■トルコの新型コロナ感染者数は1週間で10倍に
トルコのコロナウイルスの感染拡大が止まらず、3月31日(火)時点で、感染者数が1万3531人に、死者の数は214人に達しました。感染者の数は1週間で10倍に、死者の数は約5倍になっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
感染者の数が急激に増えている背景に、大量にテストを実施し始めたことがあります。例えば、昨日(3月31日)だけで1万5422人にテストを行ったそうです。
エルドアン大統領は、今週(3月30日~)行った国民向けの演説で、新型コロナウイルスの悪影響を受ける低所得者のための募金キャンペーンを発表し、自身の7カ月分の給料を寄付しました。
エルドアン大統領は国民向けの演説で、新型コロナウイルスの悪影響を受ける低所得者のための募金キャンペーンを発表。自身の7カ月分の給料を寄付した (C)Anadolu Agency/Getty Images
募金キャンペーンに対しては賛否両論ですが、欧米のヘリコプターマネーのような対策を期待する声が多かっただけに、政府の対策が期待外れになっているのは事実です。
トルコ政府が先週(3月23日~)打ち出した経済対策は、企業向けの救済という面が強く、社会保障の面では足りないとの批判が多いです。
【参考記事】
●トルコ国内でも新型コロナ感染者数増加。収束の見通し立たず、リラ売り警戒!(3月25日、エミン・ユルマズ)
最低年金給付の金額を1258リラから1500リラに引き上げることなどは評価される一方で、現金給付などの対策がなく、失業保険の支払いについても、ほとんど対策が講じられていないことが問題になっています。
■トルコがロックダウンできない理由とは?
感染の急拡大にもかかわらず、トルコがロックダウン(都市封鎖)を行っていない背景にも経済的な理由があります。
現金給付を約束できないのにロックダウンを行うと、国民の反発を受ける可能性が高く、選択の余地がないのが実態です。
トルコ政府は、昨年(2019年)の景気後退で、トルコ中銀の非常用資金である420億リラを財務省に移動させてから使い切りました。
また、政策金利を引き下げている最中に、米ドル/トルコリラが6.00リラを超えないよう、外貨準備高の多くを為替介入に使いました。従って、ヘリコプターマネーを行う財源がありません。
(出所:Bloomberg)
■円高進行の可能性が高い中、トルコリラ/円も下落へ…
今週(3月30日~)のトルコリラですが、対米ドルでも対円でも大きく値を崩しています。
米国の大規模経済対期待によるリスクオフで6.40リラ水準まで下がっていた米ドル/トルコリラは、再び6.60リラを超えてきました。
(出所:Bloomberg)
先週(3月23日~)後半に、17円台を回復していたトルコリラ/円も、グローバル市場での換金売りが終わったことによる円高の影響を受け、足元で16.20円水準まで下がっています。
(出所:Bloomberg)
米ドル/トルコリラについては、7.00リラまで上昇する可能性を以前から指摘しています。
【参考記事】
●トルコ国内でも新型コロナ感染者数増加。収束の見通し立たず、リラ売り警戒!(3月25日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloomberg)
トルコのコロナウイルス感染拡大のペースは、当初、予想していたよりも早く、トルコ政府が打ち出せる経済対策にも限度があることが鮮明になってきました。
一方で、トルコリラ/円については、16円を割るシナリオを想定していませんでしたが、4月に円高がさらに進展する可能性が高くなってきました。その場合、トルコリラ/円もあっさり16円割ってしまいます。
米ドル/円の105円までの下落を想定すると、トルコリラ/円も15.50円までの下落を視野に入れるべきです。
(出所:Bloomberg)
感染拡大の収束が見えないままでは、トルコリラの下落に歯止めがかからないので、トルコ中銀としては、緊急利上げを行うなどの対策を早急に講じる必要があると考えます。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
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