■トルコ中銀は政策金利を3.25%引き下げ
先週(9月9日~)、12日(木)に行われた政策会合で、トルコ中銀は政策金利を3.25%引き下げ、16.50%に設定しました。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
先週のコラムでトルコ中銀は、利下げ幅を無難に3.5%以下に抑える可能性が高いと指摘しましたが、まさにその通りの動きでした。
【参考記事】
●9月トルコ中銀会合での利下げ、ほぼ確実。5%の利下げ検討との報道もあるが…?(9月11日、エミン・ユルマズ)
エルドアン政権寄りのトルコメディアが、直前に5%の利下げと報道していたこともあり、利下げ幅はポジティブサプライズとして働きましたので、利下げ後にトルコリラは下がらず、上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
しかし、以前から指摘しているように、トルコは政策金利変更の影響がすぐには出ません。為替レートへの影響が表れるまで時間を要するので、利下げで上がったと判断するにはまだ早いです。
【参考記事】
●トルコ中銀が4.25%の大幅利下げを実施!でも、トルコリラが上昇しているワケとは?(7月31日、エミン・ユルマズ)
■サウジ石油施設攻撃による原油高もトルコリラに影響
トルコリラに影響を与える、もうひとつの重要な出来事は週末に起きました。サウジアラビアの石油施設がイエメンのシーア派勢力、フーシからドローン攻撃を受け、1日の生産能力の半分を失うことになりました。これは世界の原油生産の5%に相当します。
【参考記事】
●サウジ石油施設攻撃は「自作自演」も!? 供給障害の原油高はリスクオフ要因に…(9月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
イエメンのシーア派勢力は、イランが軍事支援していて、サウジアラビアの施設を攻撃したドローンもイラン製でした。
この攻撃を受け、原油の供給問題に加え、ボルトン補佐官解任後に期待されていた米国とイランの緊張緩和期待も遠のいたため、原油価格は大きく跳ね上がり、ブレントで70ドル台に乗せる場面がありました。
【参考記事】
●ボルトン氏解任、対中関税引き上げ延期でリスクオン! でも、この相場が続くか疑問(9月12日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
昨日(9月17日)は、サウジアラビアの石油施設の生産能力が70%を回復したことが伝わりましたので、原油価格が下落に転じました。しかし、中東情勢の不透明感が増しているので、原油価格の乱高下は、しばらく続くと考えます。
■原油とトルコリラは逆相関の関係にある
原油価格とトルコリラの間に、どんな関係があるのでしょうか?
トルコは万年経常赤字国であり、経常赤字の中身も、ほとんどエネルギーです。そのため、トルコリラと原油価格の間には逆相関関係があります。
【参考記事】
●原油価格の反発がトルコの懸念材料に…。トルコリラ/円の22円超えは難しいのか?(1月23日、エミン・ユルマズ)
●トルコ中銀のトルコリラ相場予想は楽観的? 原油上昇はトルコリラにとって悪材料(4月24日、エミン・ユルマズ)
※通常は「米ドル/トルコリラ」ですが、原油との逆相関をわかりやすくするため、「トルコリラ/米ドル」のチャートを掲載しています。
(出所:Bloomberg)
つまり、原油価格の上昇がトルコリラの下落要因となります。しかし、原油価格の影響がフルでトルコリラに現れるまで、2~3週間のタイムラグがあります。
原油価格の上昇トレンドが継続すれば、下落傾向にあったトルコのCPI(消費者物価指数)が押し上げられ、トルコリラの売り圧力となります。
(出所:Bloomberg)
一方で、トルコリラ投資家にとってポジティブなことがあるとすれば、この動きを受けて、トルコ中銀の年内のさらなる利下げ可能性が低くなったことでしょう。
地政学リスクが高まっている中で、トルコ中銀はさすがに積極的な利下げを続けられないでしょう。
■地政学リスクを考慮し、トルコリラは慎重なスタンス維持
今週(9月16日~)のトルコリラは、中東情勢の悪化を受けて下落に転じ、対円で19円を割りました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
S-400ミサイルの第二バッテリーも、週末、ロシアから届いており、こちらもネガティブニュースとして影響した可能性があります。
10月から観光シーズンが終わり、トルコの外貨需要が再び高まります。また、冬に向かってエネルギー需要も増加します。
中東における地政学リスクの高まりも考慮して、引き続き、トルコリラについては慎重なスタンスを維持しています。
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