(「リーマン・ブラザーズ破綻で為替はこれからどう動く?(1) ~ドル/円は95円を割れる!~」からつづく)
サブプライムローン問題の影響を受け、ついに破綻に至ったリーマン・ブラザーズ。世界の金融市場はムチャクチャ大変なことになっているわけだが、そんな中、松田哲さんがドル/円よりももっと下がりやすいと考えているのは……クロス円(ドル以外の通貨と円との通貨ペア)である。
■サブプライム問題の震源地は米国だが米ドルより下がる通貨がある
サブプライムローン問題とは、本来なら住宅ローンを貸すべきでないような、所得が少なく、信用力の低い人たち(サブプライム層)へ米国の金融機関がどんどん住宅ローンを貸し込んでいって起きたこと。
だから、騒動の震源地は米国にある。ならば、ドル/円などは一番下がってよさそうなものだが、前回触れたように、松田さんは米国要人の口先介入の影響などで、ドル/円は下がるとしても、ジリジリしか下がらない可能性もあると見ている。
「問題の一番の根源がドルにあるのは確かなんですが、目に見える激しさという点ではドル/円よりもクロス円かもしれません。クロス円の下落が激しくなって、大騒ぎになるんじゃないかと思っています」
松田さんが具体的に説明してくれたのはクロス円の中でもユーロ/円と豪ドル/円(オージー/円)だった。
■円キャリートレードの巻き戻しが起こってくる
日本の政策金利は0.5%とものすごく低い。一方、米国は昨年夏までは5.25%だったが、そこからドンドコドンドコ下がってきて、現在は2.0%だ。日本との金利差は1.5%しかなくなっている。
一方、ユーロの政策金利は現在、4.25%、豪州は7.0%である。日本との金利差は米国よりもかなり大きい。そのため、これらの通貨について、低金利の円を売り、相対的に高金利の外貨を買う、いわゆる”円キャリートレード”が行われてきたと松田さんは言う。
「一昨年までほどではないですが、最近もユーロ/円や豪ドル/円で円キャリートレードがかなり行われていたでしょう。為替リスクはあるけれど、金利差を受け取りたいというトレードが行われていたわけです。
それが今回、リーマン・ブラザーズの破綻で金融危機がやってきて、リスク回避の動きが高まった。すると、リスクをとって行われていた円キャリートレードはやめようということになります。円キャリートレードのアンワインド(巻き戻し)が起こるわけです。
円キャリートレードによる「円売りユーロ買い」や「円売り豪ドル買い」で上がっていたユーロ/円や豪ドル/円は今度は下がっていくことになるでしょう。
ただ、ユーロ/円や豪ドル/円の下落は今起こり始めたことではなく、7~8月あたりから始まっています。『マーケットは先読みして動く』などと言われますが、水面下で金融不安を察知している存在があり、それで相場が動き始めていたということだと思います」
ここで、ユーロ/円、豪ドル/円をテクニカル分析の観点から松田さんに解説してもらおう。
ユーロ/円、豪ドル/円とも「テクニカル的に言うとヘッドアンドショルダーを完成させていて、続落する可能性がある」と松田さんは話す。
■ヘッドアンドショルダーを完成させた豪ドル/円は67円まで下がる!
ヘッドアンドショルダー(三尊天井)とは人の頭と左右の肩のように、チャート上に3つの山ができている形。天井を示すチャートパターンと言われている。
「豪ドル/円の週足チャートを見てください。3つの山がありますよね。高値はだいたい107円ぐらい。左の山と真ん中の山が107円です。そして、右の山が104円ですね。
一方、ネックライン(山と山の間の谷の部分)は88円という意見と86円という意見が出ると思います。どちらにしても今、82円で(取材を行った9月16日現在)、ネックラインを下に抜けていますから、ヘッドアンドショルダーは完成しています」
■ヘッドアンドショルダーを完成させた豪ドル/円は67円まで下がる!
ヘッドアンドショルダー(三尊天井)とは人の頭と左右の肩のように、チャート上に3つの山ができている形。天井を示すチャートパターンと言われている。
「豪ドル/円の週足チャートを見てください。3つの山がありますよね。高値はだいたい107円ぐらい。左の山と真ん中の山が107円です。そして、右の山が104円ですね。
一方、ネックライン(山と山の間の谷の部分)は88円という意見と86円という意見が出ると思います。どちらにしても今、82円で(取材を行った9月16日現在)、ネックラインを下に抜けていますから、ヘッドアンドショルダーは完成しています」
豪ドル/円 週足
ヘッドアンドショルダーが完成した場合、相場はどこまで下がるのか? テクニカル分析の教科書的な計算方法はこうだ。まず、高値からネックラインまでの値幅を出す。その値幅をネックラインから引いたものが下値の目標値となる。
「豪ドル/円のネックラインは88円と86円の中間をとって87円としておきましょう。高値107円と87円の差は約20円になります。ネックラインは87円ですから、そこから20円を引いた67円前後が下値のターゲットです。
僕はそこまで下がると思っていますが、テクニカル分析をわかっている人ならば、誰でもそのような結論が出なければおかしいとも言えるでしょう」
■ユーロ/円の下値のターゲットは130円!
次にユーロ/円についても、松田さんにテクニカル的な解説をしてもらおう。
「ユーロ/円の週足チャートを見てください。3つの山が見えますね。真ん中の山はクチャクチャとしていますが…。これもヘッドアンドショルダーになっています」
ユーロ/円 週足
このチャートでは、真ん中の山がやや低く、右側の山が一番高くなっている。ヘッドアンドショルダーは真ん中の山が一番高いものではないのか?
「教科書には典型的な図が示してあるだけです。真ん中の山が低い場合もあるんですよ。ユーロ/円はちゃんとヘッドアンドショルダーになっています。
それはともかく、ユーロ/円は高値が169円、ネックラインは149円です。アバウトに言えば、170円と150円と見ればいい。となると、その値幅はやはり約20円。ユーロ/円は150円から20円を引いた130円前後が下値のターゲットになります。そこまで落ちる可能性があるということです」
ここで、一応、つけ加えておくと、ユーロ/円は本日、9月17日はやや戻して150円台に乗せたりしている……つまり、ネックライン上をウロウロしているような状況ではある。
■松田さん、一番のオススメは「豪ドル/円の売り」だ!
さて、豪ドル/円もユーロ/円も高値とネックラインの値幅は同じ20円となるのだが…。
「同じ20円の値幅といっても、ユーロ/円のレートは150円ぐらい、豪ドル/円のレートは80円ぐらいですから、豪ドル/円の方が変化率では大きくなるわけです。
ですから、豪ドル/円の方がすでにネックラインをかなり割り込んで下がってしまっているということはあるものの、トレード戦略としては『豪ドル/円の売り』が一番効率的だと思います。
豪ドルは金利が高かったわけですから、それだけ円キャリートレードで注ぎ込まれた資金も大きかったはず。それが逆流して、下がっていくわけですからね」
松田さんのオススメはヘッドアンドショルダーを完成させ、下落率が高そうな「豪ドル/円の売り」ということだ。
※なお、松田さんの連載コラム「FX一刀両断」でも豪ドル/円(オージー/円)に関する解説があるので、こちらもご覧あれ。
→「オージー/円(豪ドル/円、AUD/JPY)は下落トレンドに転換した!」
(ザイFX!編集部・井口稔)
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