■パウエルFRB議長の「余計な一言」でNYダウ崩壊
先週(7月29日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)は予想どおり25bp(0.25%)の利下げでしたが、余計だったのはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言。
「足元の利下げは必ずしも緩和サイクルの開始を意味しない」と話したことで米株が下落。NYダウは節目の2万7000ドルを割り込みました。
パウエルFRB議長は7月31日(水)、FOMC後の記者会見で「足元の利下げは必ずしも緩和サイクルの開始を意味しない」と発言した。この発言を受けて米株は下落する展開に… (C)Bloomberg/Getty Images News
何度も言及してきた節目の2万7000ドルを割ったことでNYダウはブルトラップとなり、高値をつけた可能性が高まりました。
米株は史上最高値を更新するものの、日本株や中国株など他市場は高値を更新できずに市場間ダイバージェンスとなっていましたが、先週(7月29日~)の下落で米株が間違えていたことが証明された形です。
パウエル議長の余計な一言はあったものの、市場は連続利下げを期待しており、9月利下げの織り込みは80%を超えています。
【参考記事】
●NYダウがブルトラップに!? 米株反落は今週始まるかも…本格的な米ドル安も到来か?(7月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
FOMC翌日にはトランプ米大統領が9月1日(日)からの対中関税第4弾発動をツイート。これが効いてリスクオフに拍車がかかっています。
【参考記事】
●深夜にトランプ砲炸裂! 直前に公開した為替ディーラーの予見が当たり過ぎて神ってた
●米ドル/円波乱の最大の要因は? トランプ氏の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!(8月2日、陳満咲杜)
トランプ米大統領は先月から「中国に失望した。米農産物を買うと言っておきながら買わない」「時間稼ぎをするな」と中国への非難を強めていましたから、そろそろ動きがあるだろうとは思っていましたが、想定よりも早かった印象です。
■米ドル高、円高、中国人民元安、ビットコイン高
米ドル/中国人民元も今朝、節目の7.00元を突破し、中国人民元安が進んでいます。
このレベルを超えてくると、中国からの資本流出が加速する可能性が高まりますし、歩調を合わせるかのようにビットコインも上昇しています。
中国政府の介入もありそうですね。
【参考記事】
●みんなまだ知らない中国人民元の謎に迫る! 第1回 米中貿易戦争激化で大儲けする方法
●みんなまだ知らない中国人民元の謎に迫る! 第2回 スワップは高い? レートは5割安い!?
●深夜にトランプ砲炸裂! 直前に公開した為替ディーラーの予見が当たり過ぎて神ってた
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 4時間足)
アジア通貨では日本の「ホワイト国」リストから除外された韓国ウォンも下落しています。米ドル/韓国ウォンは1200ウォン台へ乗せてきました。
円買い・韓国ウォン売りはモルガン・スタンレーが推奨していたトレードです。
(出所:Bloomberg)
今週(8月5日~)は8月6日(火)にRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])、8月7日(水)にRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の政策金利発表が控えています。
RBAは据え置き、RBNZは利下げというのがコンセンサスですね。
RBAは今回こそ据え置きですが、年内もう1回は利下げするのでしょう。
8月7日(水)にはインド中銀の会合もあり、これも利下げが見込まれています。
■米ドル/円は年初来安値104.87円更新が視野に
米長期金利も1.8%割れまで落ちてきましたし、主要国の金利が軒並み低下する中、緩和余地の乏しい円が買われるのは当然ですね。
米ドル/円は105円台まで下げてきて、1月のフラッシュ・クラッシュ安値104.87円も視野に入ってきました。
【参考記事】
●FOMC前までレンジ相場か。でも、今後は円高圧力がかかりやすい。そのワケとは?(7月19日、今井雅人)
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
(出所:Bloomberg)
104円から105円の水準では一度止まるのでしょうが、110円台への回復は当面難しそうです。
米ドル/円についてはむしろ、「ここまでよく持ちこたえた」という印象。
NYダウの強さが下支えになったのでしょうし、落ちそうなタイミングで日本企業のM&AやGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の買いが入ったことも支えとなりました。
しかし、GPIFが為替ヘッジを行うとの報道が出て、米利下げ、対中関税第4弾と重なったことで決壊した形です。
【参考記事】
●ハト派なECB。GPIF動けばユーロ/円下落!? いろいろあるが、何はともあれFOMCに注目!(7月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)
●深夜にトランプ砲炸裂! 直前に公開した為替ディーラーの予見が当たり過ぎて神ってた
●米ドル/円波乱の最大の要因は? トランプ氏の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!(8月2日、陳満咲杜)
■英ポンド売りの材料そろう
円ロングにするには最適な環境ですね。
円高がトレンドとなりつつありますし、米ドルと逆相関になりやすいゴールドも7月の高値を超えてきました。
米ドル/円の戻り売りでしょうか?
(出所:Bloomberg)
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足もとの相場は米ドル高・円高となっていますので、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の売りがいいでしょう。
注目は英ポンドです。
ボリス・ジョンソン氏の首相就任でノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)の可能性が高まり、またノーディールに備えた予算を倍増しています。
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])も次の動きが利上げどころか、利下げとなる可能性が出てきました。
【参考記事】
●ボリス・ジョンソン氏が英首相に就任。英国の合意なきEU離脱懸念が高まる!(7月25日、西原宏一)
●新英首相ボリス・ジョンソンってどんな人? 合意なき離脱を呼ぶ!? ナルシストの正体!(7月30日、松崎美子)
●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)
IMM(国際通貨先物市場)を見ると英ポンド売りが9万枚まで積み上がっています。巻き戻しが入る可能性はありませんか?
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
たしかに日足ベースでは調整を示唆するチャートとはなっています。
ただ、これだけ材料がそろうと、調整による上昇はあっても、本格的に上がるのは難しいでしょう。
今週も英ポンド/円の戻りを売っていきたいと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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