■市場センチメントが「猫も杓子もコロナバブル」だから警戒
おもしろいことに、コロナショックであんなに弱気一辺倒だった市場センチメントが、最近では「二番底なし」といった超強気に転換しつつあるように読み取れ、コロナバブルに乗り遅れのないように…と煽るセンセイもずいぶん増えた気がする。
いろんな指標を引っ張り出して、コロナショック前の日経平均がいかに「割高」であったかを力説している面々が、企業収益がガタ落ちしている現在において、一転して3万円の大台を提示しはじめ、まさに「猫も杓子もコロナバブル」の様相を呈している。
筆者は株高の見通しをまったく修正していないが、このまま一直線に上昇することには懐疑的になってきた。
その理由はファンダメンタルズ(前述のように、そもそもファンダメンタルズ云々を言う者の多くは、単に持論の後付けにしか使っていない)よりも前述の市場センチメントの変化に対する警戒の方が大きいかと思う。
筆者が「コロナバブル」という言葉を書き始めた4月上旬の「戯言を言うな」という雰囲気とは打って変わって、今は「猫も杓子もコロナバブル」の状況だからこそ、警戒すべきだと思う。
■日米欧のコロナ第二波を株式市場は織り込んでいない?
そもそも、リアル生活におけるコロナショックはまだ続いている。日本はやっと全国移動を解禁したものの、感染者数の増減はなお不安定であり、クラスターの発生も散見される状況だ。
米国は、ピークより落ちてきたものの、なお毎日相当の新規感染者を出しており、最近一部地域では再び増加傾向にある。最近の騒乱もあって、油断できないことは明白だ。
そして、何よりも厳しい措置を取ってきた中国の北京で、突然勃発した第二波の衝撃が大きい。
他国が真似できないと言われる中国の力強い封じ込めがあっても第二波を回避できなかったから、遅かれ早かれ、日米欧に襲いかかるのではないかと思われる。が、こういった懸念について、今の株式市場が織り込んでいるとは思わない。
実際、コロナショック前の株式市場もずいぶん「鈍感」であった。あの武漢封鎖後でも米国株は史上最高値を更新していたこと、そして日本はのんびりして武漢からの旅客に日本周遊をさせたことは記憶に新しい。
つい数カ月前のことでも、市場参加者たちが忘れてしまうことは、実によくあることで、今始まったことではない。ゆえに、一層警戒すべきだと思う。
いずれにせよ、為替市場における動向は、簡単に言うと「コロナバブルの一段の進行があっても、株高の進行につれ、米ドル全体が一段安になるとは限らない上、コロナバブルがいったん中断すれば、米ドル全体の切り返しが3月のように強くみられるはず」であるから、米ドル売りのスタンスから距離を置くべきだろう。
■米ドル/円の動向は米ドル全体が切り返すスピードしだいか
そして肝心の米ドル/円は、結局米ドル全体に追随してくるかどうかが重要だ。
米ドル全体の切り返しが緩やかであれば、米ドル/円は5月安値を割り込めず、しばらく安値圏での保ち合いを固めてから再度反発してこよう。
反面、米ドル全体が急速に切り返せば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急落をもたらしてくるから、米ドル/円もいったん5月安値を割り込む、といったリスクが増大してこよう。
(出所:TradingView)
米国株の動向と重ねてみる場合、現時点では前者の可能性をより重視したい。そのあたりの詳説はまた次回、市況はいかに。
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