■トルコの新型コロナ感染者数が日本を超える
先週(3月16日~)から、トルコの新型コロナウイルス感染者の数は大きく上昇しています。3月24日(火)時点で、トルコの感染者数は日本を超え、1529人になりました。死者の数も37名にのぼっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
感染拡大を受け、トルコ政府は、一連の対策を早急に実施することにしました。自粛に向けての対策は欧州を参考にしているものが多く、65歳以上の人に、なるべく外出しないようトルコ政府が呼び掛けています。
トルコで人口がもっとも多い都市であるイスタンブール市は、高齢者が集まるような広場やモスクの前のベンチを強制撤去するという強硬手段まで実行しています。
トルコ航空は、世界5都市を除く、すべての国際線のフライトを3月27日(金)から取りやめることにしました。つまり、3月27日(金)から日本-トルコ間の直行便がなくなることになります。
また、国内線においても、65歳以上の乗客が飛行機に搭乗できないようにしています。
■トルコ政府は経済対策「経済安定の盾」を発表
トルコ政府は、経済対策も早速打ち出しました。「経済安定の盾」と命名した1000億リラ(1リラ=約17円換算でおよそ1兆7000億円)の経済対策の中には、中小企業をはじめ、国内企業が資金繰りに困らないように低金利の貸し出し、税金と保険金納付期限の半年延長、国営銀行のローン支払いの3カ月延長などが含まれています。
OECD(経済協力開発機構)は、トルコ経済の今年(2020年)の成長率予想を2.7%にしていましたが、新型コロナウイルスの影響で、この数字が下振れる可能性が高いと考えます。
トルコの感染者数が拡大しなくても、今年(2020年)の夏、欧州からの観光客はあまり期待できないと考えます。イタリアなど一部の国で感染拡大がピークを迎えていますが、たとえ拡大の速度が落ちても、海外旅行がすぐに元の状態に戻るのは難しいでしょう。
原油価格の下落が、トルコの製造業のエネルギーコストを下げるので追い風になりますが、欧州からの需要がどこまで減っているのか、まだわからない状態です。
現時点(2020年3月25日現在)で、トルコの製造業は休業などしておらず、通常運転を続けています。
(出所:Bloomberg)
■トルコの感染拡大がピークを迎えるまで、警戒が必要
今週(3月23日~)のトルコリラですが、世界的なリスクオフと米ドル高の流れを受け、米ドル/トルコリラは週明けに6.60リラ水準まで上昇しました。
一方で、トルコリラ/円は円安の影響で下がっておらず、昨日(3月24日)、米国の大規模経済対策のニュースが報じられると17円台に戻りました。
(出所:Trading View)
昨日(3月24日)の米国株の大幅高を受け、米ドル/トルコリラも6.45リラまで下がりましたが、前回のコラムで書いたように、米ドル/トルコリラが年内7.00リラまで上昇する可能性が高いと考えます。
それは、トルコでの新型コロナウイルスの感染が、今後、どこまで拡大するかわからず、欧州の感染拡大の収束にも、まだ時間がかかりそうだからです。
【参考記事】
●トルコ中銀は利下げを見送るべきだった…。4月以降、原油急落がトルコリラの追い風に(3月18日、エミン・ユルマズ)
(出所:Trading View)
そして、トルコリラの上昇にも関わらず、トルコのCDS(クレジットデフォルトスワップ)は550bp台で推移していて、高水準を維持しています。
(出所:Bloomberg)
引き続き、トルコリラ/円が16円台を割るシナリオを想定していませんが、トルコでの感染拡大がピークを迎えるまで、警戒する必要があると考えます。
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