足元の為替相場は一進一退の展開ではあるが、ボラティリティー(価格の振れ幅)は拡大しつつある。
また、市場関係者の注目を集めるユーロは、ギリシャ支援を巡るウワサに左右され、乱高下を繰り返している。その背景には、ヘッジファンドの事情とその死闘もうかがえるだろう。
■ソロス氏が金のロングポジションを7億ドルまで拡大!?
3月5日のコラムでは、米著名投資家のジョージ・ソロス氏傘下のものを含め、ヘッジファンドの幹部が集まった会食会において、ユーロ売りに関する共謀が図られたという報道について、ご紹介した(「ジョージ・ソロスが共謀してユーロ売り!?米国当局が調査を始めた真の理由とは?」を参照)。
同コラムにおいては、ヘッジファンドの幹部がマスコミに対して意図的にリークしたとしか考えられないという筆者なりの見方を述べたが、その推測はまだまだ単純すぎるということが、某消息筋の話でわかってきた。
その消息筋の話によると、ソロス氏やポールソン氏といったヘッジファンドの大物は、昨年からそろって、金(ゴールド)のロングポジション(買い持ち)を増やしているようだ。
さらに、ソロス氏は、金関連の資産をひそかに買い増しているらしい。今年1月に行われたダボス会議(世界経済フォーラム)において、「バブルが膨らみ、金のバブルは最終的にはじける」とソロス氏自身が発言しているにもかかわらず…
昨年第4四半期に、ソロス氏傘下のファンドは、金鉱株や金の信託ファンドなどを少なくとも倍増させており、その投資額が7億ドル近くに膨らんでいたという事実も明らかになっている。
■ユーロ売りで儲けているのに、ファンドが浮かないワケ
「ソロス氏はズルイ!」といった批判もあるが、これは投資の世界ではごく普通の「ポジショントーク」に過ぎず、業界の人ならば誰もおかしいとは思わないだろう。
その上、ソロス氏はかねてから、「どこかでバブルがあれば、私は売りではなく買いに向かう。弾けるまで」と言っていたので、一連の行動は「有言実行」とも言える快挙だ。
問題は、その金価格の行方だ。
ご存知のように、金自体は預貯金のように利息もつかないし、付加価値が生み出されないので、通貨の対極としてのみ価値が測れると言っても過言ではない。
また、金の対極となる通貨が米ドルである以上、米ドルとの逆相関がはっきりしており、米ドル安なしでは金の上昇はあり得ない。
さらに、為替市場においては、米ドルの対極であるユーロが7割近いシェアを有しているから、ユーロ安は米ドル高とおおむね等しい。従って、ユーロ安は金価格を押し下げることも意味している。
ユーロ/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
だから、ユーロ圏のソブリンリスク(政府などに対する融資のリスク)を見越して、昨年末からユーロ売りを仕掛けてきたヘッジファンドの関係者は、ユーロ安の継続を必ずしも快く思っていない。
ユーロ売りのポジションでは確かに儲けているが、半面、肝心の金のロングポジションの価値は差損しているからだ。
そのため、手持ちのユーロ売りポジションをうまく処理して、さらに、金価格を押し上げたいという「一石二鳥」の戦略を練る必要に迫られたワケだ。
その苦肉の策として考えられたのが、ヘッジファンド幹部が集う「会食会」であり、その場で共謀したという話をマスコミにリークすることだった。
現時点では、その目論見どおりになっているようだ。
だから、ユーロ圏のソブリンリスク(政府などに対する融資のリスク)を見越して、昨年末からユーロ売りを仕掛けてきたヘッジファンドの関係者は、ユーロ安の継続を必ずしも快く思っていない。
ユーロ売りのポジションでは確かに儲けているが、半面、肝心の金のロングポジションの価値は差損しているからだ。
そのため、手持ちのユーロ売りポジションをうまく処理して、さらに、金価格を押し上げたいという「一石二鳥」の戦略を練る必要に迫られたワケだ。
その苦肉の策として考えられたのが、ヘッジファンド幹部が集う「会食会」であり、その場で共謀したという話をマスコミにリークすることだった。
現時点では、その目論見どおりになっているようだ。
■ユーロ安がそれほど進まないカラクリとは?
