■トルコとロシアがシリアでの休戦で合意
エルドアン大統領とプーチン大統領は、3月5日(木)にモスクワで首脳会談を行い、シリアでの休戦に合意しました。
【参考記事】
●シリア情勢緊迫化! 今、何が起きている? 休戦合意期待と原油下落がリラの下支えに(3月4日、エミン・ユルマズ)
今回の休戦合意は、2018年にロシアのソチで合意された内容に近いため、トルコメディアではソチ2.0と呼ばれたりもしています。
今回の合意のポジティブな面から先に言いますと、まず、ロシアとトルコの直接衝突を避けられたのは大きいと考えます。トルコとロシアが戦争しなければNATO(北大西洋条約機構)が介入することもなく、シリア情勢が、より大きな軍事的衝突に発展する可能性が減ります。
【参考記事】
●シリア内戦がトルコとロシアの代理戦争に発展!? トルコリラ/円は低ボラ相場が続くか(2月5日、エミン・ユルマズ)
休戦合意を受け、トルコ政府は、難民が、トルコ経由でEU(欧州連合)へ越境することを容認するのをやめました。一時的な脅しだったとはいえ、この政策はトルコとEUの間で大きな問題となり、トルコリラの下落要因のひとつでもありました。
(出所:Trading View)
■休戦合意はいつまで守られるのか?
一方で、今回の合意にはネガティブな面もあります。
まず、休戦が、いつまで守られるのかが不明なことです。過去、度々休戦合意に達しても、守られることはありませんでした。
エルドアン大統領とプーチン大統領は3月5日(木)の首脳会談でシリア休戦で合意。ただ、エミンさんは休戦合意がいつまで守られるのか不明だという。写真は2018年9月に開催された、トルコ、ロシア、イランによる3カ国会談のときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
今回の合意内容もパーマネントソリューション(永続的な解決)とは言いにくい内容です。数週間で、また戦闘が始まる可能性が十分あります。
イランとヒズボラがシリア政府軍を助けるため、シリアに1500人の戦闘員を派遣しています。トルコ軍も休戦合意後に、新たに大規模な部隊を現地に配置していると伝えられています。
今回の休戦は、戦闘で被害を被っている両サイドが部隊を補強するためのインターバルである可能性が否めません。
また、ロシアはトルコが抱えている難民問題にも、まったく理解を示していません。トルコに難民が押し寄せている最大の原因は、ロシアによる学校や病院、一般の住宅地を狙った空爆です。戦闘が再び始まったら、ロシアはこれらの空爆を継続する可能性が高いです。
■トルコ国内で新型コロナウイルス感染を初確認
先週(3月9日~)、休戦合意期待で下がっていた米ドル/トルコリラは、世界的なリスクオフの流れで、再び上昇に転じる場面もありましたが、6.20リラを超えず、狭いレンジで動いています。
(出所:Trading View)
一方でトルコリラ/円は、円高が急激に進行したこと受け、17円台を割ってしまいました。
また、本日(3月11日)、トルコ保健省は、国内で初の新型コロナウイルス感染が確認されたことを発表しました。
トルコでは、感染が拡大しているイラン国境を素早く閉鎖したことと観光シーズンが終了したこともあり、今までコロナウイルスへの感染者は見られませんでした。今日(3月11日)のケースが初めてとなります。
(※クルーズ船、ダイヤモンドプリンセス号の感染者のみ別掲載)
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
このニュースを受け、トルコリラは対米ドルで下落し始めました。
(出所:Trading View)
■原油急落がトルコリラの上昇圧力に
今後の見通しですが、新型コロナウイルスによるトルコリラの下げは一時的で、感染を理由にトルコリラが大きく下げることはないと予想しています。
それよりも、トルコリラに影響を与えそうなのは、原油価格の急落です。
【参考記事】
●米ドル/円、95円が現実的なターゲットに!? 新型コロナに減産協議決裂…リスク満載!(3月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
これは、タイムラグをもってトルコリラの上昇圧力になると考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)