■FOMCは金利据え置きも、パウエル議長は悲観的
6月9日(火)~10日(水)は、FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。政策金利は据え置きでしたが、2022年末まで、ゼロ金利が維持されることが示されました。
6月5日(金)の米雇用統計で、ポジティブサプライズとなる良い数字が出て、市場はやや楽観的になっていましたが、FOMC後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見では、経済の回復には時間がかかるなど、かなり悲観的な発言が続きました。
【参考記事】
●5~6月が景気後退局面の底か。リスク選好は続き、豪ドルが調整すれば買い場に(6月9日、バカラ村)
これを受けて、株式市場は軟調に推移し、為替市場ではクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が下落しました。
(出所:TradingView)
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■導入期待の根強いYCCは、米ドル安の材料
FOMCでは、YCC(イールドカーブ・コントロール)の導入期待もありましたが、パウエルFRB議長は、今後も議論することを示唆するに留めました。
ただ、市場参加者にはYCCの導入期待もあり、これは米ドル安への材料になります。
【参考記事】
●ドル/円は107円台後半~108円台を戻り売り! パウエルが話せば株価が下がるの法則復活!?(6月15日、西原宏一&大橋ひろこ)
YCCについて、今後も議論することを示唆したパウエルFRB議長。市場参加者の導入期待は、米ドル安材料になるとバカラ村氏は指摘している (C)Bloomberg/Getty Images News
それ以外のリスク回避の材料としては、ブラジルや米国南部で新型コロナウイルスの感染拡大、上海の感染第2波懸念があります。これも株式市場を軟調にさせている材料です。
■リスク回避の材料は調整に使われただけ!?
また、人種差別への抗議デモもあり、トランプ大統領の支持率が低下しています。
(出所:RealClearPolitics)
11月に米大統領選があり、トランプ大統領の再選が厳しいとなれば、米国株の売り材料になるため、これもリスク回避の材料となります。
【参考記事】
●株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか? 迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
ただ、3月からリスク選好の動きが続いていたため、これらの材料は、調整するための材料にされただけだと考えています。
あくまでも、自律的な調整に過ぎない動きだと考えており、調整が終われば、再度、リスク選好に戻るのではないかと考えています。
(出所:TradingView)
先週(6月8日~)のFOMCでも、何か新しい材料が出たわけではなく、金融政策も超緩和的となっています。
さらに、パウエルFRB議長は、これまでジャンク債の購入や米ドルの供給など、金融市場を落ち着かせる施策を採用してきましたので、株式市場も下がり続けることはないと思います。
■英ポンドはニュースヘッドラインに注意!
今月(6月)末は、英国が離脱期限を延長するかどうかを決める締切ですが、6月15日(月)にジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長が共同声明で、離脱の移行期間延長はしないと表明しました。
年末までの、EU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)締結などの交渉が注目されますが、今月(6月)末ごろから、集中的な協議が始まります。
そのため、英ポンドは乱高下しやすいと思いますので、トレードするときはニュースヘッドラインに気を付けるべきかと思います。
(出所:TradingView)
■長期的な米ドル安見通しに変化なし
長期的には、米ドル安になるのではないかという考えは、変わっていません。
先週(6月8日~)は、リスク回避で米ドル高になりましたが、何かが変わったわけではありません。パウエルFRB議長は、悲観的な発言しましたが、それはすでにわかっていることであり、新型コロナウイルスの第2波懸念も、第1波よりは被害は小さくなると思いますので、これも大きな材料にならないと思います。
【参考記事】
●サイクル崩れ、膠着した相場が米ドル安へ動き始めた! 対米ドルで資源国通貨買い(6月2日、バカラ村)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
トランプ大統領の支持率低下は気になりますが、株式市場は財政出動や金融緩和政策の影響もあって、まだ堅調になりやすいと思います。
今回の下げは、あくまでも自律的な調整だと考えています。
【参考記事】
●雇用統計後のドル/円、クロス円の下落は過剰反応の反動。買いへ転じるチャンス待ち(6月11日、今井雅人)
■豪ドルは調整終われば再度、上昇へ
為替市場では、コロナ相場を先導していた豪ドル/米ドルも、テクニカル的に重要な0.7050ドル付近の長期レジスタンスに到達しているときに、パウエルFRB議長が悲観的な発言をしたことを受けて、調整が始まっただけだと考えています。
(出所:TradingView)
そして、この調整で、0.6670ドル付近まで下げる可能性はありますが、調整後は再度、上昇する可能性があると考えています。
ここまでのような上昇の勢いはなくなるとは思いますが、長期的な上昇の流れはまだ、継続するのではないかと考えています。
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