■トルコ政府が欧米3行への取引規制撤廃
トルコ政府がトルコリラの空売りを抑制するため、UBS、シティグループ、BNPパリバという欧米の大手金融機関のトルコリラスワップを規制し、それがきっかけでトルコリラは大きく反発しました。
(出所:IG証券)
トルコ当局はその後、規制措置を撤廃しました。
私は、規制措置については、最終手段として効果を発揮したものの、長期的にはトルコリラの流動性低下をもたらす懸念があると先週のコラムで指摘しましたが、やはり、予想どおりに展開になってきています。
【参考記事】
●トルコ政府が欧米3行への取引規制実施! 反発したトルコリラ/円は、15円台を回復(5月13日、エミン・ユルマズ)
■トルコ政府の為替レートへの警戒感が高まる
規制が短期間で撤回されたとはいえ、トルコリラの取引について不安になったBNPパリバは、トルコリラの新規取引を止めていると、5月18日(月)に報道されています。
BNPパリバは、顧客の既存のトルコリラポジションについて、ポジションの維持もしくは減らす取引には、引き続きサービスを提供しますが、新たなポジションを作らせないとのことです。
BNPパリバは、トルコリラ市場における大きなプレイヤーのひとつで、トルコの銀行の株式も持っています。BNPパリバの撤退により、トルコリラの流動性が低下するのは、避けられないことだと考えます。
BNPパリバの決断に怒ったのかはわかりませんが、5月19日(火)の演説でエルドアン大統領は、「国内の外貨を外国に逃がそうとしている者は容赦しない」と発言しています。
国内の外貨を外国に逃がそうとしている者は容赦しないと発言したエルドアン大統領。一部のトルコメディアでは資本移動が規制されるのではないかと懸念する声が出ているという (C)Anadolu Agency/Getty Images
これはどういう意味なのか、はっきりとはわかりませんが、一部のトルコメディアでは、資本移動が規制されるのではないかと懸念する声が出ています。
いずれにせよ、米ドル/トルコリラが7.00リラを大きく下抜けたことで、トルコ政府の為替レートに関する警戒感が高まっていると考えます。
(出所:IG証券)
■トルコリラ/円は目先16円~16.50円のレンジか
今週(5月18日~)のトルコリラですが、順調に買われていて、米ドル/トルコリラは足元で6.80リラ前後まで下落し、トルコリラ/円は15.50円を超えました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
米国のワクチン開発期待で市場がリスクオンに転じ、円安が進行したことが、トルコリラを含む新興国通貨には追い風となりました。
円安がさらに進行した場合、トルコリラ/円も16円を超え、しばらく16円~16.50円のボックス圏で推移すると考えます。ただし、トルコ中銀がまた利下げした場合には、この限りではありません。
■ラマダン明けの休日中は、トルコリラも大きく動かない
トルコの新型コロナウイルスの感染者数は、5月19日(火)時点で15万1615人、死者の数は4199人になっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
現在、トルコを含むイスラム世界は、ラマダンという断食の月に入っていますが、ラマダン明けは3日間のラマダン祭りがあり、その3日間は休日です。
今年(2020年)のラマダン祭りは、5月24日(日)に始まると、トルコの宗教庁が伝えています。
従って、トルコは来週(5月25日~)、5月27日(水)までお休みとなり、トルコリラも大きな動きはないと考えます。
なお、アラブ諸国とトルコのラマダンは1日ずれることが多いので、アラブ諸国では5月23日(土)からラマダン明けとなる可能性があります。
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