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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

新型コロナ不況とリーマン・ショックの違いは?
景気後退は厳しくなる。市場は楽観的すぎ!

2020年04月08日(水)18:03公開 (2020年04月08日(水)18:03更新)
志摩力男

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■金融関係者以外は理解が難しかったリーマン破綻の影響

 “Why so serious?”

 2009年正月に受け取った年賀状。送り主は、広告代理店に勤め、自身でもコピーライターしている知人でした。

 相変わらずセンスの良い写真に一言、添えられていました。

「なんでそんなに深刻なの?」

 それがあの時の時代の空気でした。

 リーマン・ブラザーズが破綻し、世間は大騒ぎした。しかし、それがどうして大事件なのか? 金融関係者以外にはピンとこないものでした。

【参考記事】
リーマン・ブラザーズ破綻で為替はこれからどう動く?(1) ~ドル/円は95円を割れる!~
リーマン・ブラザーズ破綻で為替はこれからどう動く?(2) ~クロス円の下落で大騒ぎになる!~

 与謝野馨経済財政相が「日本経済はハチに刺された程度の影響しかない」と言ったのは有名な話です。

 与謝野氏は非常に聡明で、この時の発言と、外国為替証拠金取引のレバレッジ規制をかけたこと以外においては、大変すばらしい業績を残されました。

 私も個人的には大好きな政治家だったのですが、その与謝野氏でも、リーマンの破綻がその後の深刻な景気後退に結びつくことが読めませんでした

 ましてや、一般の方々が理解するのは難しかったと言えます。

■リーマン破綻の影響はプロセスを踏んで降りて行った

 しかし、金融関係者には、その後どうなるのか、歴然としていました。

 サブプライムローン商品により金融機関が被った損失は天文学的な数字であり、その損失をどうやって各経済主体の間で埋めていくか、というプロセスだったと思います。

 すなわち損失の影響が、金融機関⇒大手企業⇒中小企業⇒各個人・消費者、というプロセスを踏んで降りて行き、不況になりました。

 株価・不動産価格の下落、資金繰りの困難から大手企業が不景気対応を始め、それが中小企業に波及し、各個人のレイオフとなり、大規模な消費減少、景気後退となったのです。

■コロナ不況はいきなり中小企業と消費者を襲った

今回は違います。いきなり中小企業と消費者を襲いました

 原因がコロナとわかっているので、原因に対する解決方法(ワクチン)が開発されれば不況はある程度終わりますが、それまで1年から1年半ぐらい時間がかかると言われています。

 その間、企業や個人によっては売上・収入が壊滅的に激減することになります。

 よって、その1年から1年半に及ぶ期間の売上・収入を埋める「現金」、もしくは資金繰りがつけばよいのですが、数ヵ月ならともかく、1年半となると、飲食業などではいったん手仕舞いという選択肢が現実的でもあります。

 政府の方針に従い、自粛はするが、その間の休業補償については政府にがんばってもらいたいと思っている人は多い。しかし、政府が頼りになるのかというと、現実は厳しそうです。

■108兆円規模の対策といっても、支給制限が厳しい

 今回、政府は108兆円という事業規模の対策を出してきました。しかし、真水の部分は少ない

 当初、各世帯に30万円と言っていましたが、その総額は3.9兆円。日本は約5000万世帯あるので総額15兆円でないとつじつまが合いません。

 つまり、支給制限が厳しい

 十分な資金繰り対策を行うと言っていますが、補正予算に計上されている数字を見ると、すべてを計算しても10兆円を少し超える額にしかなりません。

 GDPの2%ほどですが、それでは足りないでしょう。

■緊急事態宣言が解除されても、簡単には元に戻らない

 日本の緊急事態宣言は、諸外国のロックダウンより緩いものですが、それでも感染者数を抑える効果はあると思います。

 では、緊急事態宣言が解除されたら元に戻るのかというと、簡単には戻らず、自粛が続くでしょう。

 向こう1年のサービス業は、本当に大変だと思います。

 インバウンドも戻らず、消費ももちろん沈んでいるので、2020年のGDPは優にマイナス5%を超えてくるはずです。リーマン・ショック以上の危機です。

【参考記事】
これは、リーマンショック以上の危機!! 世界的な米ドル不足で米ドル全面高に(3月19日、今井雅人)

■市場は楽観的だが、今後の景気後退はかなり厳しいものに

 バーナンキ元FRB(米連邦準備制度理事会)議長や、イエレン前FRB議長も、経済の先行きに対して非常に慎重な見方をしています。影響は数年続きます。

 今のマーケットは、感染者数が収まり、そのうちワクチンが開発されるので、時間が経過すれば相場は元に戻るという前提で動いています。

 もちろん、基本的にはそうだと思いますが、それまでの1年から1年半、その間に被る損失はその後の経済に大きな影響を与えます。

 アフター・コロナ、ポスト・コロナ、どのような表現が適切かわかりませんが、コロナ後の経済はコロナ前と変わってきます。

 過度なレバレッジは嫌われるでしょう。自社株買いも制限されます。

【参考記事】
新型コロナの影響で市場は今後どうなる? 世界中が金利ゼロへ!? ドル/円100円割れも!(3月4日、志摩力男)
新型コロナ後の世界はどうなる? ソフトバンクGの資産売却でポンド/円の売り!?(4月1日、志摩力男)

 失業率が急騰し、日本では、インバウンド需要が戻ってくるまで相当な時間がかかりそうです。

 要は、市場は楽観的ですが、想定される今後迎える景気後退はかなり厳しいものになると思われるのです。

■NYダウは38%下落したが、リーマン時は54%下落した

 NYダウは急落したとは言え、最も深いところで38%、現状の2万2500ドル前後であれば高値から24%程度です。

【参考記事】
コロナショックのNYダウ暴落を、世界恐慌やリーマン・ショックのときと比較してみると…

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:TradingView

 リーマン・ショック時に最も深かったときは54%下落していました。

NYダウ 月足
NYダウ 月足チャート

(出所:TradingView

 そうなると予想するわけではないですが、私も含め、いずれコロナは解決するからという楽観で動くと足をすくわれる局面もあるかもしれません。


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