■エルドアン政権が民主主義路線へ転換!?
11月6日(金)のトルコ中銀総裁の更迭に始まり、その直後のアルバイラク財務相の辞任で世界の注目を集めたトルコの経済ブレーン再編が、短期間で効果を発揮。米ドル/トルコリラは7.60リラまで大きく下落し、トルコリラ/円は13.70円付近まで急騰しました。
【参考記事】
●利上げならトルコリラ/円は13.50円超え! エルドアン大統領も限定的な利上げに賛成か(11月11日、エミン・ユルマズ)

(出所:TradingView)

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経済運営の合理化に対する期待が高まったのが、トルコリラ上昇の主因ですが、それだけではありません。
エルドアン大統領が、司法改革もやるべきと、欧米に向けてのポジティブなメッセージを発したことが、世界の投資家を安心させ、その結果、トルコ国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も大きく下落しました。
米大統領選でバイデン候補の勝利が確定したことを受け、エルドアン政権は独裁路線から民主主義路線に舵を切ろうとしていると指摘されています。
【参考記事】
●米大統領選の結果はトルコリラにも影響大! バイデン優勢でトルコと米国の関係悪化!?(10月14日、エミン・ユルマズ)
■アルメニアとアゼルバイジャンの紛争終結もポジティブ
地政学的にもポジティブな動きがあり、トルコの隣国であるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争が終結したのも、トルコリラに追い風となりました。
バイデン氏の当選直後に、ロシアの仲介で両国は完全停戦に合意しました。

トルコとロシアの代理戦争と言われていた、アルメニアとアゼルバイジャンの紛争が終結したことも、トルコリラの追い風になったとエミン氏は指摘。写真は2018年9月に開催された、トルコ、ロシア、イランによる3カ国会談のときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
海外の紛争に関心がないトランプ大統領と違って、バイデン政権が誕生したらアルメニア・アゼルバイジャン紛争に米国が介入する可能性がありましたので、ロシアがその可能性を恐れ、両国に圧力をかけたに違いありません。
【参考記事】
●トルコ中銀、利上げでもトルコリラ/円は13.50円割れ。覇権争いでまた代理戦争!?(9月30日、エミン・ユルマズ)
■欧米との関係改善を急ぐかには疑問の声も…
米大統領選という一大政治イベントの通過を受け、トルコリラにとってポジティブな動きが続いたのは幸運ですが、トルコ政府が本当に民主主義路線に舵を切って、欧米との関係改善を急ぐかどうかについては、疑問視する声も多いです。
エルドアン大統領は11月15日(日)に、1974年以降に分離独立したままであるトルコ系のキプロス島北部を訪問しました。ここで、キプロス島を正式に2つに分けることになる二国家解決策を提唱しましたが、これに南側のキプロス共和国とEU(欧州連合)が反発しています。

独裁路線から民主主義路線に舵を切ろうとしていると指摘されているトルコのエルドアン大統領。しかし、キプロス島の分割案を提唱するなど、欧米との関係改善を急ぐかどうかについては疑問視する声も多いという (C)Anadolu Agency/Getty Images
今週(11月16日~)のトルコリラですが…
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