■トルコ観光業に回復の兆しも、楽観視はできず
5月にトルコを訪れた外国人観光客の数は93万6282人となりました。これは、昨年(2020年)の5月に比べ3000%以上の増加ですが、昨年(2020年)はパンデミックで観光客がほとんど来なかったのであまり参考になりません。
【参考記事】
●リビア内戦がトルコとエジプトの戦争に!?新観光政策の効果がリラの運命を決める!(2020年6月24日、エミン・ユルマズ)
今年の1-5月期合計で外国人観光客の数は約370万人で昨年(2020年)の同じ時期に比べまだ14.3%少ないです。
新型コロナウイルスのワクチン接種の進行による正常化で、トルコの観光業も息を吹き返す可能性が高いですが、変異型の出現によって再び国境閉鎖をするリスクはまだ残っています。よって観光業についてはあまり楽観的に予想しない方が無難です。
【参考記事】
●トルコの新型コロナ第5波は8月に到来!? それまでトルコリラは買われやすい地合いか(5月26日、エミン・ユルマズ)
(出所:トルコ保健省)
■トルコ観光業復活は、外貨獲得に極めて重要
実は、トルコにとって観光業の復活は必要不可欠です。コモディティ(商品)価格の上昇でトルコの民間セクターは米ドル不足に陥っているので、観光は外貨獲得手段として極めて重要です。
トルコ中銀の発表によると、4月末時点でトルコの短期債務の総額が1447億ドル(約16兆円)となりました。これは2020年末に比べ4.5%増に相当します。短期債務の中で民間セクターの債務はダントツで67%のシェアを占めます。民間セクターの米ドルニーズが高く、これがトルコリラの売り圧力につながっています。
(出所:TradingView)
本来、トルコ中銀は為替介入を繰り返して民間セクターの米ドルニーズに対応するはずですが、外貨準備高が底をついているので動けなくなっています。
6月11日(金)時点で、トルコ中銀の外貨準備高は945億ドルですが、これはスワップ協定なども含めた金額であり、純外貨準備高は150億ドルしかありません。
純外貨準備高は一時マイナスに陥っていたので、現在、改善傾向にありますが、トルコの対外債務に比べ依然として低い水準にあり、主要新興国の中でも最下位です。
■ドルインデックス上昇は、新興国通貨のリスク要因に
今週(6月28日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で大きく動かず、対米ドルで8.70リラ水準、対円で12.70円前後の小さいレンジで動いています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
メキシコ中銀は、6月24日(木)の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げて4.25%にしました。
2018年12月以来の利上げですが、メキシコの利上げを受けて、トルコの利上げ観測も高まっています。個人的には、10月まで利上げの可能性は低いと見ていますが、逆にトルコ中銀はエルドアン大統領が求めている利下げもできないと考えます。
【参考記事】
●エルドアン・バイデン首脳会談は不発…。もし利下げすれば、リラ急落を招く恐れも(6月16日、エミン・ユルマズ)
主要新興国が軒並み金融引き締めに舵を切っている環境でトルコが簡単に利下げできません。ドルインデックスが強まってきているのはトルコリラに限らず新興国通貨全体にとって大きなリスク要因です。
(出所:TradingView)
米国は7月に企業決算が集中していて、7月27日~28日に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)まで、大きな動きはなさそうですが、FOMC後に為替相場が大きく動くと見ています。
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