なければトルコリラ売り要因に
今後のトルコリラですが、イスタンブール市長選挙まで大きな動きはなく底堅く推移すると考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
原油価格が足元で大きく下落していることが、トルコリラを下支えしています。
(出所:Bloomberg)
S-400問題もG20サミットでのエルドアン・トランプ首脳会談への期待があり、現時点でトルコリラの売り材料になっていません。
【参考記事】
●トルコリラ上昇の裏に「祭り」と「原油」の影!? 今後の動向を支配する2つの要因とは?(6月5日、エミン・ユルマズ)
しかし、この問題でトルコに与えられている期間はあまり長くないので、G20でなんからの進展がない限り、7月にトルコリラの売り要因になる可能性が高いと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
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