ところで、いくら組んでいるとは言え、大手ヘッジファンドの関係者全員が一枚岩であるとは言えない。
ウワサによると、会食会の前に、「このような話がまとめられるのでは?」と一歩先を読んで、全力でユーロ買いに傾くファンドもあれば、将来のスペインの債務問題を見越して、ユーロの売りポジションを頑として持ち続けるファンドもあるそうだ。
そこで、米国政府の調査が入るというかたちで、ユーロ売りを事件として扱い、政治問題にも発展しかねないというムードを作って、大手銀行側に自粛を促した。
ヘッジファンドも、銀行の融資枠なしでは活動できない。だから、銀行の融資枠が削減されると、ユーロやギリシャ債券のショートポジション(売り持ち)にかけるレバレッジも縮小せざるを得ない。
ちなみに、ヘッジファンドに対する融資枠というのは、1月時点で、トップ級のヘッジファンドで8~10倍、大型ヘッジファンドで5倍のレバレッジをかけられたが、最近だと、トップ級でも3~4倍にしかできないそうだ。
これこそ、ギリシャ問題があまり改善せず、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドといった国々の債務問題も取りざたされているにも関わらず、ユーロ安がそれほど進んでいない原因である。
まさに、事実は小説より奇なり、映画が1本できるぐらいのおもしろさがある。
■ユーロ・ショートが史上最高水準を再び更新!
さて、先物市場のポジション動向を見ると、ユーロの売りポジションが再び増加していることがわかる。
ところで、いくら組んでいるとは言え、大手ヘッジファンドの関係者全員が一枚岩であるとは言えない。
ウワサによると、会食会の前に、「このような話がまとめられるのでは?」と一歩先を読んで、全力でユーロ買いに傾くファンドもあれば、将来のスペインの債務問題を見越して、ユーロの売りポジションを頑として持ち続けるファンドもあるそうだ。
そこで、米国政府の調査が入るというかたちで、ユーロ売りを事件として扱い、政治問題にも発展しかねないというムードを作って、大手銀行側に自粛を促した。
ヘッジファンドも、銀行の融資枠なしでは活動できない。だから、銀行の融資枠が削減されると、ユーロやギリシャ債券のショートポジション(売り持ち)にかけるレバレッジも縮小せざるを得ない。
ちなみに、ヘッジファンドに対する融資枠というのは、1月時点で、トップ級のヘッジファンドで8~10倍、大型ヘッジファンドで5倍のレバレッジをかけられたが、最近だと、トップ級でも3~4倍にしかできないそうだ。
これこそ、ギリシャ問題があまり改善せず、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドといった国々の債務問題も取りざたされているにも関わらず、ユーロ安がそれほど進んでいない原因である。
まさに、事実は小説より奇なり、映画が1本できるぐらいのおもしろさがある。
■ユーロ・ショートが史上最高水準を再び更新!
さて、先物市場のポジション動向を見ると、ユーロの売りポジションが再び増加していることがわかる。
IMMの「ユーロ」のポジション動向
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
3月9日(火)時点のIMM統計では、ユーロの売りポジションが差引7万4551枚まで膨らみ、史上最高水準を再び更新していた。
ユーロ安にかけたいという人が、依然として多いことがうかがえる。
それは、ソロス氏やポールソン氏といったトップ級のヘッジファンドとは異なり、政府による調査と介入への懸念があまりなさそうな小型ヘッジファンドの仕掛けだとも言われている。
また、米国政府がいくら調査をしても、最終的に結果を出せないと見込んでいる筋も多いようだ。
そのような投機筋は、総じて逆張りの傾向が強いと言われていて、大手が手を出せないところが自分のチャンスだと言わんばかりに、食指を伸ばしているのかもしれない。
3月9日(火)時点のIMM統計では、ユーロの売りポジションが差引7万4551枚まで膨らみ、史上最高水準を再び更新していた。
ユーロ安にかけたいという人が、依然として多いことがうかがえる。
それは、ソロス氏やポールソン氏といったトップ級のヘッジファンドとは異なり、政府による調査と介入への懸念があまりなさそうな小型ヘッジファンドの仕掛けだとも言われている。
また、米国政府がいくら調査をしても、最終的に結果を出せないと見込んでいる筋も多いようだ。
そのような投機筋は、総じて逆張りの傾向が強いと言われていて、大手が手を出せないところが自分のチャンスだと言わんばかりに、食指を伸ばしているのかもしれない。
もっとも、ソロス氏は、あの伝説の1992年、英ポンド危機の際に、英国政府と真っ向から対立したことで名実とも世界一流の投機家となった経緯があるため、彼をマネしたいという人が多く存在していてもまったく不思議ではない。
果たして、結果はいかに…
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