■トルコ中銀が利下げ時に出した声明文を読み解くと…
トルコ中銀は2020年最初の政策会合で政策金利である1週間物のレポ金利を0.75%引き下げ、11.25%にしました。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
今回興味深かったのは、トルコ中銀の声明文の内容でした。それを簡単に要約し、大切なポイントについて解説したいと思います。
(1)「景気回復は続いているものの投資環境の弱さも続いている」
→ 投資環境というのは設備投資のことを指していて、実は大きく縮小しています。一方で、トルコの景気回復が続いているのも事実です。
【参考記事】
●2020年のトルコリラ相場と注目点を解説! 一ケタ台へ? トルコ中銀の利下げは続く!?(2019年12月25日、エミン・ユルマズ)
(2)「競争力向上のポジティブな影響が続いているものの、グローバル経済の減速は外部需要を圧迫している」
→ 外部需要とは特にEU(欧州連合)からの需要で、ドイツ経済を中心にEUの景気減速はトルコに悪影響を与え続けています。
(3)「直近で著しく改善してきた経常収支は今後緩やかに推移する」
→ トルコ語の原文でも理解しにくい文章だったので、現地のエコノミストの友人にたずねたところ、経常収支の直近の改善は在庫調整による輸入減の影響が大きかったが、在庫調整が終了したので経常収支は今後若干悪化すると言いたいようです。おそらく、この解釈で合っています。
(出所:Bloomberg)
(4)「グローバル金融と貿易における期待・センチメントの改善はリスク意欲を高めている。一方で保護貿易主義と地政学リスクの高まりも懸念し、状況を注意深く見守っている」
→最初にポジティブなことを言って、最後に懸念を述べるというのは今回の特徴ですが、トルコ中銀はグローバル経済の行方を相当懸念しているのがわかります。
(5)「インフレ率の年末の推移は予想の範囲内であり、今後の見通しも考慮して節度ある利下げを決定した」
→実はここが一番重要なポイントです。利下げはしますが、節度をわきまえた範囲ですと強調しています。
(出所:Bloomberg)
先週(1月15日)のコラムで、トルコ政府の利下げ意欲は強いけれど、為替レートに影響を与えない利下げの余地はあまり残っていないと書きましたが、やはり、トルコ中銀もそれを認めています。
【参考記事】
●トルコ中銀が直接介入でリラを下支え!? イラン情勢より重要なリビア内戦を解説(1月15日、エミン・ユルマズ)
個人的には、昨年(2019年)の夏から続いている利下げはいったん終了と考えています。今後は、むしろ利上げをしないといけなくなるフェーズに入りました。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
■トルコリラ相場に利下げの影響が出始めている
トルコ中銀の利下げ後、トルコリラは対米ドル・対円ともにトルコリラ安方向へ転じています。
イラン情勢が落ち着いたあとに米ドル/トルコリラは5.83リラ水準まで下がりましたが、足元では5.93リラ程度まで上昇しています。
(出所:Trading View)
対円では19円を超える勢いでしたが、結局、超えられず、また18円台の前半まで戻ってきました。
こちらも利下げの影響が出始めていると考えています。
(出所:Trading View)
■トルコの政策金利は実質金利ではマイナスに突入!
米格付け会社のムーディーズは、今週(1月20日~)の月曜日に、トルコのインフレ率が11.84%であり、政策金利が11.25%まで下がったということは、トルコの政策金利が実質金利ではマイナスになっていることを指摘し、マイナス金利はトルコ中銀の信ぴょう性と投資家の信頼を損なう可能性があるとコメントしています。
やはり、政治圧力による利下げが行き過ぎたことは、国内外の投資家のコンセンサスになりつつあると思います。
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