■トルコの銀行セクターが抱える債券が問題に…
今週(7月15日~)のトルコ情勢は話題が盛りだくさんですが、残念ながらポジティブなニュースは少ないです。
まず、トルコ政府は先週(7月8日~)、4000億リラ(約7兆5千億円)の民間債務の整理案を発表しました。これらはトルコの銀行セクターが抱えている債券ですが、そのうち1000億リラは完全に不良債権化した回収困難なものです。
残りの3000億リラのおおよそ半分近くも、実質、回収は難しいとされていますが、まだ不良債権と認定されていません。
4000億リラのうちの3700億リラは、トルコの預かり資産ベースでトップ10を形成する、10の銀行のバランスシートに載っていますが、これらの銀行の自己資本の合計は3500億リラなので、銀行が自らこの問題を解決できないことは明らかです。
2001年の銀行危機でもあったように、トルコ政府から銀行セクターに資本注入をする必要があります。
■トルコ政府がS-400のトルコ到着を正式発表
そんな中、格付け機関のフィッチは7月12日(金)にトルコの信用格付けを「BB」から「BB-」に格下げしました。
フィッチの判断に、先週(7月8日~)のトルコ中銀総裁の更迭が大きな影響を与えたとされていますが、もっと重要な理由はトルコ政府と米国の対立ではないかと考えます。
【参考記事】
●トルコ中銀総裁解任の本当の理由とは? S-400問題で米国の制裁はほぼ確実!(7月10日、エミン・ユルマズ)
G20大阪サミットでの会談で握手をするエルドアン大統領とトランプ大統領。エミンさんは、フィッチがトルコの信用格付けを引き下げた重要な理由として、トルコ政府と米国の対立をあげている(C)Anadolu Agency/Getty Images
フィッチの格下げと同じ日(7月12日)に、ロシアのミサイルシステムS-400がトルコに届いたことがトルコ政府から正式発表されました。
国内外の投資家は、民間セクターの債務が大問題になっている中、欧米と対立することによってトルコの資金調達が困難になるのではないかと懸念しています。それが、今回のフィッチの格付けにつながった可能性が高いです。
■トルコ中銀と国営銀行は、なりふり構わず為替介入を実施
トルコリラの方ですが、S-400が届いたとのニュースにも大きく反応せず、底堅く推移しています。
前回のコラムでも書いたように、トルコ中銀と国営銀行は、なりふり構わず為替介入を行っているので、トルコリラは現時点で安定しています。
【参考記事】
●トルコ中銀総裁解任の本当の理由とは? S-400問題で米国の制裁はほぼ確実!(7月10日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
S-400の到着発表を受け、米国防総省(ペンタゴン)は、7月12日(金)に記者会見を行う予定でしたが、会見は直前で中止になりました。
また、7月15日(月)に予定されていた記者会見も中止されました。ペンタゴンの記者会見の2回の中止と米国がまだトルコに対する制裁を発表していないことを踏まえると、トルコと米国の交渉はまだ続いている可能性が高いと考えます。
エルドアン大統領も、S-400が稼働するのは1年後になると話しています。この1年間を交渉期間にしたいという狙いがあるのかもしれません。
■米国側のトルコに対する制裁措置とは?
米国側はトルコに対する制裁措置を準備していて、今週(7月15日~)中に発表するとしていますが、交渉の進展によって制裁内容は軽微なものになる可能性もあります。
その場合、トルコリラへの影響は限定的になるでしょう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
実は、直接の制裁ではありませんが、米議会はトルコが対立しているキプロス(南サイド)への軍事機器の輸出制限を解除しました。キプロス問題でEU(欧州連合)とも対立しているトルコは強力な味方を失ったことになります。
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