■強い米雇用統計でも米ドル/円が失速したワケは?
12月12日(木)の英総選挙、12月15日(日)の米国による対中関税第4弾の発動――今年(2019)最後のヤマ場ですね。
ここまでの流れを確認すると、先週(12月2日~)の米雇用統計は文句のつけようがないほど強い数字でした。
ところが、米ドル/円はいったん上昇したものの、下落しています。なぜですか?
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
(出所:TradingView)
北朝鮮が不穏な動きを見せている影響を指摘する声もありますが、それにしては株が強い。
109.00円に設定された36億ドルのオプションが米ドル/円の上昇を阻んだのだと思います。
12月10日(火)が期限なので、それまでは109.00円を超えても叩かれやすい。109.00円を抜けても10銭、20銭程度で反落する可能性が高いと思います。
(出所:TradingView)
先週(12月2日~)、日本政府は26兆円の経済対策を決定しました。これは日本株をもう一段、押し上げる要因となりますか?
このニュースが出ても、日経平均は「幻のSQ(※)」となった11月のSQ値2万3637円を超えられませんでしたし、2万4000円を超えてこないと上値は重いのでしょう。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
(出所:Bloomberg)
経済対策にしても、「真水」の部分は4、5兆円程度。例年並みの金額ですから、個別株はともかくマクロ的なインパクトはなさそうですね。
■英総選挙、12月13日昼前には大勢判明へ
株式市場の次の焦点は、米中。12月15日(日)に米国の中国に対する第4弾の関税が発動されるかどうか、です。
発動が回避されなければ、株安につながるとの声が多いですね。
市場は発動回避を織り込んでいましたら、発動されればインパクトはありますね。
12月15日(日)までに結論は出るのでしょうが、12月12日(木)、13日(金)あたりに結論が出るとややこしい。
というのも、英総選挙の投票日が12月12日(木)ですから、2つの大きなテーマが混在することになってしまいます。
【参考記事】
●ドル/円、バリア突破が110円到達のカギ!? 英総選挙に向けて、英ポンドは1.30ドルへ(12月2日、西原宏一&大橋ひろこ)
●どうなる? 12月12日英総選挙。6つの予想シナリオから英ポンドの動きを大予測!(12月6日、松崎美子)
英総選挙では、保守党優勢の世論調査が出ています。
12月13日(木)の朝方には出口調査の発表が始まり、お昼頃までには大勢が判明する見通しです。
保守党勝利を前提とすれば、重要なのは12月13日(木)までの値動き。
英ポンド/米ドルが現在の1.31ドル台でジリジリしていれば「保守党勝利」の一報で急騰する可能性があるし、12月13日(木)に向かって200pips、300pipsと上がっていればセル・ザ・ファクトとなる可能性が高い。
どちらにせよ、現在キープしている英ポンド買いのポジションは結果が判明する前にいったん手仕舞うつもりです。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■欧米で中銀会合。ラガルド総裁の初陣は?
同じく欧州では、ラガルドさんが総裁になって初めてのECB(欧州中央銀行)理事会が12月12日(木)に開催されます。
ドラギ前総裁が、任期最後にフルコンボの金融緩和を決定していますから、金融政策は現状維持でしょうが、ドイツの財政出動などに言及すれば、為替市場が反応する場面もありそう。
動くとしたらユーロ高方向でしょうが、英総選挙が投票されている最中でのECB理事会。
ユーロ/英ポンドが急変するかもしれない場面でリスクを取ろうとする投資家は少ないでしょう。
今回の注目度は低いですが、12月11日(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)も控えています。
利下げの織り込みは、ほぼゼロ。金利は現状維持でしょう。
サプライズがあるとすれば、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見ですね。
10月から始まった債券買い入れの再開にバランスシート拡大のペースは、過去のQE(量的緩和)と比べて最速。株高を支えています。
「隠れQE」とも「QE4」とも言われる債券買い入れについての質疑応答が注目ですね。
12月11日(水)のFOMCでは、「隠れQE」とも「QE4」とも言われる債券買い入れに関するパウエルFRB議長の質疑応答が注目されると大橋氏は見ている (C)Bloomberg/Getty Images News
■英ポンド/米ドルの買いがワークしそう
12月11日(木)にはサウジアラムコが、いよいよ上場しますね。
過去最大のIPO(新規株式公開)となるのはもちろん、アップルを抜いて世界最大の時価総額企業となります。
OPEC(石油輸出国機構)プラスは先週(12月2日~)、減産規模を50万バレル拡大し、170万バレルとすることを決定しました。
これだけだと事前観測とほぼ同じ規模なのでサプライズではありません。
OPECプラスが減産しても米国産シェールの増産で相殺されてしまうため、減産量が200万バレルを超えないと原油価格の上昇はないと見られていました。
ところが、サウジアラビアのエネルギー相が公式生産目標から日量40万バレルの減産を自発的に継続することを表明。
これを加味すると、合計210万バレルの減産となります。これはサプライズでした。
WTI原油先物も実際、上昇していますね。
サウジアラビアは、サウジアラムコ上場に向けて原油価格を押し上げたい思惑があるのでしょう。
ただ、WTI原油先物は、まだ大きな三角持ち合いの中にいます。これを上抜けできるかどうか。
(出所:Bloomberg)
何はともあれ今週(12月9日~)の焦点は英総選挙、そして米中交渉の帰趨です。
今月は、対NZドルで顕著なように米ドル安が進んでいますが、まだ値幅は小さい。
米ドル安の流れは続くのでしょうから、少なくとも英総選挙の結果が出るまでは英ポンド/米ドルの買いがワークするのではと思います。
その後は総選挙の結果次第で、機動的に対応していくイメージです。
【参考記事】
●12月は2020年を先取りする米ドル安進行!? 英総選挙に向けて英ポンドは1.33ドル台へ(12月5日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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