■米中が「第1弾の合意」。市場には安心感
市場参加者が注目している材料は、米中の通商交渉とブレグジット(英国のEU離脱)問題ですが、10月10日(木)~11日(金)には、米中閣僚級協議がありました。
米中閣僚級協議前までは、11日(金)に劉・中国副首相が早期の帰国をするのではないかという報道や、米政権が中国当局者のビザ発給に制限をかけることを発表したりと、米中の協議がうまくいかないのではないか、というような雰囲気になっていました。
しかし、中国が400億ドル~500億ドル規模の農作物を購入することとなり、10月15日(火)の追加関税に関しては先延ばしとなりました。「第1弾の合意」となったことで、市場もひとまず安心した状態となっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
米中の対立は、終わったわけではないですが、「部分合意を望まず」と発言していたトランプ大統領が、第1弾の合意という表現を使ってでも歩み寄っていることもあって、しばらくは悲観的な状況にはなりにくいのではないかと思います。
【参考記事】
●米中が部分合意へ!? トランプ大統領が米中貿易摩擦のヤバさに気づいた!?(10月11日、今井雅人)
●米中閣僚級貿易協議の行方に注目! もし決裂なら、リスクオフ相場到来か?(10月10日、西原宏一)
■FRBが量的緩和を開始!? 為替はリスク選好か
FRB(米連邦準備制度理事会)は、10月15日(火)から月額600億ドル相当のTビル(米財務省短期証券)購入を開始すると発表しました。
これは、短期金融市場を落ち着かせるための行動です。
パウエルFRB議長は量的緩和ではなく、バランスシートの拡大だと発言していますが、実質的には量的緩和だと言えます。
量的緩和であれば、株式市場にとってプラスの材料です。米中の対立もいったん落ち着いていることもあり、米国株は上昇しやすい状況だと思います。
(出所:Bloomberg)
米国経済の減速懸念もありますが、各国中銀が緩和方向を向いているのであれば、高いところでは買えなくても、底堅い推移は続くのではないかと思います。
そうであれば、為替市場はリスク選好になりやすいのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■オセアニア通貨の弱気見通しを取り下げ
これまでの米中の対立で中国の景気は減速し、オセアニア通貨が売られています。IMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジションも、売り越しに偏った状態です。
※CFTCのデータをもとにザイFX!が作成
※CFTCのデータをもとにザイFX!が作成
RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])には、まだ利下げ観測もあるため、豪ドルは上がれば売られることになると思いますが、下がったところは買い戻しが入りやすいのではないかと考えています。
(出所:TradingView)
年末に向けてポジション調整も重なれば、オセアニア通貨が上昇する可能性も出てくるのではないかと考えています。
まだ、テクニカル的には買いたいと思えるような形ではないですが、これまでの売り目線を、いったんフラットに切り替えています。
■離脱期限迫る中、英ポンドが連騰
ブレグジット問題の方は、10月8日(火)にジョンソン英首相がメルケル独首相と会談をしましたが、「EU(欧州連合)離脱合意は本質的に不可能だ」と報じられたこともあって、10月末に向けて合意するのは厳しいかと思われていました。
しかし、アイルランドのバラッカー首相が「合意の道筋が見える」と発言し、さらに、バルニエ首席交渉官が「十分な進展があった」と発言したことも重なり、英ポンドは2日連続で急騰しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
まだ本当に合意できるのか、不透明な部分が多過ぎますが、これまで売られていたポジションもあるため、それらが買い戻されているような状況です。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルにテクニカル的な下落余地。10月の英ポンドは乱高下しやすい!?(10月1日、バカラ村)
●英ポンドは目先調整も、押し目買い方針。今は市場が動意づくまで待つしかないか(9月24日、バカラ村)
■合意なら1.30ドル、合意なき離脱なら1.15ドル
10月15日(火)にはEU総務理事会があり、17日(木)~18日(金)はEU首脳会談があります。
ここで合意できたとしても、英国議会で批准する必要があり、合意に向けてはまだ遠く感じますが、これまでの状況と比べると、楽観的な状況にはなりつつあります。
合意することができれば、英ポンド/米ドルは1.30ドル辺りまで上昇するのではないかと考えていますが、もし合意なき離脱となれば、1.15ドルへ急落することになります。
(出所:TradingView)
合意できなかった場合、ジョンソン首相が離脱延期法を遵守して、2020年1月末までの離脱期間延期を申請すれば、先週(10月7日~)、合意期待で買われた分が手仕舞いされるため、その場合も下落することになります。
【参考記事】
●混迷のブレグジット…。短期再開となった英議会でボリス首相が喫した6連敗とは?(9月12日、松崎美子)
●英ポンドは買いか? 売りか? 「合意なき離脱」の可能性は本当にない!?(9月13日、松崎美子)
●合意ある英国のEU離脱は実現するのか? 英ポンド/米ドルの押し目買いに妙味アリ!(10月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
「合意あり」「合意なし」「離脱延期」と、目先はこれらが考えられます。合意なき離脱になる可能性は低いままだと考えていますが、合意する可能性がここにきて上がってきていることもあって、英ポンドが上昇する可能性も考えたいところです。
今月(10月)は英ポンドに注目ですが、オセアニア通貨の買い戻しも念頭に入れたいと考えています。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)