失業率は13.2%に低下も、広義の失業率は高い水準
TUIK(トルコ統計局)の発表によると、5月の失業率は0.6%減少し、13.2%となりました。データの中身を見るとの農業を除くベースの失業率は1%減少し、15.1%になっていることがわかります。
(出所:TUIK)
一方で、広義の失業率は27.2%になりました。広義の失業率については、日本の総務省も近年「未活用労働指標」を公表していますが、簡単に説明するとこれは、時期による働き手不足、活かされていない潜在労働力などを計算に入れたものです。パンデミックの影響もあり、広義の失業率は高い水準で推移しています。
鉱工業生産は好調。EUとの貿易正常化が追い風に
今週(7月12日~)発表されたもうひとつ重要なマクロ指標は、5月鉱工業生産ですが、前月比でプラス1.3%となりました。事前の市場コンセンサスはマイナス0.4%でしたのでポジティブサプライズです。前年比でもプラス40.7%となり、市場予想のプラス37.2%を大きく超えています。
(出所:TUIK)
新型コロナウイルスのワクチン接種の急速な進行で、EU(欧州連合)とトルコの貿易が正常化しつつあり、それがトルコの製造業に大いに追い風になっています。
【参考記事】
●実質実効為替レートは史上最安値を更新。なぜ、トルコリラはここまで弱いのか?(7月7日、エミン・ユルマズ)
一方で、今回の数字はポジティブサプライズであるのはたしかですが、マクロ指標については、まだベースエフェクトの効果が大きく出ているのが事実です。経済が完全に停止していた昨年(2020年)との比較はどうしても強く見えてしまいます。
世界的なインフレ率上昇が、投資家の懸念に
今週(7月12日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で堅調な動きが続いていて、米ドル/トルコリラは8.60リラ水準まで下落、トルコリラ/円は12.80円を越えました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
市場はトルコのマクロ指標の改善を歓迎しています。投資家の懸念点は、トルコに限らず世界的なインフレ率の上昇です。
7月13日(火)に発表された、米国の6月CPI(消費者物価指数)は前年同月比5.4%上昇となりました。これは2008年8月以来、約13年ぶりの高水準となります。米国は2008年も、現在と同様に住宅価格が上昇していました。
2008年後半に起きたリーマンショックを経験している投資家は、住宅価格とインフレの上昇に嫌気がさしているのではないかと思います。
原油価格上昇が、インフレ率を大きく押し上げる要因に
インフレ率を大きく押し上げしている要因のひとつは原油価格ですが、OPECプラス(※)の話し合いとイラン核合意についての不透明感が強く、これが新興国通貨の売り圧力にもつながっています。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
(出所:TradingView)
トルコの場合、原油価格の上昇が直接経常収支の悪化につながることから、トルコリラは原油価格にもっとも敏感な通貨のひとつです。
【参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!? 原油価格とトルコリラは逆相関関係にある(2018年10月31日、エミン・ユルマズ)
来週(7月19日~)は、19日(月)から犠牲祭(クルバンバイラム)でトルコは9連休となりますので、トルコリラも大きな動きはなさそうですが、流動性が低下している時期は地政学ニュースに反応しやすいので、その点だけ留意しておく必要があります。
【参考記事】
●FX会社が警戒するトルコの「犠牲祭」とは? 日本発のトルコリラショック再開はある!?(2018年8月16日公開)
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