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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

トランプ大統領再選に向けて株高は継続!
NYダウ3万ドル間近でクロス円も底堅い

2020年01月23日(木)12:44公開 (2020年01月23日(木)12:44更新)
西原宏一

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■米大統領選挙において、株高が極めて重要な材料

 みなさん、こんにちは。

 米大統領選に関して、真っ先に思い出されるのが、「It's the economy, stupid(経済こそが重要なのだ、愚か者)」(※)というメッセージ。

※「It's the economy, stupid(経済こそが重要なのだ、愚か者)」とは、ビル・クリントン氏がジョージ・H・W・ブッシュ氏に勝利を収めた1992年の米大統領選挙の最中、広く使われたメッセージ

 当時、クリントン氏が冷戦の終結や湾岸戦争における勝利といったような、外交政策で大きな成果をもたらしたブッシュ氏に勝つことは極めて難しいというのが一般的な見方でした。

 ところが、こうした「外交」よりも、重要なのは「経済」であるとしたビル・クリントン氏がブッシュ氏に勝利。

 その後、米大統領選挙においては、株高が極めて重要な材料と捉えられています。

■NYダウは3万ドルの大台が視野に

 その米国株は、今年(2020年)に入っても視界良好。

【参考記事】
米国株を「買わない理由」はない!? 株高追い風に豪ドル/円は押し目買い!(1月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 先週(1月13日~)、17日(金)のNYダウは2万9373ドルまで高騰。

3万ドルの大台まで、あと700ドル弱と堅調に推移しています。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:Bloomberg)

 これは、このコラムで何度か取り上げた「隠れQE(量的緩和)」が大きく影響しています。

【参考記事】
2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

 昨年(2019年)までは、「米中貿易戦争」、「イラン問題」、そして、「トランプ大統領の弾劾」がリスクオフの可能性を残し、米国株の上値を抑える材料となっていました。

 しかし、昨年(2019年)末から、「米中貿易戦争」、「イラン問題」といった株にとっての問題が次々と沈静化し、米国株の上値は軽くなっています

【参考記事】
イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)

 そのため、NYダウを中心とした米国株は堅調。

 クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も底堅く推移しています。

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足

■トランプ大統領の弾劾成立の可能性は極めて低い

 残る懸念は、「トランプ大統領の弾劾」。

 もともと、ナンシー・ペロシ下院議長は、弾劾に関して及び腰…。

 しかし、AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員)を筆頭とした民主党左派勢力に押された形で、民主党は弾劾に向けて動き出したと言われています。

【参考記事】
2大イベント終了で利益確定の動き加速!? トランプ大統領の弾劾裁判の影響は…?(2019年12月19日、西原宏一)

 ただ、共和党が上院の多数を占めているため、弾劾が成立する可能性は極めて低い状況。

共和党が上院で多数を占めているため、トランプ大統領に対する弾劾が成立する可能性は極めて低い (C)Mark Wilson/Getty Images

共和党が上院で多数を占めているため、トランプ大統領に対する弾劾が成立する可能性は極めて低い (C)Mark Wilson/Getty Images

 可能性はほとんどありませんが、仮にトランプ大統領が弾劾されたとしても、ペンス副大統領が米国大統領に昇格します。

 共和党の保守派は、ペンス副大統領を支持しており、共和党の結束が乱れるわけでもありません。

 つまり民主党にとって、「ペンス大統領」は組みやすい相手ではありませんので、トランプ大統領の弾劾問題は、今のところリスクオフの材料とはならなくなっています

 結果、前述の3つのリスクオフ要因はほぼ消滅し、「隠れQE」による株のプラス要因が残る形となります。

 よって、米国株の堅調さは継続。

 NYダウは、200日移動平均線から大きく乖離したまま上昇し、オシレーター系の代表格であるRSIが、日足ベースで買われ過ぎを示唆していますので、多少の調整はあるのでしょうが、米国株の底堅さは継続しそうです。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:Bloomberg)

■トランプ政権にとって、2020年の株高維持は不可欠

 こうした中、「米大統領選挙は、経済だけが重要ではない」という意見も台頭しています。

米大統領選、経済だけで有権者は動かず

ビル・クリントン氏に勝利をもたらした1992年の米大統領選挙キャンペーンで中心的役割を果たしたジェームズ・カービル氏は、選挙戦の最も重要な争点について関係者らの頭の中に、ある単純なメッセージをたたき込んだ。それは「大事なのは経済だ、バカ者」というものだった。

しかし2020年の大統領選挙に向けたメッセージは「大事なのは経済ではない、バカ者」というものだ。少なくとも「経済だけではない」ということだ。

出所:ウォールストリート・ジャーナル

 2016年の米大統領選挙が、トランプ氏の大勝利というサプライズの結果になったことが証明しているように、選挙結果は、共和党と民主党の支持者が拮抗する州、いわゆる「スイングステート」での勝敗に左右される極めて不透明なもの

【参考記事】
米大統領選挙は予想外のトランプ氏勝利! リスクオフで米ドル/円急落も意外な動き…(2016年11月9日公開)

 上の【参考記事】にあるように、米大統領選挙は経済だけ、シンプルに言えば、株価の動向だけに左右されるわけではありません。

 ただ、選挙が、そうした不透明なものであるゆえに、トランプ陣営は選挙に勝利するため、少なくも株価を安定させようとすると思われます。

 今週(1月20日~)、ダボス会議に参加しているトランプ大統領は、中間層向け減税を発表するとしています。

FRB利上げは「大きな過ち」、中間層向け減税発表へ=米大統領

出所:ロイター

 こうした流れは、米国株にとってポジティブな要因が加わることになります。

 過去数カ月、総じて米国株は大きな調整もなく上昇しているため、急騰はしませんが、じり高に推移。

 米国株が堅調に推移するのであればリスクオンで、クロス円も総じて堅調に推移すると想定されます。

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足

■米国株とクロス円の調整は、押し目買いの好機

 今週(1月20日~)は、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の利下げ予測もある英ポンドが軟調な展開となり、クロス円が調整する局面だとするマーケット参加者が多かったのですが、そうした予想とは裏腹に、本稿執筆時点での英ポンド/円は、144円台を回復。堅調に推移しています。

英ポンド/円 日足
英ポンド/円 日足チャート

(出所:Trading View)

前回のコラムで取り上げた豪ドル/円も、中国の「新型コロナウイルス感染拡大」の報道で幾分、値を下げていますが、底堅い動きを維持。

【参考記事】
森林火災危惧も、豪州株は最高値更新。豪ドルは底堅い! 対円は80円へ反発開始(1月16日、西原宏一)

豪ドル/円 日足
豪ドル/円 日足チャート

(出所:Trading View)

 仮に、旧正月を控え、米国株とクロス円が調整するならば、押し目買いの好機となるのではないでしょうか?

【参考記事】
米国株を「買わない理由」はない!? 株高追い風に豪ドル/円は押し目買い!(1月20日、西原宏一&大橋ひろこ)

 豪ドル/円、英ポンド/円を筆頭としたクロス円の動向に注目です。


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