■トルコのスワップ協定に最初に応じたカタール
トルコ中銀が、各国にスワップ協定の締結を持ちかけていますが、トルコの要請に最初に応じたのがカタールでした。
カタールは先週(5月18日~)、トルコとすでに結んでいるスワップ協定の金額を50億ドルから150億ドルに増やしました。カタールは、エルドアン政権と強い同盟関係を築いていて、元々のスワップ協定も2018年のトルコリラショックの時に締結したものです。
【参考記事】
●トルコ人ストラテジストが分析! 牧師釈放は近そう。ならばトルコリラ/円は19円まで反発(2018年8月15日、エミン・ユルマズ)
一方でトルコも、カタールに対するサウジアラビア主導の経済制裁を無視し、カタールとの貿易を続けてきました。カタールの通貨であるリヤルは米ドルにペッグ(※)されているので、カタールとのスワップ協定でトルコは間接的に米ドルを調達したということになります。
(※編集部注:「ペッグ制」とは、ある1つの国の通貨、もしくは複数の国の通貨と自国通貨の為替レートをペッグ(固定・連動)させ、為替レートの変動を意図的に規制する制度のこと)
【参考記事】
●固定相場制(ペッグ制)が招いた悲劇!? 香港ドルなどの取扱い停止はなぜ増えた?(2015年4月6日公開)
トルコのスワップ要請に最初に応じたカタールは、エルドアン政権と強い同盟関係を築いている (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコの外貨ニーズは高く、当然ながら150億ドルではとても足りません。トルコ中銀は引き続き、米国、中国、日本にスワップ協定を打診しているようですが、カタールとのケースを例に出して、交渉を有利に進めたい戦略もあると考えます。
■トルコ政府は外貨購入税を0.2%から1%に引き上げ
一方で、新しいスワップ協定を締結しても経済が安定しない限り、せっかく外貨を獲得しても、国内の米ドル化を加速させる恐れがあります。
トルコ政府もそれを懸念しているので、5月24日(日)に外貨の売買における外貨購入税を0.2%から1%に引き上げました。つまり、今後、トルコで1万円に両替する場合、100円が税金として取られるということになります。
実はこの税金は、金(ゴールド)などの貴金属の取引にも課されています。つまり、トルコ政府は、国民に手持ちのトルコリラで外貨や金を購入しないで、トルコリラのまま預金してほしいということです。
しかし、トルコの預金金利がインフレ率を下回っているので、トルコリラのまま預金したい人が少ないのは当然です。個人的には、外貨購入税引き上げは、米ドル化を止めるのには、ある程度、効果があると考えます。ですが、もちろん根本的な解決にはなりません。
【参考記事】
●トルコの消費マインドが大幅悪化…。11年ぶりに復活した「外貨購入税」とは?(2019年5月22日、エミン・ユルマズ)
■主要国の都市封鎖解除などがトルコリラの追い風に
今週(5月25日~)のトルコリラですが、世界主要国のロックダウン(都市封鎖)解除やワクチンのニュースが追い風となり、米ドル/トルコリラは、6.70リラ近辺に下落。トルコリラ/円は、16円台まで買われました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコは、5月24日(日)から3日間、ラマダン祭りで、25日(月)と26日(火)は、株式と為替市場もクローズしていました。
【参考記事】
●トルコ政府の為替レートへの警戒感高まる!トルコリラ/円は16円~16.50円のレンジか(5月20日、エミン・ユルマズ)
そのため、5月24日(日)に決まった外貨購入税の引き上げが相場にどんな影響を与えるのかは、まだわかりません。短期的に米ドル化抑制につながる可能性がある一方で、先行きに対する懸念から、中期的にはトルコリラがさらに売り込まれる可能性もあります。
トルコが、米国や日本などの主要国とのスワップ協定に成功するまで、トルコリラの動きに要注意です。
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