■トルコは新型コロナウイルス感染者数が少ない
今週(3月16日~)のトルコの話題は、世界各国と同様に新型コロナウイルスです。先週(3月9日~)、トルコ保険省が国内初の感染を発表したばかりですが、1週間で感染者の数は47名になりました。
【参考記事】
●トルコとロシアの休戦合意は守られるか? コロナよりも原油急落がトルコリラに影響(3月11日、エミン・ユルマズ)
しかし、それでもこの数字はトルコの隣国であるイランや欧州の感染者数に比べ、少ないのが現状です。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
イラン国境の早期閉鎖が感染拡大を止めたように見えます。また、観光シーズンが終了していたため、欧州からの観光客が少なかったことも貢献しています。
■新政党「DEVA」発足で、トルコ国内政治が大きく動き出す
3月5日(木)に行われたエルドアン大統領とプーチン大統領の首脳会談後にシリア情勢も落ち着いてきましたが、トルコの国内政治は大きく動き出そうとしています。
【参考記事】
●シリア情勢緊迫化! 今、何が起きている? 休戦合意期待と原油下落がリラの下支えに(3月4日、エミン・ユルマズ)
アリ・ババジャン元経済担当大臣が党首を務める、新政党「民主・進歩党」が発足しました。新政党の発足は、3月11日(水)。この日は、新型コロナウイルスのトルコ国内での初感染が発表された日です。
【参考記事】
●8月26日早朝、トルコリラが急落したワケは? 米中貿易交渉次第で対円は17円台前半も…(2019年8月28日、エミン・ユルマズ)
エルドアン政権が、新型コロナウイルス初感染の発表を、わざとこの日にぶつけたのではないかと、トルコメディアでウワサになっています。
新政党「民主・進歩党」発足日となる3月11日に、エルドアン政権がトルコ国内での新型コロナウイルス初感染を発表したことがメディアで話題に (C)Anadolu Agency/Getty
一方で、新政党の省略名が「DEVA」であり、これはトルコ語で「治療や救済」という意味であります。これはこれで、まるで狙ったかのようなネーミングと言わざるを得ません。
新政党にエルドアン政権が懸念するほどのポテンシャルは、あるのでしょうか?
ババジャン氏は、エルドアン大統領の元側近。彼が経済担当大臣をしていた2002年から2007年の間、トルコは好景気で、高い成長力を記録したことから、国民に人気が高い政治家です。彼はその後、外務大臣となり、EU(欧州連合)加盟交渉も担当していました。
英語を流暢に話せて、温和な性格のため、EUからも好評価の政治家でした。新政党は中道右派なので、イスラム主義政権よりも支持を獲得できる層が広いと思われます。
今までトルコの右派にとって、エルドアン大統領のオルタナティブになれる中道のリーダーがいなかったので、ババジャン氏への期待は高いです。
■4月以降、トルコリラに原油価格急落の追い風が吹く
今週(3月16日~)のトルコリラですが、対米ドルで大きく下がって、米ドル/トルコリラは、瞬間的に6.50リラ水準まで上昇しました。トルコリラ/円も16円台後半で推移しています。
(出所:Trading View)
(出所:Trading View)
世界的なリスクオフの影響で、新興国通貨が対米ドルで大きく値を崩しています。トルコリラも例外ではありませんが、メキシコペソと反対に原油価格の急落は、トルコリラに追い風になるので、その効果は来月(4月)から現れると考えます。
(出所:Bloomberg)
■トルコ中銀の1.00%利下げはタイミングが悪かった
一方で、トルコ中銀は、昨日(3月17日)の政策会合で政策金利を再び下げました。これはとてもタイミングが悪いと考えています。3月19日(木)に予定されていた政策会合が2日前倒しされましたが、トルコ中銀は政策金利を1.00%引き下げて9.75%に設定しました。
【参考記事】
●2020年のトルコリラ相場と注目点を解説! 一ケタ台へ? トルコ中銀の利下げは続く!?(2019年12月25日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
FRB(米連邦準備制度理事会)の緊急利下げをチャンスだと考え、同じタイミングで利下げに走った感があります。FRBの利下げは、もちろん新興国通貨にとってプラスです。しかし、すでに実質マイナス金利のトルコは、通貨防衛のために利下げを見送るべきだったと考えます。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
トルコは欧州向けの輸出が大きく、欧州の混乱がいつまで続くかわからないからです。
新型コロナウイルスによる欧州の混乱が長引いた場合、米ドル/トルコリラは、7.00リラまで上昇する余地があると考えます。
(出所:Trading View)
一方で、米ドル/円で大きな円高が起きない限り、トルコリラ/円が16円台を割る可能性は低いです。
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