■トルコがNATO加盟を継続するかが焦点に
12月3日(火)と4日(水)は、NATO(北大西洋条約機構)設立の70周年記念で、NATO加盟国の首脳はロンドンに集まっていますが、もっとも注目されている国はトルコです。
トルコが、今後もNATO加盟国として継続するかどうかが問われる局面にきているからです。
その理由は、エルドアン政権が2016年のクーデター未遂以降、ロシアに急接近し、ロシアからミサイルシステムを購入したからです。
【参考記事】
●東ローマ帝国滅亡からクーデター失敗まで! トルコリラ急落の今、トルコの歴史を振り返る
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
直近では、トルコがロシア製の戦闘機の購入まで真剣に検討していることが報道され、NATOの反発を生んでいます。
トルコはロシア製の戦闘機の購入を真剣に考えていると報じられている。これも、NATOの反発を生んでいるという。写真は2018年8月に撮影されたもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
これらに加え、トルコはポーランドとバルチック諸国の防衛計画にダメ出しをしたことで、トルコとNATOの対立が深まっています。
NATOの防衛計画は、加盟国29カ国がすべて賛成しないと成立しません。トルコは、NATOがシリア北部のクルド勢力をテロ組織に認定し、クルド勢力との戦いでトルコを支援すべきと訴えています。
一方で、NATO諸国はシリアのクルド勢力をISIS(イラク・シリア・イスラム国)と戦う貴重な同盟勢力と考えているため、トルコと認識が一致しません。
■設立70周年でNATOは存亡の危機に?
先週(11月25日~)、NATOとトルコの対立を深めるもうひとつの出来事も起きました。
それは、トルコとリビア政府による、両国の地中海における海域を決める合意でした。
両国が主張しているトルコ南西部からリビアの北東部を結ぶ大きなエリアについては、ギリシャとキプロスも自国の海域だと主張しています。
東地中海は天然ガス油田をめぐって周辺国の対立が深まっていて、EU(欧州連合)加盟国ではないトルコとギリシャの対立は当然ながら、EUとトルコの対立も生んでしまっています。
もちろん、NATOやEUの問題はトルコだけではありません。トランプ大統領は就任以来、NATOの現体制を猛烈に批判していて、米国は、欧州がロシアに攻撃された時に助けに行かないとまで言ってしまいました。
トランプ大統領はどこまで真剣かわかりませんが、米国なしのNATOはあり得ないわけで、設立70周年でNATOは存亡の危機に直面しているといっても過言ではありません。
先日、フランスのマクロン大統領が、「NATOは脳死している」といったのもこのためです。
トランプ大統領は就任以来、NATOの現体制を猛烈に批判。エミンさんいわく、設立70周年でNATOは存亡の危機に直面しているといっても過言ではないという (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
■来週の政策会合でトルコ中銀は再び利下げか?
今週(12月2日~)のトルコリラは大きな動きがなく、先週(11月25日~)、S-400のテスト開始が報道されて以来、19円を割り込んだままの狭いレンジで推移しています。
(出所:TradingView)
トランプ大統領は、12月3日(火)に記者団に対して、トルコへの制裁を検討していることを明らかにしましたが、トルコリラはこのニュースにもほとんど反応しませんでした。
また、昨日(12月3日)発表された11月のCPI(消費者物価指数)は前月比で0.38%増となり、年間ベースで10.56%になりました。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
アルバイラク財務大臣は、今年(2019年)通期でインフレ率を12%以下に抑えることが可能になったと演説していて、引き続き、政府としてはインフレ抑制策を実施するとのことです。
個人的には、CPIの下落を受け、来週(12月9日~)、12日(木)に予定されているトルコ中銀の政策会合で、再び利下げが行われる可能性が高くなったと考えます。
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