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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米中首脳会談後、米ドル/円は下落再開へ。
依然として、100円に向けた下落過程にあり

2019年06月27日(木)17:27公開 (2019年06月27日(木)17:27更新)
西原宏一

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■FRBの年3回利下げ予測には違和感

 みなさん、こんにちは。

 先週(6月17日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利下げへの道筋がより明確になったことを背景に、米ドル/円は続落。

 ブルームバーグによると、次回のFOMC(7月30日~31日)での0.25%の利下げの織り込み度は100%。0.50%の利下げ織り込み度は、一時38%まで上昇していました。

前回のコラムでも触れましたが、米国の景気が良好で、米国株が史上最高値圏近くで推移している環境であるにも関わらず、(予防的措置として?)来月(7月)の0.25%の利下げ、年末までに3回もの利下げが行われると予測することに、個人的には違和感を持ったままです。

【参考記事】
7月FOMCの利下げ織り込み度は100%。米国債利回り低下でドル/円は下落継続!(6月20日、西原宏一)

■米ドル/円は107円割れで下げ止まる

 ただ、そうした予測は根強く、米国株は続伸。

 米国株はおしなべて、史上最高値近辺まで急伸しました。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:Bloomberg)

 一方、米金利の低下で米ドル/円も続落。

 米ドル/円は久しぶりに107.00円を割り込み、一時106.78円まで下落

 ただ、米ドル/円の107.00円レベルは(1月3日のフラッシュ・クラッシュによる瞬間的な104.87円までの急落を除くと)、今年(2019年)のほぼ安値圏となります。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

 そのため、この107.00円がテクニカル的に非常に重要なサポートとなります。

 その重要なサポートレベルである107.00円レベルでは、本邦機関投資家の米ドル買いが断続的に持ち込まれたこともあり、米ドル/円は下げ止まり。

 加えて、マーケット参加者の懸念を代弁するかのようにセントルイス連銀のブラード総裁が、「FRBが7月に利下げする確率が高まったとするも、0.50%は行き過ぎだ」と指摘。

 このブラード総裁のコメントをきっかけに米金利先物市場での来月(7月)の0.50%の利下げ織り込み度は、38%から一気に20%に急低下。これにより、米ドル/円は107円台ミドルを回復しました。

 一方、ムニューシン米財務長官は、米中の合意まで約90%のところまできていたと強調。さらにロス商務長官も、通商協議の再開に期待を示した模様。

米中の合意まで約90%のところできていたと、ムニューシン米財務長官は強調。G20サミットでの米中首脳会談の行方は… (C)Bloomberg/Getty Images

米中の合意まで約90%のところまできていたと、ムニューシン米財務長官は強調。G20サミットでの米中首脳会談の行方は… (C)Bloomberg/Getty Images

 こうした米高官からの一連のコメントにより、米ドル/円は108円台を回復。本邦執筆時点では、一時108.12円まで反発しています。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足

■G20サミットでの米中首脳会談に注目

 一方、トランプ大統領は、G20サミットでの習近平主席との会談後に貿易合意に関して進展がない場合、中国製品に「大規模な追加関税」を課すとコメント。

 ロス商務長官は、トランプ大統領による追加関税の警告は「はったりではない」と念を押しています。

 また、中国に対してプランB(次善の策)があるとも語り、「月間ベースで巨額のお金を収集し、中国とのビジネスを徐々に減らすものだ」と説明。為替については、中国は「ピンポン玉のように通貨安に誘導している」と訴えた模様です。

 こうしたコメントから推測すると、「米国と中国が合意せず、米国が追加関税をかける」という可能性も残ります。

 さらに「米中が協議を続ける」というだけで、なんら具体性がなければ、来週(7月1日~)、株価が反落する可能性も高まってきます

■米中が合意しても米国株にはネガティブか

 こうした流れの中、仮に「米中がめでたく合意した」とすると、株は続伸する公算が高いのですが、その場合、次回のFOMC(7月30日~31日)の利下げはどうなるのでしょう?

 マーケットがすでに利下げを織り込んでいるわけですから、利下げしないと株の反落を招くため、0.25%だけ利下げしたとします。

 しかし、株が史上最高値をさらに更新していると想定すると、年内にさらに2回の利下げをするという予測は大きく後退すると思われます。

 これは、米国株にとってネガティブ。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:Bloomberg)

 違う見方をすれば、米中が合意せず、ただこれからも緊密に協議するという結論に終わり、株がいったん調整したほうがFRB(米連邦準備制度理事会)は連続利下げをしやすいとも言えます。

■米ドル/円は100円に向けての下落過程

 この点に関しては、米大手投資銀行のモルガン・スタンレーのストラテジストも、経済データの悪化が続いた場合、S&P500は第3四半期に10%下落して調整局面入りする可能性が高いと指摘。

 米中の貿易戦争がG20サミットで休戦となれば、株はいったん押し上げられる可能性はあるものの、景気減速を止めるには、米金融緩和でも不十分だとコメントしているようです。

 こうした背景からすれば、米中首脳会談を控えた今週(6月24日~)のマーケットがショートカバーで米ドル買い戻しに走って、米ドル/円が108円台まで戻している現在の局面は、米ドル/円のいい売り場を提供しているとも言えるかもしれません。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足

 米中貿易戦争がG20サミットで休戦となり、株がいったん押し上げられる可能性はあるものの、米国の景気減速を止めるには、米金融緩和でも不十分であるという見方も増えている中、米ドル/円の上値は限定的。

依然として104円台、さらには100円への下落過程にある米ドル/円の行方に注目です。


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